『鎌倉殿の13人』第34回「理想の結婚」(2022年9月4日放送 NHK BSP 18:00-18:45 総合20:00-20:45)

個人的には失脚した九条兼実が久々に登場して嬉しかったのだが、6歳年下の弟の慈円のほうがずっと年上に見える(実際に役者さんは慈円の山寺宏一が1961年生まれ、兼実の田中直樹が1971年生まれだから致し方なし)。いずれにせよ、この2人が『玉葉』『愚管抄』と記録を残してくれたお陰で今の三谷脚本もあるのだし、この大河ドラマが成立しているのだ思えば、感慨深いものがある。

今回はしかし、その両者の記録にも『吾妻鏡』にもない三谷イマジネーションが強烈な印象を残す回となった。それが「鎌倉殿の13人」のひとりである二階堂行政の娘が伊賀朝光に嫁いで産んだ子どもの「のえ」、つまり二階堂の孫娘(=伊賀の方)のキャラクター。義時の3人目の妻となるのえ(菊地凛子)はこれまでの2人とは違って、「キノコが好き♡」という女子であり、義時もようやくキノコ好き女子と出会えて理想の結婚と思いきや……。

八田知家も見る目がないだの、平六に見定めさせるべきだったのではないかだのネットでは騒がしいが、のえの本性を見抜いたのが泰時というとんでもない伏線(義時の死後、泰時とのえの実子が執権の座を争う「伊賀氏の変」)であった(もっともそこまでこのドラマが描くのかどうかわからないが)。

歴史の記録にはなかなか残らない女性たちの活躍ぶりが令和の大脚本家・三谷幸喜の手によって生き生きと描かれるだけで、今回の大河は見ていて楽しい。何も主人公に女性をもってくるだけが方法ではないということがよ〜くわかるのである。

さて、相変わらずの帝王教育に謀殺され、己の生きる道を見失いかけていた実朝にと和歌との出会いのシーンが感動的であった。前回、三善康信が実朝に和歌の調子を説明するシーンも秀逸であったが、今回は政子が書き写した分厚い綴りが登場。あぼ分厚さの演出が素晴らしかった。あれがまさに理想の結婚だったのかもしれない。


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