拗ねる相手もいないので
「あいつ寂しがりなのよ。俺が終電で帰ることになるともう拗ねてるから(笑)」
ふーん。
わたしには拗ねる相手がいないから、それがすごく羨ましいことのように感じた。
拗ねるってなんだっけ。どんなときに拗ねるんだっけ。拗ねるって怒ると違うんだっけ。
拗ねることすら忘れた。
わたしも、拗ねたいよう。拗ねたいけど、拗ねることすら許されない。
わたし、どんなときに拗ねるの?
うーん。どんなときだろうね。
たぶん、拗ねる前に「しょうがないかー……」って、自己解決すると思うんだ。しょうがないしょうがない、ぜんぶしょうがない。
彼が終電で帰ることになったのも、彼なりの理由がある。だからしょうがない。
ってすると思うんだ。
いいなあ、彼女は拗ねられて。拗ねる相手がいて。拗ねるって自分の感情に気がついていないとできないことだと思うよう。いいなあ。
羨ましくてムズムズする。頭が混乱する。拗ねるってどうやってするんだっけ。わたしも拗ねたい。
拗ねられるって素直だな。愛されてるんだな。なんかだいぶしんみりする。わたしにはそれがないみたいで。
わたしにはそれができないから、物分かりがいい女みたいに思われんだろうか。そんなの、ちがうじゃん。気づいてほしいな、本当は。本当はこう思ってるんだろって気づいてほしい。それで抱きしめてほしい。なのに、できない。
わたしには拗ねる相手もいないので。
当然、抱きしめてくれる相手もいないので。
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