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長頭人で読み解く! 世界の「天空神」信仰と古代異星人の謎/南山宏

古代より語り継がれる神話や伝承の多くには、われわれの祖先に文明をもたらした"天から降臨した神々"の存在が語られている。そして不思議なことに、"神々"の姿にはある共通項ーー長頭人ーーがみられるのだ。この謎を紐解けば、世界中で異様な頭蓋骨のミイラが見つかる理由と、さらに神々の正体までもが見えてくる。

文=南山 宏

世界各地で伝承される「天空神」の姿

 いかなる民族や国家の言語であれ、“神話”という言葉に接すると、われわれ現代人はだれもが、ほとんど固定概念のようにこう決めつけてしまいがちだ。
ーー世界中どこでも、迷信深くて想像力のたくましい古代世界の人たちは、自分たちが生きている大自然の神羅万象に神々の存在を感じとって畏れおののくとともに、その神々や英雄たちが戦い、交流する空想と幻想に満ちあふれた神話を創り出した、と。
 ギリシア語の神話は英語のミス(myth)の語源となるミュトスだが、ラテン語の神話はファブラといい、英語のフェーブル(fable)の語源になる。こちらは寓話、喩え話や童話の意味だから、作り話のニュアンスがぐんと強くなる。
 現代社会の中心的思潮においては、神話は明らかにほとんど後者の意味で使われることが多いだろう。

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(上)天空を旅するエジプトのオシリス神。(中)マヤのトウモロコシ神。(下)ヒンドゥー教の最高神ヴィシュヌの像。各地の神話に登場する神々には、頭部に共通性が見られる。

 しかしその反面、世界中どこでも考古学や歴史学の分野には、どちらかといえば異端的な少数派と見なされてはいるものの、「神話には、太古世界に厳然と存在した真実の事象が色濃く反映されている」と主張する人たちも、それなりに存在するのだ。

 南米チリの学界でアカデミズム(伝統的・保守的な主流派)とははっきり一線を画して、独立独歩の研究活動を続ける異端派考古・歴史・人類学者兼著述家のラファエル・ヴィデラ・アイスマンも、まぎれもなくそのひとりに数えられるだろう(参考文献:R・V・アイスマン著『地球外から来た神々──禁断の歴史の痕跡』2017年)。
 アイスマンはまず、次のような根本的疑問を提起する。

「太古、南米チリの最南端ティエラデルフエゴ島に栄えた旧石器時代のセルクナム文化、中米メキシコに華開いたアステカ文化、スカンディナヴィア半島から中央ヨーロッパにかけた一帯を支配した北方ゲルマン文化、そして古代メソポタミア、エジプト、インダスに君臨した大文明との間には、どのような関係性が存在したか?」

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異端派の考古・歴史・人類学者ラファエル・ヴィデラ・アイスマン。

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進化論の創始者チャールズ・ダーウィン。人類アフリカ起源説についても
主張していた。

絶対的ドグマにある〝疑問の余地〟

 もし体制的な主流学者たちが書いた“公式”教科書に上記の設問の答えを捜すとしたら、そのような異端の文明伝播主義的仮説に対しては、答えはもちろんノーだ。「そんな関係性などは存在しない」というのが、当然の答えになるに決まっている。
 その代わりに“疑問の余地のない”絶対的ドグマ(教義/教理)として学校の教科書に記され、学生たちに教えられるのは、たとえば「アフリカは人類の起源の地である」という人類学上の定説だ。
 あるいは時代を一挙に現代近くまで引き下げて、「南北中アメリカ大陸は1492年、コロンブスによって“発見”されたのをきっかけに、発見者の征服者(コンキスタドール)たちが属する旧世界に対して新世界と呼ばれるようになった」とか、「進化論は博物学者チャールズ・ダーウィンによって創始された」などなどというのも、アイスマンにいわせれば、だれもがよく知る“ドグマ”の類いということになる。
 しかしながら、これら3つのドグマは、はたして真の意味で“疑問の余地のない”までに確立された定説といえるのだろうか?
 ここでアイスマンは首を強く振る。
「これらのドグマは3件とも、基本的な調査と研究が行われた結果として、いわゆる“科学的証拠”にもとづいて否定するのは不可能だが、それでもまだ仮説の域をはっきり超えた、とまでは残念ながらいいきれない!」
 アイスマンは歴史的な事実を挙げて強調する。
「まず“アフリカは人類の誕生と揺籃の地”説はほとんど定説に近い有力な仮説だが、この人類発祥地アフリカ説が提唱されたのは、同大陸の南部地方で発掘されたホモサピエンスの化石骨に、折りから勃興しつつあった19世紀的な科学合理主義の時代精神(ツァイトガイスト)が大きく作用したからにほかならない。
 だが実際問題としては、人類以前のヒト科動物とホモサピエンス・サピエンス(われわれ現生人類)とを直接的に結びつける化石人骨がいまだ未発見なため、“ミッシングリンク(失われた環)”と呼ばれているほどに、まだまだ真実は闇の中に隠されている。
 だが、それにしても人類発祥の地がなぜアフリカなのか? ほかの大陸はどうなのだ? とりわけ海中に没した太古文明大陸説(たとえば、大西洋に沈んだという伝説のアトランティスや、同じように太平洋に沈んだとされるムー)が究極的に正しいとしたら?
 現代の考古学や人類学や歴史学の科学者たちは、あまりにも自己中心的な視野狭窄状態に陥ったまま、地表近くでしばしば惹起する複合的な地質学的変動の問題や、とりわけもう少しマシな代替理論を提起できる可能性をはらんだ神話伝説の類いに対してあまりにもかたくなに目を閉じたまま、人類の起源を強引に定義づけようとしてはいないだろうか?」

