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『お帰り 寅さん』観てきた。
facebookとかレビューとかに、
「ありがとう、山田洋次監督」っていうメッセージがあったが、
確かに、ありがとう、だった。

寅さんを映画館で観たことは一度しかない。
しかもそれは、『釣りバカ日誌』を観たいから、
そのついでに観ただけ。
もちろん映画は楽しかったけど。
ビデオでは何本も観た。
新幹線の中で観て、途中で東京についてそのまま、
だったり、早送りで観たり。
おもしろいはおもしろいけど、
それくらいの価値でしかない、と思っていた。

満男(吉岡秀隆)がサラリーマン辞めて小説家になって、
高校のときの彼女のイズミ(後藤久美子)と偶然再会して、
好きなんだけど、ゴニョゴニョ、モソモソ、っていう
寅さん映画の得意技。

だけど、満男の回想シーンがメインストーリーと同じぐらいでてきて、
つまりそこに、知ってるだけの寅さんと、
母親(さくら=倍賞千恵子)から聞いていた寅さんのエピソードが入ってくる。

たとえば、母親と父親(博=前田吟)のなれそめ。
タコ社長の工場に勤め始めて3年、
やっとの思いで恋を打ち明けるが、
それは寅さんに前もって聞いてダメ出しされたあと。
絶望した博は工場を辞め、下宿を出ていく。
別れのあいさつで「好き」をいわずに好きな気持ちを
あ〜、こんなふうな言葉を使うんだ〜、
と顔の表情を含めて、。そう思い、
それをうけた倍賞千恵子の恥じらいと嬉しさの顔、
でも「さよなら」といって博がでていったときの顔、
寅さんが入ってきて、寅さんをなじるときの顔、
寅さんの表情、おいちゃんおばちゃん、タコ社長……。
さくら、追いかける。
柴又駅のホームにいる博を発見。
改札のチェーンをまたいでホームに突入。
博が振り向く。
発車ベルが鳴る。

くぅ〜〜〜、って映画館全体がそうなった。

たくさん回想シーンがあって、主にマドンナたちとのシーンがはさまれるが、
映画のラストにはそれこそ、ニューシネマパラダイス、
次から次にマドンナとのお芝居がでてくる。
「50年かけてつくった奇跡の映画」という謳い文句は、ホントだった。
寅さん映画は、日本映画のど真ん中にいたんだろうなと思い直した。

「幸せでやってるかい?」
と、寅さんがにっこりと声をかける。

幸せだろうか。

生活に不満はないけど、幸せかといわれれば、
どうだろう。
一億総中流といわれていた時代に寅さん映画があって、
1996年に寅さんは亡くなって、
2020年に帰ってきた寅さんは、
「で、いまは幸せなのかい?」
と問う。

幸せにきまってる。