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『鎌倉殿の13人』第21回「仏の眼差し」(2022年5月29日放送 NHK BSP 18:00-18:45 総合20:00-20:45)

冒頭、八田知家(市川隼人)が登場し、これで「鎌倉殿の13人」全員が出そろった。前回、義経(菅田将暉)が首になってしまってその意味でも節目の回ということになるだろう。しかし、今回終了時点で頼朝(大泉洋)はおろか後白河法皇(西田敏行)も死んでいない(後白河は次回崩御予定)。このペースで「承久の乱」までいけるのか非常に心配である。

上記のようなペース配分の事情もあるのだろう。一般によく知られた「奥州合戦」(昔は奥州征伐とか奥州征討という言い方が一般的)自体は、「義経という武器を失った平泉はもはや鎌倉の敵ではなかった」というナレーション(長澤まさみ)のみであっさり終了。トップ画像は奥州合戦の回に備えてGW中に取材してきた善福寺公園内「遅野井の滝」に由来する弁財天の祠。せっかくなのでアップしておく。下の画像が遅野井の由来とその湧き水。義仲(青木崇高)が弓で水を湧かせたという噂を頼朝が聞いてその真偽を確かめるというシーンがあり、それと連動させるのかと思っていたのだが……。

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さて、鎌倉方の大勝利に終わった奥州合戦。平泉の本陣では藤原泰衡(山本浩司)の首実検がおこなわれていたが、己の欲得で主人の首を差し出した河田次郎(小林博)は首を刎ねられてしまう。「これからは忠義の心が大切」という頼朝。しかし、御家人たちは義経が死んでしまったことを悔いている(頼朝への忠義に不穏の影!)。土肥実平(阿南健治)が衣川で果てたとされる義経に手を合わせてこようと思うと言うと、皆も賛同する。梶原景時(中村獅童)だけ、皆の座には加わらず離れて飲んでいるが、そこにすかさず気遣いするのが義時(小栗旬)であった。

鎌倉に戻った頼朝は上洛に向けて動き出す。頼朝は、都帰りの時政(坂東彌十郎)を謁見する。後白河に気に入られた時政の京での様子が挿入されるが、義仲や義経とはまったく違う時政の強かさが、双六シーンで描写される。また後白河は奥州攻めの功に対して望みの恩賞を出すと文に認めていたが、頼朝はそれを断る。頼朝も時政も狸である。しかし、平家も義仲も義経もいなくなって後悔しきりである後白河に丹後局(鈴木京香)が言う「皆、院が望まれたこと」との一言が、もっとも核心を突いているように思う。一番の大狸は丹後局かも(ネタバレしてしまえば、院崩御のあと後鳥羽上皇が院政を敷くまでの間は丹後局が朝廷を牛耳る)。

再び鎌倉。頼朝、政子(小池栄子)、義時、八重(新垣結衣)、万寿(のちの頼家)と金剛(のちの泰時)のシーン。三谷脚本ならではのテンポの良いリズムで源氏と北条氏の将来を暗示しつつの微妙な(?)人間関係が描かれる。頼朝のおふざけに落ち込む義時を「小四郎殿で良かったと心から思っています。……あなたが今の鎌倉をお作りになられたのです」と励ます八重であった。

時政とりく(宮沢りえ)にも待望の男子誕生。北条一族が一堂に会する今回見所の場面では大姫(南沙良)がちょっといっちゃっている様子。自ら「葵」と名乗るようになり、子どもができて喜ぶ時政に「元気を出してください」とか「おんたらくそわか」といった妙なまじない文句(*実際には良い意味の言葉である)を伝える。時政の娘を正室として娶った畠山重忠(中川大志)や弟の北条時連(のちの時房、瀬戸康史)も困惑気味。大姫の奇行が目立つ怖いシーンであったが、これからのちの一族の運命を暗示しているとも考えられる重要シーンであろう。その最初の兆候(?)が八重が川に流されて死んでしまうシーンかもしれない。八重を捜索している時に大姫は母の政子に「ムダよ。助かるわけないわ」と断言するのであった。

先走ってしまったが、時政が建立した伊豆の願成就院では時政が奈良から呼んだ仏師運慶(相島一之)が登場。ドラマは、阿弥陀如来座像の神々しい姿と八重の己を犠牲にして鶴丸を助けるシーンが交錯。視聴者も阿弥陀様と八重の姿が重なったのではないだろうか……三浦義村(山本耕史)の立派な上半身に目がいってしまった人も多かったようだが・w

八重姫伝説では千鶴丸が殺害された折に自らも入水自殺したということになっている。今回、八重が川で流されて死ぬというシーンもそうした伝説をリスペクトしてのものであろう。



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