ある日の通学路で
子供の頃、学校への通学路は薄暗い森の中だった。
不気味な程、背の高いモミの木たちが怖くて
友達と急いで走り抜けた。
ある日、森にオバケが出るという噂がたった。
紫色のドレスを着て森を彷徨う女で、
その顔は紫の花の形をしているという。
私と友達は更に怖くなり、全速力で森を駆け抜けた。
その時、私は木の根につまづいて転んでしまった。
「早く!」叫ぶ友達を見上げると、私の目の端に
紫色のオーガンジーの裾がヒラリと舞った。
はっと、そちらに顔を向けるともう誰も居なかった。
けれど、甘くて高貴な花の香りだけは消えず
私の周りを包み込んだままだった。
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