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【13日目】時間というシナリオが『修正』されるとき(ジンセイのトリセツ)

◆時間には「シナリオ」があるが

 今回は……「時間の修正」に少しだけ触れようと思います。

 本当はエキスパート編でしっかりと『時間の構造』を語った上でこの話をしなければ、完全に理解するのが難しいのではないかと考えているのですが、やっぱりここで少しだけ触れておこうと思ってます。なぜかというと、前回の話

『未来は、すでにある』

という内容は、人によってはちょっと「絶望的」すぎるのかな、と思いまして……。

 いや、内容自体は、本当にそのとおりなんです。僕たちが

・いつ死ぬ予定なのか
・どこでどんなふうに死ぬ予定なのか

というのは、もうすでに未来の決まった時刻にイベントとして存在するんです。もちろん、あなたの知っている人のものもあるし、もちろんこれは、もう体験してしまった「誰かの死」も事前にその時刻に配置されていた、ということを意味しているんです。

 前回話した『海賊探検ボート』の要領で、僕たちは「すでにある未来」の中に流れる「時間」という川を、ひたすら「その時」に向かって進んでいく運命にあります。後戻りはできないし、そもそも初めから終わりまでがすでに「完成」された状態の「ジンセイ」を進んでいくので、後悔は誰にでもあるでしょうけどそれすらも「織り込み済み」なのだからそもそもやり直す必要がない、という結論になるんです。

 ですが……ちょっと高度な話ですが、そんな『時間軸』というものの「シナリオ」が

修正される

ことも、多分ですけどちょいちょい起こっています。

(例によって「どうしてそんなことが可能なのか?」という理論はエキスパート編まで待って下さい)


◆地獄にいる者は時間の修正に気づけない

 問題は、僕たちがこういった時間の修正というものを

「全く知覚できない」

という点です。どうやっても、知覚できないんです。

 僕たちが「時間の修正」を知覚できない理由は、僕たちには

「今」という時間以外を知覚できない

からなんです……未来はもちろん、過去もです(過去もですよ)。

 まず、僕たちは「未来」を知覚できません。地獄で暮らしている生き物は、未来にどんな事が起こるのか「わからない」状態で生きています。人間も例外ではありません。理由は【7日目】で「じゃんけん」の話のときに書いた

 ②「今」という時間の先を知覚できない

というルールがあるからでしたね。だから、未来に起こるシナリオが「修正」されたとしても、どのみちその時にならないと知覚できないので、その修正を「今」の僕たちが知ることはできません。これが一つ。

 次は過去。過去が変更されたら、記憶と違うぞ? なんて気が付きそうなもんですよね(覚え違い、勘違いは除きますよ……よくあることですが)。

 ですが、過去がもし「修正」されたら、僕たちの記憶というものもおそらく「上書き」されます。記憶が上書きされるとどうなるか……おそらく僕たちは何事もなく「修正された過去を通ってきた」という記憶を持った状態で生活することになります。
 ですから、自分の記憶が書き換わったことそのものに気づくことができないんです。

 ……こういう概念はちょっと難しいかもしれませんが、たとえるなら

ゲームでボス敵にやられたあと、セーブデータからやり直している

ような要領です。僕たちプレイヤーは「セーブしたあと、一度ボスに殺されている」ことを知っていますが、ゲーム内のキャラクターたちは「一度死んだ」ことを当然知らないんです。

 プレイヤーである僕たちは「次の部屋で強いボスが出てくる」ことを知っていますし、そのボスに一度やられていることも知っています。ですからそのボスにもう一度挑む前に、セーブポイントでキャラクターたちの傷を回復し、装備を整え直して、その敵に合わせて準備をすることができるわけです。
 ですがきっと「ゲームの中のキャラクター」たちは当然「次の部屋で一度死んでいる」ことそのものを知りません。だから「なんかイヤな予感がするから、ちょっと装備を見直して傷も癒やしておくか」と思いついて準備をしたら、幸運にも次の部屋でボス敵に対抗できた……という「時間のシナリオ」をその時初めて体験することになるんです。

 これは僕たちプレイヤーが「ボス敵に勝つ」という未来を体験するために、準備不足のまま挑んだ「キャラクターたちの過去」をセーブポイントからやり直すことで「修正」したことになりますよね。現実世界の過去の修正というのもこのような要領で起こるものだと考えられます。


◆『想いの力』がシナリオを修正する

 こういった「時間の修正」がなぜ起こるのか、というと……

 ちょっと壮大な話になりますが『宇宙の歴史全体のデザイン』という観点で「より優れている」ものが採用されるから……という回答になるんです。その「より優れている」の基準になるのが

実際に生きてみて、どうだったか

という、個々人が【個別のドラマ】をやりながら感じていること、願っていること、そういう『想いの力』なんです。

 ……難しいでしょ? どうして個々人の感想が宇宙のデザインに反映されるのか? という話になるんです。この辺はエキスパート編でもっと詳しくご説明する予定です。

 今は……たとえ「未来が決まっている」状態でジンセイをレコードの音楽のように「流している」のが僕たちの『時間』というものの本質だったとしても、あなたの

  • 今の苦しみ

  • 今の悲しみ

  • 今の痛み

  • 今の願い

そういうものは全っっっっ然、無駄ではありません。こういう体験は「地獄でしかできない」ので、どんどんその想いを感じて下さい……それが未来や過去を「創り直す」きっかけになったりするはずです。


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「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)