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創造論と進化論を両立させる最終仮説「古代宇宙飛行士説」/宇佐和通・新ID理論

”科学的”には冷ややかな視線を浴びる創造論だが、その最前線では”科学”と”神”を共存させる試行錯誤が育まれている。創造論を追うシリーズ最終回は、進化論と創造論をまたぐ「神の存在」ーー“古代の宇宙飛行士説”に踏み込む。

文=宇佐和通

第1回 第2回 第3回

生命の誕生と進化を司る神とはなにか?

 この連載では、進化論(特にダーウィニズム)とそれと対立する理論を基に、ID理論をはじめとする“非進化論陣営”の構造とそれぞれの特徴・特色を見てきた。
 ここまで論を進めてきて改めて思うのは、神と呼ばれている存在が何だったのかという基本的な疑問だ。神、デザイナー、呼び名は何であれ、知的な存在が地球生物の進化に直接的あるいは間接的に関わっていたのか。連載最後の今回は、そのあたりも意識していきたい。
 これまでもそうだったが、進化論もID理論も創造論も有神的進化論もすべてを含め、ここでは特に “オルターナティブ”という形容詞がキーワードになる。オルターナティブ進化論の重要な要素としても、“古代の宇宙飛行士説”に触れておく必要があるだろう。

古代の宇宙飛行士説

 古代の宇宙飛行士説という言葉がクローズアップされるようになったのはいつごろだっただろうか。今となっては“オルターナティブ・ヒストリー”の枠組みの中で確固とした存在感を示し、よく知られたボキャブラリーとなっている。

 当然ながら、と言うべきだろう。古代の宇宙飛行士説とID理論、そして全般的な創造論の要素をすべて組み合わせて考えようとする人たちがいる。そしてこれも想像に難くないが、こうした人たちが徐々に注目を集めている。
 彼らが言うには、何らかの知的生命体が古代の地球を訪れた痕跡は世界各地に残されている。その事実は、今も手で触れることができる遺跡に刻み込まれ、共通のモチーフについて語られたさまざまな神話に綴られている。この分野の論理的土台を築いた人物は、エーリッヒ・フォン・デニケンだ。ただ、古代の宇宙飛行士説を「偽科学」と決めつける見方は、デニケンが初めて本を出した1969年から変わらない。

 古代の宇宙飛行士説の実質的な提唱者であるデニケンは、神と宇宙論をテーマに据えた著作を多く残している。

 さらに細分化するなら、中核的な要素は科学と宗教、そして神と創造ということになる。この連載でここまで論じてきたすべての要素をひとつにまとめる役割を果たすにふさわしいかもしれない。
 さらに、主流派科学の枠組みからも主流派宗教の枠組みからも離れた独自の立ち位置にあり、考え方としては比較的新しい。出発点かつ中核となる“パレオコンタクト=古代の地球と知的生命体のコンタクト”をキーワードに、地球人類の起源と運命を解き明かそうとする姿勢は、進化論ともID理論とも、そして創造論とも一線を画す。

 古代の宇宙飛行士説でよく使われるのが“シーディング=(種蒔き)”という言葉だ。知的生命体が古代の地球を訪れたのはまさにシーディングが目的だったという考え方が基盤となる。蒔かれたのは地球生物の種、あるいは地球文明の種だ。古代の宇宙飛行士説は、地球人類の文明の礎はもちろん、それよりはるか前の時代までさかのぼって、地球の生物の源まで探っていく。よりストレートな言い方をするなら、地球の生物の源となった種がほかの星から“移植”された可能性を追う。
 こうした行いの背景には、聖書をはじめとする主要宗教の伝承、そして世界中に数多く存在する神話で語られている共通のモチーフが介在している。端的に表現するなら、“空からやってきたもの”ということになるだろうか。
 地球のすべての生物の源となる種を蒔き、進化のきっかけを作ったのは、この“空からやってきたもの”ではないのか。古代の宇宙飛行士説は、こうした方向性でものごとを考える。

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 偽科学とさげすまれることが多い古代の宇宙飛行士説のスタンスは、表面的には極端に見えるに違いない。しかし筆者は思う。創造論的な宗教色が強く出ているわけでもなく、無理な形で主流派科学の枠組みにすべてを押し込もうとする姿勢も感じられない。また、主流派科学に属する科学者たちの中にも、古代の宇宙飛行士説を全面的に認めないまでも、非難はしないという立場の人たちもいる。一般的に思われているほどアンバランスな考え方ではないのかもしれないのだ。

 ここでもう一度、古代の宇宙飛行士説のエッセンスとなる部分を示しておこう。デニケン自身の言葉を借りるなら、次のような言い方になるはずだ。

「宇宙由来の知的生命体が有史以前の地球を訪れ、類人猿に近いヒト科生物から人類を創り出した。そして知的生命体はやがて創造神として崇められるようになった。こうした“古代の宇宙飛行士”が残した痕跡や人類に対する文化的影響は遺跡や遺物、そして聖書や神話に見ることができる」

 古代の宇宙飛行士説のフォーカスは人類の誕生以降に置かれると思われがちだが、前述の通り、はるか昔の時代の地球の姿もイメージしながら、聖書の巨人族の逸話やシュメール/アッカド神話の“アヌンナキ”に関する伝承に関しても独自の見解を示す。そのプロセスも、やはり“シーディング”という言葉に集約されると思うのだ。

地球人は宇宙由来なのか

 コモンセンスという観点から人類の進化について考えるなら、ヒト科生物の祖先が地球上に現れたのは500~700万年前のアフリカだったとされている。生物学的に言えば、われわれ現生人類はゴリラやチンパンジーなどと共にヒト科生物に属し、二足歩行するためにヒト亜科という形で分類される。二足歩行が可能なホモ・エレクトスが現れたのは、200~300万年前だ。
 ホモ・エレクトスから進化した現生人類は20万年ほど前に現れ、アフリカからアジア、ヨーロッパへと広がり、やがて世界中で栄えるようになった。これがダーウィン進化論で説明されているプロセスだ。

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