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職場の愛されキャラ「やまちゃん」

 やまちゃん!39歳独身、私の部下である。目つきがちょっと悪く。人とコミュニケーションをとるのが苦手。だが話し好き。おそらく学校時代の成績は下の方だろう。ゲームやマンガをこよなく愛し、仮面ライダーが大好きだ。車は軽自動車に乗っている。思い荷物を運ぶとき、なぜかすーっとどこかに消える。反対に私が自動販売機でジュースを買うときに現れる。
 誰かに思いっきり詰められても全く気にしない。話をしているときに平気で割込む。しかも全く違う話題で人の話を折る癖があり、いろんな人に注意されてるがまったくなおらない。私の足を踏んでおいて「痛い」という強者だ。

 人事異動で彼と同じ配属になったのが数年前だ。噂では聞いていて彼の上司はみんな胃に穴が開きそうだと言っていた。
エピソード1 リフト事件
 ある日、私が作業場のゴミをほうきで掃いていると彼の乗ったリフトが猛スピードで通り、せっかく集めたチリが吹き飛んだ。「あれ!?」と思ったがアッという間に走り去った。私は気にせず再び掃き掃除を始めたが、同じことを2回やられた。さすがに今度は頭に血が上り、私は持っていた竹のほうきを床に思いっきり投げつけた。もちろん、彼は気づくことなく走り去った。しかも突然の竹ほうき全力投球で私は整骨院に1か月通うほど肩を痛めたのだ。

エピソード2 漁師結び
 ある日、私は荷物を積んだトラックで近くの事業所に行くことになった。やまちゃんは気を利かせてトラックの荷台にリフトで積むと荷崩れ防止のロープを張ってくれた。しかし、ロープの結び方が見慣れない結び方だ。これで大丈夫かと聞いたところ、彼はこの結び方は漁師直伝だと自信満々なのだ。漁師結びというその結び目は普段見ているものより10倍はあるような大きい結び目なのだ。一抹の不安を抱えながら、そのまま有料道路へ乗り目的地に向かう。数キロ走ったところでパトカーのサイレンが鳴り私の運転するトラックは止められた。不安が的中し、漁師直伝のその漁師結びは呆気なくほどけたのだ。とりあえず注意だけで済んだが、警察官の誘導の中、有料道路でロープの結び直しをした。最初っから一度ほどいて自分で結べきと後で職場のみんなに笑われた。

 この2つのエピソードの共通しているところは、彼には全く悪気がない。私に意地悪してやろうとか、困らせようという意識は無く、いたって大真面目で一生懸命。”おっちょこちょい”だけなのだ。被害者は私だけではなく、彼に関わった人は何かしらのエピソードを持っている。

 私はキャラの立っている人が案外好きだ。社内ではコンプライアンス会議という集団リンチが当たり前になり、同調圧力でみんな同質の人になってしまう。おそらく現代社会では「寅さん」のようなキャラは許容されないだろう。みんなと同じようになってほしいと思うから胃に穴が開くほど考え込んでしまうのだ。私は職場の雰囲気をよくするためのネタにしている。


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