むにみずべ 東京編05 清澄庭園の涼亭
日本庭園に浮かぶこちら、知っていますか?
先日ついに同僚を20名以上引き連れ、懇親会と称して、むにみずべツアーを敢行してしまいました。幸せです。
懇親のむにみずべ
ツアーは午前中、清澄庭園の涼亭にて投扇興
(扇子投げて的に当て、その当たり方で異なる得点を競う御座敷遊び)
午後には、半分が勝ちどきの朝潮運河船着場へ、半分はスカイツリーの麓 おしなり公園船着場へ。
それぞれ10名程度の小型船にのり、ぐるりと周る間にランチを船上でテイクアウト。そして日本橋船着場にそれぞれ別ルートを辿って再集合、解散。という感じ。
水辺愛が溢れ、フライヤーまで作りました。
さて今回はツアー前半のむにみずべ、清澄庭園の涼亭についてです。
貸切できちゃう財閥マネーの輝き
こちらの最大の面白さは、水の上にある涼亭を「気軽に」貸切できちゃうこと。
将軍や大名、財閥が湯水の如くお金を注ぎ込んだ、文化財指定がなされている都立庭園は、9ヶ所。それぞれ注がれたお金ごとに分けると、こんな感じ。(時代によって別マネーが流入してることもありますが。)
将軍マネー
・旧浜離宮恩賜庭園
大名マネー
・小石川後楽園
・六義園
・芝離宮恩賜庭園
財閥マネー
・旧岩崎邸庭園
・清澄庭園
・殿ヶ谷戸庭園
・旧古河庭園
一般庶民のゼニ
・向島百花園
前にご紹介した浜離宮なんて、まさしく将軍マネーによる輝きです。
さて時代ごとの名だたる名士がマネーやゼニーを注ぎ込んだお庭たちは、実は現在驚きの価格で貸切りができます。
清澄庭園涼亭は、3時間半でまさかの樋口一葉お一人。
東京都の施設ですからね。税金も払ってることですし、安く貸し切ってしっかり回収していきたいですね。
儲けすぎた岩崎弥太郎が買った庭園
三菱財閥を作り上げた岩崎弥太郎。かの坂本龍馬と同じ、土佐の郷士(低い身分の武士)出身で、能力の高さから土佐藩内で出世、竜馬の立ち上げた海援隊では会計係も務めていました。政界に行くか財界に行くかで、その後はだいぶ違った人生になってしまいましたねぇ。
さて岩崎弥太郎は、土佐藩の抱える商社として九十九商会を率いていたところ、明治維新を迎えます。
土佐藩船の払い下げ、全国統一通貨「円」の導入直前に藩札を買い漁るインサイダー取引、台湾出兵・西南戦争時の政府軍輸送によって得られた巨額の金で、ついに清澄庭園の敷地を買い取りました。
前述の岩崎邸庭園・六義園もこの時買ったようです。庭園2つ買っちゃうってちょっと、儲けすぎですね。
続く弟弥之助の時代を通して、荒稼ぎしていく三菱財閥の迎賓館として格式高く整えられていく清澄庭園。ついに1909年、大英帝国陸軍元帥キッチナーを迎えるべく、涼亭が誕生しました。
第一次世界大戦前の最も大英帝国が強かった時代を生きたキッチナーは、ファッショダ事件を解決させ、第二次ボーア戦争を勝利に導いた英雄です(世界史選択の人はふんわ~りと聞いた覚えがあるのでは)。来日時には国を挙げた大歓待でした。
今で言うならアメリカのAmazon会長ジェフべゾフの来日という感じでしょうか。そりゃ涼亭くらいつくらないといけない訳です。
当時の清澄庭園は、現在の清澄公園を含む2倍以上の大きさがあり、庭園の正門には仙台堀からの引き込み堀が開削され、なーーんと船で庭園に乗り付けることができたそうです。今も残っていれば200%むにみずべだったはずですが、残念です。
歴史の荒波を乗り越える湖上の涼亭
東京の深川は、度重なる荒波が襲う場所でした。関東大震災、そして東京大空襲です。東京の下町はわずか20年余りの間に二度も焦土と化してしました。清澄庭園も甚大な被害を受けます。三菱一号館も、岩崎邸も設計した三菱財閥ともズブズブの、東大建築教授ジョサイアコンドル博士の設計した洋館も震災で焼失します。
そんな中、庭園の中心で池に浮く涼亭は、延焼を免れ今に残りました。庭園の大樹や自慢の巨石造形も燃えたり崩れたりする中でも、涼亭は乗り越えました。景観のために決められた配置が、図らずもその存亡を変えたようです。
全国に日本庭園の御茶屋はたくさんありますが、清澄庭園の涼亭ほど水に浮かぶように建ち、かつ独り占めできるものはそうそうないと思います。
先の9つの文化財庭園の中でも、涼亭に匹敵する湖上の傑作は、浜離宮の中島の御茶屋のみと言っても過言ではないでしょう(ここは貸し切れません)。その他にも池の近くに建つものは多いですが、涼亭の良いところは、一棟丸々貸し切れちゃうところです。
そう、むにみずべツアーにおいて、一棟貸しを探していたのです。
会社対抗の投扇興大会
いま、ムニは別会社に出向中。数か月大人しく働いていたところ、ある日突然むにみずべツアーを無性に計画したくなる衝動に襲われました。そこで、出向先と出向元の対抗試合でもやろうかと思いたち、誰でもすぐできる投扇興をこの清澄庭園で執り行うことに決めました。
きっと盛り上がる投扇興。
そもそもセットを自前で持っている訳もなく、ネットで調べれば新品は3万越え。諦めようかと思ったその時にヤフオクの出品を目にし、人生初のオークションで競り落としました。試しに家族と対戦すると、的に当たっても当たらなくても中々に盛り上がります。
これは、一棟貸しが必要だ。。第六感ではなく、第二感(聴覚)がそう訴えてきました。(うるさくなりました。横で俳句会など開催している場所じゃできません。)
超絶人気の涼亭。朝、昼、夜の三交代制ですが、酒の持ち込みもできるとあって、年の瀬も近く夜は忘年会需要でぎっちぎちの満席。
(当時なぜか唯一12/24は夜も空いてました。涼亭でクリスマスデートをするダンディなカップルはあまり居ないようです)
朝の時間を何とか確保し、来る投扇興大会に向け秘密の特訓を開始しました。
結果。ことごとく高得点を取っていく同僚たち。あの血の滲むような練習に明け暮れた日々をあざ笑うかのように、颯爽とMVPを奪われました。
ともあれ。このように投扇興もできちゃう。忘年会もできちゃう。ちなみに仕出し弁当も注文できます。
皆さんもキッチナーレベルの賓客を迎える時はぜひ活用しましょう。
以上、
むにみずべツアー前半を飾った清澄庭園の涼亭でした。通常は貸切客のみ入ることができますが、紅葉や桜などの決まった時期は御茶屋として一般開放され、抹茶とお菓子を頂くことができます。
現在も紅葉シーズンのため開放中(〜12/10)
ぜひ行ってみてください。
※あ、もちろん投扇興はできません。やりたければぜひ貸切予約を。
次回はむにみずべツアー後半を飾る、現代の猪牙船をご紹介します。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?