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ディープステートが愛用するという若返りの秘薬! 都市伝説「アドレノクロム」の謎/久野友萬

数年前から陰謀論者の間でまことしやかに流布している噂がある。恐怖する子どもの血液からアドレノクロムという不老不死の薬が作りだされ、世界中の富豪たちが争ってその薬を飲み、究極の若返りを図っているというものだ。「何をバカな」と陰謀論で片づけたいところだが、そう簡単にはいかないバックグラウンドがある。血液と若返りの生化学的関係をお伝えしよう。

文=久野友萬

*三上編集長による動画解説はこちら 

都市伝説を広めた陰謀論者Qアノン

「アドレノクロム」で検索すると眉をひそめたくなる記事が次々に出てくる。アドレノクロム目的の児童売買組織から3万5000人の子どもが救出された、子どもは拷問されて血を抜かれて殺される、あるタレントはアドレノクロムに関する秘密を知って自殺を偽装された、ヒラリー・クリントンやオバマ元大統領はアドレノクロムのヘビーユーザーだ等々、気味悪い話のオンパレードだ。
 この話を広めたのは、アメリカの掲示板サイト4チャンネルに書き込みを始めたQアノンなる謎の人物である。
 Qアノンは、ムー読者であれば今さらの感がある陰謀論の存在。ディープステートによる米政府の支配を書き込み、トランプ支持者の間で圧倒的な人気を博した”人物”だ。

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Qアノンの旗。2021年1月6日、暴徒と化したQアノン支持者らが米連邦議会議事堂に突入した際にもこの旗が掲げられた。

関連記事:Qアノンと闇の政府ディープステートの陰謀

 米国政府の内外に強い影響力を持つ隠された政府=ディープステート(闇の勢力ともいう)が民主主義的な手続きを踏んだ正当な政府とは別に、軍産複合体とウォール街、IT産業界、メディアと一部の政治家(特に民主党、中でもオバマとクリントン一派)、官僚と手を組み、アメリカのみならず世界をあるシナリオに沿って支配しているという。
 このまま人類が好き勝手に開発を進めれば、じきに地球の資源は枯渇し、環境は悪化して人類は存亡の危機に立たされる。その前に彼らエリートが全世界を支配し、適切に資源を配分し、人口を調整するのだという。そのためにひと握りのエリートとグローバル企業がIT技術を駆使した完全管理社会を実現する、それが陰謀論者のいう新世界秩序(=New World Order、略してNWO)だ。NWOでは国民番号制が徹底され、プライバシーはなくなり、ひと握りのエリート(GAFAをはじめ、大手国際資本の経営者にはユダヤ人が多い)として、ユダヤ教のいうゴイム(異教徒)を支配する。

 Qアノンによれば、彼らディープステートの陰謀に立ち向かったのがトランプ大統領である。意のままにならないトランプ大統領をディープステートはどんな不正な手段を使ってでも落選させるだろう、それを許してはならない! Qアノンの書き込んだ陰謀を信じた群衆の熱狂が、2020年の大統領選挙でトランプ派の議事堂突入につながったのだから恐ろしい話である。

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クリントン元大統領。Qアノン曰く、クリントン元大統領夫妻はディープステートの一味であるという。

アドレノクロムは「命の実」の代替品

 Qアノンによれば、ディープステートはサタン信仰集団でもあり、神に禁じられたことをあえて行う。人類が最初に神に禁じられたことは何か? それはエデンの園に植えられた生命の樹と善悪を知る樹の実を食べることだ。
 善悪を知る実を食べるというタブーを犯して楽園を追放された人類にとって、それを食べるようにそそのかした蛇=サタンこそ知性を与えてくれた人類の味方だとサタニストは考える。神ではなく知性の光=イルミナティこそが人類を導くのだと彼らはいう。彼らにとって知性は絶対善であり、そこから知識階級が無知な人類を先導しなければならないという彼らの独善が生まれ、NWOへと至るのだ。
 彼らサタニストにとって、生命の実を食べること=不老不死は絶対的なミッションである。善悪を知る実と生命の実を食べることで人類は神になる。すでに善悪を知る実は食べたので、あとは生命の実を食べれば、人類は神となり、この理不尽な世界を作り替えられるからだ。それこそが知性が命じる、真なる自由である。

 そこで生命の実の代替品として登場するのがアドレノクロムだ。

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