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自衛隊 闇の秘密組織「別班」と陸軍中野学校のDNA/斎藤充功

2013年11月、自衛隊のある組織に関するニュースが配信され、界隈は騒然となった。なぜなら、公に存在しないとされている「秘密組織」の存在が白日の下に晒されたからである。
そして、その組織の存在はある諜報機関のDNAを色濃く受け継いでいることが判明した。そう……戦時下で帝国陸軍に存在していた「陸軍中野学校」である……!

文=斎藤充功

白日の下に晒された秘密組織の存在

 2013年12月2日、第185回通常国会で鈴木貴子議員(当時無所属)は、<陸上幕僚監部運用支援・情報部別班(別班)に関する質問主意書>を提出した。これは、同年11月27日、共同通信社が配信した次の報道がきっかけだった。

<陸上自衛隊の秘密情報部隊「陸上幕僚監部運用支援・情報部別班」(別班)が、冷戦時代から首相や防衛相(防衛庁長官)に知らせず、独断でロシア、中国、韓国、東欧などに拠点を設け、身分を偽装した自衛官に情報活動をさせていたことが二七日、分かった>

 いわゆる、自衛隊の秘密部隊の存在が白日の下に晒されたわけである。だが、陸上自衛隊の秘密情報部隊、通称「別班」の存在が国会で指摘されたのは、共同通信社の報道に端を発する鈴木議員の質問が初めてのことではなかった。
 1977年(昭和52)4月の第80回衆院予算委員会でのことである。共産党の上田耕一郎議員(1998年に議員引退・2008年10月死去)は、自衛隊調査学校(今日の陸上自衛隊情報学校)の対心理情報過程(CPI)を卒業した同窓生で組織されていた「青桐会」の名簿を入手し、同会に陸軍中野学校の卒業生が参加していることを明かしたのだ。以下は委員会における上田議員と参事官のやりとりである。

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上田議員 スパイ教育を調査学校ではしていないというけれども、調査学校で中野出身者、この間、2、3名可能性があるといはれましたけれども、何名いましたか、教官のなかに。
政府委員(水間明防衛庁参事官) 中野学校に関係したことがあると、これは入校したということでございますが、認められる者が6人おりました。現在いずれも退職しております。
上田議員 2代目校長(筆者注・自衛隊調査学校)の藤原岩市氏は中野学校の教官であります。それから副校長であった山本舜勝氏も中野学校の教官であります。それから阿部武彦、松浦渉、森山秀彦ら、これらの人々は中野学校の学生であったわけであります。ですから、調査学校をつくる上で非常にやっぱり中野学校、これはスパイ学校として有名ですから、非常に大きな役割を果たしたということを指摘しておきたいと思います。
政府委員 次に「秘密戦概論」という資料について申し上げます。この資料は旧軍の資料を復刻したものでありまして、かつて対心理情報過程(筆者注・調査学校の履修科目)と称していた一時期、学生の理論研究の一参考資料として使用されていたもので、さきに私が答弁いたしましたように教科書ではありません。その後、教材整備の過程ですでに廃止されておりまして、現在の心理戦防護過程では使用しておりません。
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