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歯科医師国家試験(病理学分野)

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国家試験の病理学分野を自分なりに解説します
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歯科医師国家試験117D14(HPV感染症)

ヒトパピローマウイルス〈HPV〉の感染が疑われるのはどれか。1つ選べ。

a 骨腫
b 血管腫
c 線維腫
d 乳頭腫
e 神経鞘腫

解答:d

問題と直接は関係ありませんがa.b.cは非上皮性腫瘍です。非上皮性腫瘍は正常組織の上皮組織下の結合組織、筋層、骨(非上皮性要素)のどの部分が増えているかを考えることが重要です。
HPVは腫瘍ウイルスとして子宮頸癌や中咽頭癌の発生に大きく関与します。これ

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歯科医師国家試験109C123(病理検査)

術中迅速診断の目的はどれか。1つ選べ。

a.切除断端の検索
b.上皮異形成の分類
c.顎骨内浸潤の深達度
d.感染ウイルスの同定
e.自己免疫疾患の確定診断

この問題の解答はaとなります。術中迅速診断の目的は切除断端陽性かどうか,リンパ節転移の有無,解剖学的に生検が困難な部位の腫瘍の診断などです(口腔病理学第3版)例えば舌癌でリンパ節転移があれば頸部郭清は必須になるので,術中迅速診断は治療方針

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歯科医師国家試験117A48(病理学)

リンパ組織を伴うのはどれか。2つ選べ。

a.鰓嚢胞
b.歯肉嚢胞
c.Warthin腫瘍
d.歯原性線維腫
e.鼻口蓋管嚢胞

a.鰓嚢胞は軟組織に発生する非歯原性の発育性嚢胞です。胸鎖乳突筋前縁の側頸部に生じることが多いので側頸嚢胞とも呼称されます。
画像所見では耳下腺に発生する腫瘍性病変との鑑別が重要となりますが,鰓嚢胞は耳下腺とは関連しないので一層の線維組織で境されています。
リンパ球が集

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歯根嚢胞の裏装上皮の形態について

歯根嚢胞では国家試験でも網状の上皮脚(口腔外科学第4版ではアーケード状と表現)を認める事があります。歯根嚢胞は齲蝕や歯の亀裂,破折など様々な原因で歯髄が感染し,防御反応として歯髄炎が生じ,歯髄は側副循環に乏しくまたローコンプライアンスの為,壊死物質も蓄積しやすく圧力が高まりやすいです(いわゆるドミノ理論)
また軸索を逆行性するような伝導が生じると神経終末部からはCGRPやSPが分泌されてさらに炎症

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