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身の回りの仕組みに、違和感を持ったとき

その仕組みやシステムは、変えられる大きさのものもあれば、変えられない大きさのものもあります。

違和感を持っても、自分でどうにか出来なさそうと思えば、違和感はなかったことになります。こどもは違和感だらけで、事あるごとに「なんで?なんで?」と攻撃をしかけてきますが、大人になるとそう言う事も減っていきます。

でも、違和感を持った仕組みを、変えられないからといって諦めてしまうのは勿体無いんじゃないかと思います。変える以外にも、違和感を持った時に出来ることはあるかもしれません。

抵抗する

例えば、抵抗すること。抵抗するのは、流れに逆らう事なので、もしかすると変えることよりも大変かもしれませんが。

西洋のデザイン史では、産業革命後の大量生産によって、粗悪な商品があふれていた時代に、テクノロジーの発達に抗おうとする動きがありました。
アーツ・アンド・クラフツ運動、アール・ヌーヴォーなどの革命的な動きの中では、機械的な大量生産の動きに逆らって、手仕事に帰り、生活と芸術を統一することを主張しました。

モリスは産業的な大量生産に猛烈に反対した。モリスは、環境汚染、疎外された労働、粗悪な大量商品という産業化の結果を、悪魔のような資本主義的な作り物であり人類の敵であると考えた。
ー トーマス ハウフェ『近代から現代までのデザイン史入門』

進化を止めることは出来ないですし、抵抗は持続的なものではありません。でも、あるシステムや流れの中で失うものに光を当てるという行為自体が示唆を与えて、周囲の価値観を変えたり動きを変えるきっかけになることもあります。

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離れる

離れることも、一つの行動です。森の生活者、ヘンリー・デイヴィッド・ソローはガンジーにも影響を与えたと言われる思索家ですが、森の中で自分で家を建て「持たない人の方が幸せになれること」と言った価値観を持って自給自足の生活を送っていたそうです。

僕はしっかりした、明るい清潔な家に住んでいるが、それを建てるのにかかった費用は、あなたの家のようなあばら家の、一年分の家賃とほとんど変わらない。あなたもその気になれば、一、二カ月で自分の城を建てられる。僕はお茶もコーヒーも、バターもミルクも、新鮮な肉も口にしないので、こういうものを買うために働く必要がない。それで、あまり働かないのでたくさん食べる必要がなく、食費もほんの少しだけ。しかし、あなたはお茶やコーヒー、バター、ミルク、牛肉を食すので、そのためにせっせと働かねばならない。体力の消耗を補うために、たくさん食べなければならなくなる。だったら、結局は働いても働かなくても同じことではないか。
ー ヘンリー・ディヴィッド・ソロー『孤独の愉しみ方』

システムの循環から離れることで、その循環の一部ではなくなる。例えばヴィーガンという生き方も、人間が動物を食べるというシステムの循環から離れており、その行為は自分の違和感に対する意思表示になります。

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適応する

システムに抗わない形で、適応する。システム自体に違和感を持ったとしても、構造や仕組みは変えずに、見方を変えたり、モノサシを足したりする事でシステムに適応するという選択肢もあります。

『持続可能な資本主義』では、資本主義経済の中で「よい」とされている事に疑問を持ち、新たなモノサシを加える事で「よい」とされている定義をも変えています。

「フローの増加を追求すること」は社会全体の短期的最適化、「ストックの増加を追求すること」は長期的最適化とも言えます。いまの資本主義は、とにかくフロー、つまり早く大きく儲けることをがむしゃらに追い求めます。もしフローだけを基準にして考えれば、それが正解でしょう。しかし、それでは長期的最適化からはどんどんかけはなれていってしまいます。私たちはいまの資本主義に、「時間軸」というモノサシを加えなければならないのです。
ー 新井和宏『持続可能な資本主義』

システム自体に変化を与える事ができなくても、見方や測り方を変える事で、自分が違和感を持った対象について定義を変えたり、新しく意味を与える事だってできます。

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再構築する

システムがどう言った力で働いているかを捉えて、その仕組みを再構築する。システムそのものを再構築するという動きは、本質的で破壊的なものになるはずです。

こういった問題は本質的に、システムの問題だからです。こう言った問題が解決に向かうのは、私たちが自らの直感を取り戻し、非難をどこかへ向けるのをやめ、システムをそれ自体の問題の源であると見、そのシステムを"再構築する"勇気と知恵を見いだしたときだけです。
これは明白でありながら、破壊的でもあります。昔からのものの見方でありながら、新しい見方でもあります。ほっとすることでしょう。「解決策は私たちの手の中にある」のですから。一方で、心をかき乱すものです。なぜなら、私たちはこれまでとは異なったやり方で"物事を行う"必要がある、少なくとも、これまでとは異なったやり方で"物事を見" "考える"必要があるからです。
ー ドネラ・H・メドウズ『世界はシステムで動く』

システム思考で整理すると、もしかすると自分が感じていた違和感の根源は別なところにあるかもしれません。システムを再構築する事ができなくても、目の前で起きていることを注意深く観察して、洞察した結果見えてくるものもありそうです。

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一般的な考え方や仕組みから逸脱して、何か行動に移すというのは労力がかかるし大変ですし、与えられた通りにやるより時間もかかります。

でも違和感を「なかったこと」にすると、自分の活動は他の人でもできることばかりになっていきますし、それはいつの間にか人間じゃなくてもできることになっているかもしれません。

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