見出し画像

子どものころの絵本がいつまでも記憶に残っているナゾ

絵本作家のサトシンさんの、絵本読み聞かせイベントに参加した。
かまいしこども園の企画で、大槌町のこども園の子たちも来ていた。
0歳から4,5歳ぐらいまでの子どもたちが、
ママやパパと一緒に、サトシンさんのライブを楽しんでいた。

サトシンさんは、コピーライターだった。
45歳で仕事をやめて、絵本をつくるようになった。
広告のコピーは、書けばおカネがもらえて儲かるけど、
心の中の思いを伝えているのではない、と思っていた。

子どものころからおしゃべりだった。
おしゃべりで変わり者だった。
小学校の遠足で、お菓子を持ってくるのを忘れちゃった。
そしたら考えて、電柱5本分の距離でお菓子1個、
という約束で友だちのリュックを運ぶことにした。
友だちはおもしろがって、たくさんの人がサトシンさんにリュック運びをお願いした。
サトシンさんはひとりではまかないきれなくなって、
運んでくれる友だちを募集した。
友だちはおもしろがって、運送やさんごっこ、お客さんごっこをしながら、遠足を楽しんだ。

そのあと、これが大問題になった。
おしゃべりで知恵者で変わり者のサトシンさんに、
先生は「ちゃんとしないと大人になれないよ」
といった。

0歳の子たちも参加してた

サトシンの絵本の読み聞かせは、独特だった。
歌に乗せて、テキストを読んだ。
やさしいメロディのお話もあれば、
ビートを刻むときもあり、
ヘビーメタルでアタマをふりふりするお話もある。

子どもたちはノリノリで、「イェーイ!」って拳を上げて聞いていた。

『おおきなカベがあったとさ』
という絵本がある。
歩いていて、道の真ん中でカベがふさいでいる。
そのカベをよじ登って越えた。
歩いていると、また次のカベがでてきた。
棒があったので、棒高跳びのようにして越えた。
歩いていると、また次のカベが出てきた。
今度は棒高跳びでも越えられない。
近くに鳥が飛んでいたので、その鳥に捕まって飛んで越えた。
歩いていると、またまたカベがでてきた。
今度は鳥でも越えられない。
そこら中にいる人たちを集めて、
みんなで力を合わせて、カベを押し倒してしまった。

サトシンさんはいう。
「知恵と勇気を出して、誰かの力を借りれば、
どんな高いカベでも乗り越えられるよ」

サトシンさんの絵本のつくりかたは、
有名な画家と有名なアーティストと一緒につくる。
サトシンさんはいう。
「才能がある人といっしょに、
本気でコメカミから血が出るまで考えるの。
そうやって、おもしろいことをやる。
そうすれば、いつか誰かが認めてくれるから」

「ちゃんとしないと大人になれないよ」
と先生からいわれたサトシンさんは、
自分が好きな自分を大切にした。
好きなことやりたいことを我慢するのは違うと思っていた。
「好きな自分は捨てられない。
欠点だといわれていたことが、いまの自分をつくっているんだ」

絵本を歌い終わったあとのサトシンの言葉は、
たぶん子どもたちには伝わっていない。
サトシンさんは、ママやパパや先生たちにしゃべりかけている。
大人に聞かせて、その大人たちが自分の言葉、
わかりやすい言葉に翻訳して、
子どもたちに伝えてもらおうとしている、ようにわたしには感じられた。

「絵本を読むって、あたたかい時間を共有すること」

一冊3分か4分で読み終えるのが絵本。
大人になってからもその絵本のことはよく覚えている。
それは、読んでくれた母や父や先生が、
寄り添ってくれて、言葉に愛情を乗せて、楽しませてくれたから。

サトシンさんは、そういっていた。