直線的文明進歩を覆す考古学的遺跡群

 さらにアイスマンは、ダーウィン流の生物進化論を文字どおりそのまま、人類文明発展の進化論的解釈に応用することに対しても、敢然と異論を唱える。
 太古の時代、人類文明が世界のどこか一地点(地域)、または複数の地点で発祥して、原始的な段階から長い歴史時間を通じて興亡盛衰を繰り返しつつ、現代に至るまで漸進的に進歩発展してきたとする単純な直線的文明進歩史観を、アイスマンは真っ向から否定するのだ。
 とりわけ南北アメリカ大陸の各地に太古以来先住民が遺した考古学的遺跡群は、証拠として明らかに真逆の方向を示していると、アイスマンは主張する。

 たとえば、南米ボリビア(正式国名はボリビア多民族国)の海抜4000メートル級の空気も希薄な高地に建つプマプンク巨石神殿を中心とする巨大都市遺構ティワナクは、どこのだれが造ったのか真実はいまだに定かでないものの、現代にも匹敵ないしそれ以上の高度建築技術が縦横に駆使されて建設されていた。
 ほかでもなく筆者自身も、半世紀近い過去のことだが現地ティワナクを取材に訪れて、プマプンク神殿の雄大無比なスケールにいたく感銘したことを忘れられない。
 後世に同地を支配したプレインカ人やインカ人も、このティワナク遺跡を“太古、天から降臨した神々(天空神)が住んだ聖なる都”と心底から畏怖を抱き、彼ら独特の土着宗教の神聖な信仰対象としていたのだ。
 おそらくその“神々”の巨石建造技術を受け継いで造ったのだろうが、オリャンタイタンボやサクサイワマンなどの巨大石組み遺跡が如実に示すように、プレインカ人やインカ人自身も高度の巨石加工・成形・建造技術を保有していたのはまぎれもなく事実である。

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ボリビアの巨大都市遺構ティワナク。

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チリのアンデス山中で見られる、広大な謎の石造プラットフォーム。

 年代的に見てひょっとすると直接にではなく間接的だったかもしれないが、プレインカ人やインカ人もまた“地上に降臨した天空神”から高度の石造加工技術を学んだ可能性が高い。
 同じように高度の石造技術が駆使された謎の巨石建造物は、隣国チリのアンデス山中にも、今もなおひっそりと存在する。標高ゆうに3500メートルを超えるエルエンラドリリャド高原に横たわる、不規則な割れ目が縦横に入れられたかのように見える広大な石造プラットフォームがそれだ。
 神殿風の建造物ならまだしも、ただひたすら真っ平らに加工成形された石造プラットフォームで、建造者や建造方法はおろか、建造した目的ですら今ではミステリーの闇の中である。
 さらに不可解なのは、コロンブスに“発見”されるはるか以前から現在まで、こうした遺跡の周辺に住みつづけてきた南米先住民の末裔たちが、異口同音にこう語っていることだ。

「はるか遠い昔、こうした神々の遺跡の周辺には、神々ご自身がお住まいになっていた──」

 ここでアイスマンは、冒頭近くで自分自身がもちだした根本的疑問を、もう一度繰り返す。
「太古、南米最南端のセルクナム文化、中米メキシコのマヤ・アステカ文化、ヨーロッパ北方のゲルマン文化、そして古代エジプト、インダス両文明との4者間には、どのような関係性が存在したか?」
 アイスマンの知見では、今度の答えはノーではなくイエスだ。どうしてか?
「なぜなら、視点を変えて図像学的観点から人類社会の連綿と続く歴史を遡りながら見渡せば、後述するようにこれまでのわれわれには見えていなかった驚くべき“神々の姿”がはっきりと見えてくるからだ」
 どういうことなのか?

トンガリ帽を被った〝天空神〟たち

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