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「東京を離れる」という選択

村松さん率いる「AND WOOL」は、静岡県の茶畑に囲まれたとても環境のいい場所にあります。デザイナーとして「東京を離れる」という選択をした村松さんですが、今ではそのおかげで活動の幅が、ますます広がっているそうです。

こんにちは、記者のカミュです。連載「村松啓市の仕事」では、世界で活躍するデザイナーの村松啓市さんの魅力や、その作品について、ご紹介しています。今回のテーマは「活動拠点」についてです。

■静岡県という土地での再出発

東京を中心に海外などでもファッションデザイナーとして活躍されていた村松さんが、静岡に活動拠点を移されたのは約8年前。現在は、茶畑に囲まれたとても環境のいい場所で、デザインやニット制作のお仕事をされています。

それにしても……そもそも村松さんが「東京を離れる」という決断に至った理由はなんだったのでしょうか? お話をお伺いしました。

直接のきっかけになったのは、家族のことでした。静岡には祖母や父親がいて、祖母の状態がいろいろと良くなくて「帰ったほうが良さそうだな」と思いました。それに、仕事のほうでもいろいろ思うことがありました。

プライベートの状況などもあって静岡に移られた村松さんですが、お仕事をしていく上では、東京を離れてしまうことに迷いはなかったのでしょうか? 暮らす環境は良さそうですが、多少の不便は感じそうです。

でも、実際にはそんなことはないそうなんです。周囲には、昔ながらの職人さんなども多く、今の「AND WOOL」の活動は、この環境があってこそ成り立っているのだそうです。

最初に静岡に移ったばかりの頃は、一度、デザイナーとしての自分の仕事を見直したいという気持ちもありました。だから、未来のことを考えて、準備、行動しようと。外部企業からの仕事はなくなってもいいや、ぐらいの気持ちでいました。しかしそれが、ちょうどそのタイミングで、国内や海外企業からのオファーが立て続けに入ってきて……「不思議だなぁ」と思いましたが、それはそれで「私を求めてくれるならしっかり仕事をしよう」と。それで、しばらくは海外出張も増えて、東京から静岡に移ったことが不便だとか、そんなことも感じないくらいバタバタしていましたね。そんな中で、少しずつ「AND WOOL」を形にしていきました。

ちなみに村松さん、こんなのどかなツイートも。。。

■新しい「刺激」や「発見」の日々

「東京を離れた」ことで、村松さんはデザイナーとして、新しい「刺激」や「発見」に恵まれる生活を送り始めます。

やりたいこと、将来の目標は、活動当初からなにも変わっていませんが、「AND WOOL」ができてから「どうすればニットや手芸、ファッションを通して、みんなが楽しいと感じてもらえるような活動や仕組みづくりができるか?」ということを必死に考えていました。それまでにないほどクリエイティブな毎日でした。一休さんのように「うーーーん」と、毎日うなりながらひたすら考えていましたので(笑)頭はフル回転でした。

東京にいるほうが、デザイナーとしての世界は広く、可能性も大きいのではないか?と思えますが、そうではないのかもしれませんね。「これまでとはまったく違った環境に飛び込む」という行動が、村松さんのクリエイティブを加速させたのかもしれません。

いろいろなことを考える中で、たくさんの「刺激」や「発見」もありました。例えば、静岡県にはすばらしい産業や職人さんがたくさんいることを知りましたし。そういう人たちにはすぐに会いに行って、何か一緒にできないか、という話をしたりしました。

村松さんは実際に、静岡県の職人さんと一緒に商品を作って、販売したりもしています。とても「すてきでかわいらしい」ものです。

↓親子金のがま口財布

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こちらは、静岡県の革加工職人よる一点一点手作りの商品になります。がま口金を開くと、小銭用のがま口金がさらに付いている財布なんです。(everlasting sproutサイト:https://ever.theshop.jp/items/18789148)

↓水鳥工業とのコラボレーション下駄

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こちらは、静岡県の下駄ブランド「mizutori」とのコラボ商品です。静岡の下駄職人水鳥正志さんが、下駄・サンダル・靴中底作りの職人技を凝縮させた「はき心地のいい下駄」です。(げたのみずどりサイト:http://geta-shop.jp/shopdetail/000000000443/order/)

■ご近所付き合いのような助け合いの「ものづくり」

ファッションデザイナーである村松さんにとって、東京には東京の、静岡には静岡の、いい「ものづくり」の形があるのではないかなと、お話を聞いていて感じました。東京でのものづくりが「切磋琢磨の中で磨かれるものづくり」なら、静岡でのものづくりは「ご近所付き合いのような助け合いのものづくり」と言えるかもしれません。

まさに「ご近所付き合いのような助け合いのものづくり」ですね。ほんとにそれを実感しています。実は、ファッションとは関係ないのですが、私たちは静岡のおいしいお茶を広めるようなお手伝いもしているんです。「とっても美味しいのに、なかなか知っていただける機会がない」と皆様おっしゃるので、「AND WOOL」のワークショップでお客様にご紹介しています。

「AND WOOL」のサイトでは、「AND WOOL」のご近所で取れたお茶を、実際に買うことができます。

お茶、おいしいんですよね(笑)私も大好きで、休憩時間にいつも飲んでいます。もしこのnoteを読んでくださっている方で、いつか静岡の「AND WOOL」のお店を直接訪ねたいと思ってくださる方がいらっしゃったら、ぜひ「あら茶」を飲んでみていただきたいです。一般の市場に出回る前のお茶の原料「あら茶」で淹れたお茶は、トロトロしていて、また違った味わいがあります。私は生まれも育ちも静岡ですが、「あら茶」のことは、最近ご近所の方に教えていただくまで、知りませんでした。

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機会のある方は、ぜひ一度、静岡の「AND WOOL」のお店を訪ねてみてください。

(記者:カミュ)


*お知らせ*

今月26日、普段は静岡で活動されている村松さんが、東京蔵前駅近くのギャラリーで、「AND WOOL」商品の展示イベントを開催されます。入場無料、全商品試着OK、写真撮影OKだそうです。そして、この記事で紹介した「chabashira」さんのドリップバッグのお茶を、当日数量限定で販売されるそうです。ご興味のある方はお早めに。。。

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