さくらの雲*スカアレットの恋_感想

YouTubeで流れてきたOPがツボだったので発売前からずっと気にはなっていたのだが忙しさゆえなかなか機会がなく、こんな時期になるまでプレイできなかった。Twitterで「さくレットは2020年のうちにやるべき」という言説を見かけたので他の予定を崩してまでプレイしたが、そうするだけの意味はあったと思える。2020年にこれをプレイすることができた巡り合わせに感謝。

ネタバレの前に言いたことだけ先に書いておこう
(断定口調なのは許して)

・「さくレット」は絶対にやるべき。
・9-nine-シリーズにハマった人なら絶対にハマる。
・巧妙に伏線が散りばめられた精緻な物語が好きな人も絶対にハマる。
・エロシーン目当てでプレイしても後悔はしないと思う。
 (もちろんそういうのに興味がなくても後悔はしないが)
・できれば2020年のうちに(2020年が身近なものであるうちに)プレイすべき。
・伏線が多いので忘れないうちに一息にやり切ってしまうべき。

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以下ネタバレ注意

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ストーリーについて

この物語は、一言で言えば「徹頭徹尾驚きに満ちた物語」だった。プレイ開始後、どこで所謂「分岐」があるのかと思ったら分岐が来る前にまさかのBAD END。タイトル画面に戻された後は選択肢も何もなく勝手に個別ルートへ順に突入することになる。このシステムは9-nine-シリーズを一本にまとめたらこんな感じではなかろうかというイメージ。1周目では解決できなかった問題をそれぞれの個別ルートで解決し、真相を明らかにすることで帝都に渦巻く陰謀の姿が浮かび上がってくる。それまでの流れのどこかでポロッと出てきた一言が伏線となって絡まった糸が解けていく様は美しいという他ない。私はこの鮮やかな手口に何度も度肝を抜かれた。いいものを見せてもらった。

また、このゲームでは「2020年に生きる主人公が100年前(大正時代)にタイムスリップする物語」という触れ込みがとても効果的に働いていたように思う。プレイヤーにとって2020年が確定した現在としてイメージしやすすぎるが故に「現実での2020年と同じ時が流れている」と思い込んでしまった。一言もそんなことは言われていないのにも関わらず。だからこそ最後の最後に至るまで「右手の運動」を文字通りの意味で受け取っていたし、主人公である司の心情や行動原理に気づくことができなかった。その分「平永」「桜雲」というワードが出てきた時にはめちゃくちゃ盛り上がれたが。

そして特典で「司と所長にあり得た幸せのカタチ」を提示してくるのも心憎い(「とある冬の枝」)。本編の締めくくりはもちろん「幸せのカタチ」としては良いのだが、やはりプレイヤー側としては特典のストーリーのような幸せを望みたいのもまた事実。その辺りの機微がよくわかっているなあという感じだ。

あと、これは好みの問題かもしれないが、所謂「Hシーン」の描写がとても巧かったように感じる。二人の間に流れる甘い空気や溢れる愛おしさだとか快楽に溺れていく過程だとか、そういうものが丁寧に描かれていた。

登場人物について

物語の素晴らしさは先に述べた通りだが、登場人物もそれに負けず劣らず良かった。ヒロインの4人がまさかあんな背景を持っているとはプレイする前は予想すらできなかったし、ヒロイン以外の人物もなかなかな影を背負っていてキャラが立っていた。ルートごとのほんの些細な違いによって敵にも味方にもなるという関係性が多く、物語の真相に近づけば近づくほど誰がまともなのかわからなくなっていったのも印象的だ。ヒロイン以外の登場人物はほぼ全員どこかしらで主人公たちと敵対してる気がするし。以下各ヒロインについて重点的に述べる。

遠子
その可憐な容姿にそぐわない闇を抱えていた。「道を踏み外した姿」がヒロインの中で唯一明示され、その手を血に染めていたことが印象的。セーラー服衣装があったのが時代設定的に他のヒロインとの差別化ポイントとなっていて興味深かった。また、珍しく司が攻めにまわれていた()。


一般人枠(?)だからか物語の本筋には絡めていないことも多かったが終盤に発揮された手先の器用さはチートだと思う。印象は「序盤:純朴 途中:小悪魔」だったけど最終的にえらいとこまでいっちゃってた。司の開発がえぐい。まあ司といちばん恋愛していたのは間違い無いだろう。少々倒錯的にすぎる面もあるが。

メリッサ
メリッサルートのラストのあの展開は衝撃的だった。アララギ曰く一人だけいるという超能力者がまさかメリッサだとはね。個別ルートの最後の最後に「主人公の秘密」「自分の秘密」という特大の爆弾を残していかれたからそこから最後まではほぼノンストップで読み進めてしまった。メリッサはこの物語のMVPと言っても過言ではないと思う。

所長
他のヒロインの個別ルートでは保護者として司の背中を押し、自分の個別ルートでは対等な立場で事件を完全解決、司の未来を救う。まさにおいしい役どころだが、ダメンズ製造機としての才能が凄まじい。普段はポンコツなのにここぞという時にはビシッと決められるのがカッコよく、ラストは所長に泣かされてしまった。

最後に

めっちゃ面白かった!!!!!!!!!


追記

PS4版を読み終わったので追記。仕方のないこととはいえ、流石に全年齢版だけあって、Hシーンとともに伏線のいくつかもまとめて消し飛んでいた。メリッサの右肩とか司がいつ何時も外さない手袋とか。あと蓮の例の流れが丸々なかったので印象が余計に薄くなっていた。そんな感じであっても最後の所長との別れ→マリィの流れでは泣かされてしまうのだから恐ろしい。

追加要素(後日譚)について
まさにこういうのでいいんだよという感じ。言ってしまえば、司が平和に学生を全うして子孫と共に二代目の探偵事務所を切り盛りする様子を描いただけではあるのだが、これこそが所長たちが何より司に送ってほしかった生活なのだなあと思うと感慨もひとしお。探偵事務所に持ち込まれた事件もまさに平和の象徴といったものだし、司の成長も見られて何より。マリィが所長の血を色濃く受けつぎすぎてるのは笑うけど。

最後の墓参りのシーンでは「まだまだ自分たちの知らない謎がこの世界にはある」という、ある意味司が過去に戻ることで得た知見を昇華させる形で締めていたのが美しいと思った。

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