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【9日目】三つのパーツと『大いなる勘違い』(ニンゲンのトリセツ)

◆わかりにくい「ココロ」と「アタマ」の違い

 では『三つのパーツ』についての、より詳しい説明をしていきましょう。

 まず『カラダ』ですが、これは「目に見える」ので分かりやすいですね。ですが、残りの二つ『ココロ』と『アタマ』は「目に見えない」ので、なかなか区別がしづらいのではないかと思います。

 これまでの心理学や哲学、宗教学やスピリチュアルの世界でも、これらを明確に「別のパーツ」だとして扱ってきてものは少なかったのではないかと思います。ですが、モトというものを通して観察すると、これらは

「全く別の動機」で動く「別の器官」

であることが分かってきます。

◆ココロが動作する動機とメカニズム

 そもそも『ココロ』というものは、これまで説明してきたとおりこの「モト」というものの「量」と「変化」に応じて感情を出す、という働きをしているパーツです。これは本当に「機械的」に行われる動作で、その動作は「好き嫌いゲージ」というものの針だけを参考にしています。

 どうしてそういう働きをするのか、というのも話しましたね。ココロの動機は「モトあつめ」というこの一点だけなんです。ココロという器官は、モトを増やしたい! ということだけを思っています。その他のことは、実は一切考慮していません。

 そしてその「モトあつめ」のための「ツール」として、各種の感情を出してくるわけです。感情というのは、言い換えれば「気分」ですよね。気分とは「何かをしたくなる(もしくはやめたくなる)気持ち」です。

 ココロが『怒り』の感情を出すのは、好き嫌いゲージの針が急に下がったとき(=モトが減ったとき)ですので、『怒った』人はそのとき減ったモトの「量」を増やすべく、人にイライラした様子を見せようとしたり、暴力や暴言を放ったり、ときには関係ない人に八つ当たりをしたり、という「気分」になります(しつこいようですが、モトは「注目」されると集まります)。
 また『嬉しい』感情が出ているときは、頬を緩ませ笑顔にしたり、ウキウキした「気分」になりますよね。これらも「モトあつめ」の一環なんです(「二番目のモトあつめ」をやるためのツールなんです……詳しくは初級編で)。
 このように、ココロというものは

「好き嫌いゲージでモトの量と変化を監視する」
  ↓
「変化に応じて感情を出す」

という、とても機械的な動作をするパーツなんです。

◆アタマの働きと「ココロとのケンカ」

 一方で『アタマ』というパーツは、全く別の要因で動きます。アタマというパーツは、カラダから送られてくる情報、すなわち五感「見る」「聞く」「嗅ぐ」「触る」「味わう」から、今、周りがどんな状況なのかを常に観察しています。そして、自分の身に危険がないか、そして(人間の場合は)社会での振る舞いは適切かどうか、そういうことを「考えて」います。

 もちろん『ココロ』と連動して働くこともありますので、ココロが出してきた「感情」を把握して、それを「行動に移すかどうか」を考えていたりもします(ここでよくケンカが起こるのですね)。

 前回のお話にもあった通り、ココロとアタマはよくケンカをします。それは、このように「何を根拠にしているか」が違うからです。ですから、アタマが余計なことを考えてしまって心配になったり、相手のことを考えすぎてヤキモチを焼いてしまったり、取らぬ狸の皮算用で無駄にがっかりしてしまったり、と、自分の「内側」でストレスが増えていく原因を作ってしまったりするのです。

 こういうストレスは、ほとんどが

『ココロ』と『アタマ』は別のパーツ

だということを理解していないことが原因で起こります。自分の『ココロ』なのに、自分が「考えた」通りにならない! という思いがストレスになっていくわけですが、それは先ほどまでの説明から考えたら「当たり前」のことなんです。だって、二つは全く別の動機で動いている「別のパーツ」だからなんです。

 逆に言うと、この「別のパーツだ」という割り切りがあると、生きるのはとても楽になります。なぜなら、もともと別のパーツなので、別の結論を出すのは「当たり前」だし、だからどちらを優先すればいいかを、その時その時で変えていけばいいだけだと気づくからです。

◆三つのパーツと「優先順位」の勘違い

 その優先順位なんですが、この三つのパーツ『カラダ』『ココロ』『アタマ』というのはどれも「人間の生存」に必要不可欠な、とても大事なパーツなので、本来は三つそれぞれを均等にケアしないといけないんです。どれかが壊れてしまったら、それだけでこの世界で生きるのは随分苦しくなりますからね。下手したら、死んでしまうかもしれません。

 ですが……実は僕らは、この優先順位について、普段の生活で

『大いなる勘違い』

というものをしてしまうことがあります。それもしょっちゅうあります。


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「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)