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私の大腸がん体験記11-人生の分岐点

体にまとわりついていた、管は残り、点滴のみとなった。とても動きやすい。突然襲ってくる咳は腹に響いて痛いのだが、それを除けば、当初目標にしてきた3つの壁も越えた。いよいよ入院生活を満喫してやろうかと思ってはいたが、どうも楽しめない。悪いところは全部取った。テレビでは世界陸上、西遊記の再放送、甲子園では公立高校の佐賀北高校が快進撃を続けている。

ドラマのストーリーは頭に入ってこないし、高校野球や世界陸上も集中して見ることが出来ない。退院が近づくにつれ不安になる。転移のことが頭にちらつき楽しめないのだ。病室で知り合いや看護師さんの前では自分を強く見せようと余裕のあるふりをするが、時折考え込んだりしてしまう。精神衛生上良くないのだが自分ではどうしようもない。入院前、98Kgあった体重も80Kgまで落ちた。自分は本当に気の小さい臆病な人間だ。

窓の外を眺めると三陸道、普通に仕事し普通に運転している人たちがいる。子供たちはどんな人と結婚しどんな人生を送るのだろう!できるだけ長く見守りたい!来年の今頃は私の家族はどういった状況なのだろう!自分は普通に仕事しているのか!?それとも治療のため病院に通っているのか!?

手術5日目、例のごとく主治医の先生が突然やってきた。
先生:「明後日退院しましょう!」
私:「そうですか、では妻に連絡します。いろいろとありがとうございました。」
先生:「順調ですよ。頑張りましたね」
私:「自分はただ痛みを我慢しただけです」
先生:「退院した2か月ごとに転移の検査を半年、その後3か月ごとに半年、そのあとは半年ごとの検査を4年、合計5年間の経過観察となります。また、一緒に頑張りましょう!」
私:「どのように生活すればよいでしょうか?気をつけることは?」
先生:「普通に生活してください。ストレスためないことでしょうね。」
私:「ありがとうございます。またよろしくお願いします。」

そうかストレスの無いように生活すればいいのか。では、退院したら子供たちの成長を全力で見よう!仕事復帰したら変なプライドを無くし、偉い人とは距離をとり社内政治から極力逃げよう!
これまでは農家の長男として土日は農業の手伝いをさせられていたが、それもやめよう!よくよく考えると休日の農作業はやらされている感があって全然楽しくない。かなりストレスになっていた。そして職場の仕事は粛々と、休日は有意義なものにする。ピアノか英語でも習おうか、新しいことに挑戦しよう!などとベットの上で考える。なんだかとても楽しくなってきた。こっちの方が精神衛生上とてもいい。この大腸がん経験を境に自分の人生と思考をチェンジする分岐点にする。健康第一!

つづく





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