WHITE ALBUM2_感想

「たまには重ための話も読みたいな」と軽い気持ちで始めたのは間違いだった気がしている。だが読んだこと自体には後悔はない。そして、それはそれとしてもう一回読む気にはならない。そんな感じの味わい深い物語だった。

①まず、ボリュームが非常に多い。作中の経過時間が本編だけで5年、おまけまで含めると7年程度と他ではなかなか見られない長期間。人間関係もいや〜な感じに熟成され拗れてしまうという展開に十分以上の説得力があった。読み終わった時には、何かの修行を終えたかのような不思議な爽快感があった。

②そして、主人公とヒロインがたいがい良い性格をしている。浮気を繰り返す主人公が一番ダメなのはそうなのだが、ヒロイン側も浮気を誘発させる行動に余念がなさすぎる。視点が主人公を離れて各キャラクターに移り、新たな情報が開示されるたびに「やっぱこいつが悪いよ......」みたいな気分にさせられるのは珍しい体験だった。あと、春希の声優さんはヘタレのカスの演技が上手すぎて不快感がMAXだったので途中から主人公の声は完全にオフにしていた。ここまでぴったりなのは本当にすごい。

③前述の通り、この物語の登場人物はいわゆる「綺麗な人間」などではなく、良くも悪くも生々しい人間だった。弱くて不完全で、非合理的で、だからこその良さのようなものがあった気がする。

④また、演出は非常に巧かった。千晶√のラストの演劇のシーン、それまでの展開で千晶に対する憎悪を十分抱いていたはずなのに。胸に手を当てるところがぶっ刺さってしまって悔しかった。

⑤おまけを含めるとあらゆる可能性を提示してくれたのは良かった。高校時代はどうあっても破滅だったんだなあという説得力もすごい。「不倶戴天」では憂鬱でどん詰まりの雰囲気から再起に向けての流れが良く描写されていたり、ほとんどの√で形は違えど幸せのようなものを手にできるのは嬉しいところ。

⑥途中であれだけこっちの情緒をぐちゃぐちゃにしておきながら、最後は穏やかな気持ちで読了できてしまったのが謎。どういう技術?


総評
重いのでなかなか前に進む気にはならなかったが、間違いなく名作なので精神的に余裕がある時にやるべき。

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