鵜住居小学校釜石東中学校

リーダーシップとスタジアム

ラグビーのワールドカップがいよいよ、明日開幕する。
スタジアムの建設費、改修費を知ってちょっと驚いた。

釜石 新設 48億円
熊谷 改修 124億円
花園 改修 72億円

釜石がんばったな〜、と。
改めて思う。

収容人数は、常設6,000人。
メインスタンドとバックスタンドのみ。
ワールドカップのときは、
ゴールポスト後ろに仮設スタンドを建てて16,000人になる。

ちなみに、熊谷30,000人、花園26,500人。
もちろん、仮設スタンドはない。

釜石のスタジアムは、
「釜石鵜住居復興スタジアム」
という。

鵜住居(うのすまい)という、
かつて釜石市のベッドタウンに建てられた。
鵜住居小学校と釜石東中学校の跡地に建てられた。
スタジアムより生活の再建が先だ、という意見もあったが、
ラグビーな人たちのがんばりで、
生活もラグビーも、
という執念があって、建てられた。

鵜住居小学校と釜石東中学校の児童生徒たちは、
2011年3月11日、ものすごい地震が起こったあと、
全員が高いとことに駆け上がって、ほぼ全員が助かった。

ものすごい大きな揺れだったので、
小学生たちは3階建て校舎の3階に集められた。
でも、東中学校の生徒たちが一目散に逃げ始めたのを見て、
階段を駆け下り、高いところを目指して走った。

上級生は下級生、小さい子の手を引いて走った子もいる。
いつもの避難訓練どおりに。
みんな、あらかじめ決められていた場所へ走っていった。
いつもの避難訓練どおりに。

でも「ここもやばいんじゃね?」と思った生徒たちが、
「もう少し高い位置まで」
と声を掛け合って、坂道を走り出した。
いつもの避難訓練にはなかったが、
判断は正しかった。

最初に避難した「いつもの場所」は、
津波に飲み込まれた。
小学校の3階には、
自動車が突き刺さっていた。

リーダーシップには「最小3要素」という定義がある。
(1)目標共有
(2)率先垂範
(3)相互支援
これさえ実行すれば、誰でもリーダーシップを発揮できる、
という最低限の3要素だ。

(1)生き延びる、という目標を共有した
(2)「いのちてんでんこ」「真っ先に逃げろ」の教えを守った
(3)声を掛け合って、助け合って逃げた

鵜住居では、たくさんの人たちが犠牲になった。
まだ行方不明のままの人たちもいる。

父が死んだ、母が死んだ、娘が見つからない、息子が見つからない、
そんな悲しみと苦しみを噛み締めながらも、
生き延びてくれた、希望をつないでくれた、
小学校と中学校の跡地に、ラグビースタジアムをつくった。
釜石は鉄と肴とラグビーの町だから、
その誇りにかけてラグビースタジアムをつくった。

海が見える、山の麓にある、そばに川が流れる、
世界一のスタジアムが、
釜石鵜住居復興スタジアムである。

鵜住居小学校と釜石東中学校は、
スタジアムを見守るように、
すぐ近くの造成丘に建っている。