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IKEAのカフェで起こったこと

 先日、母に誘われて原宿で食事をしに行った。といっても、母の用事が終わり食事をするのは夜の8時以降、せっかくなのでその前に原宿で遊ぼうと本を携え電車に乗った。

 意味もなく家具を見るのが好きで、原宿駅の正面にあるIKEAに入り、座って本が読めるスペースを見つけて出られなくなった。竹下通りはこーんど。

 IKEAカフェ、存在は知っていたが目にするのは初めてだ。IKEAカフェ、なんて安いんだ!カフェというか、レストランみたい。飲み物はソイラテ(なぜかアイスのみ)、食べ物はイチゴのロールケーキと長い横文字の名がつけられたチキンを頼んだ。オシャレな椅子と机について、リュックから本とノートをどさどさ出して、机に並べ笑う。

 ソイラテ、豆乳を飲み慣れていない私でも違和感なく飲めた。トールサイズくらいあるのに、氷が一切入って無くて最高。氷抜きなのにキンキンに冷えていやがる。おもちゃみたいな木のフォークでロールケーキとチキンをちょっとずつ食べる。ロールケーキは初めから横倒しになっている気取らない、いい意味で安物で、フォークで削るようにして食べるのが楽しかった。
 横文字チキン、実態は粗目の鶏ひき肉が柔らかい衣をまとった唐揚げだった。しっかし生姜の味がする、にっぽんの唐揚げのお味。うましうまし。


 料理を味わう向井の前に、2人掛けの席があった。正方形の白いテーブルに、椅子が2脚向かい合わせ。その席は空いていたが、前の客が残していったパン屑があるせいで誰も寄り付かない哀れな席。
 目を離しているうちに、その席から椅子が1脚無くなっていた。あら1人席になっちゃってると眺めていたら、家族連れの外国人(数えたら7人いた。大所帯)がやって来て、お父さんが椅子が足りないからと残ったもう1脚をひょいと攫ってしまった。残ったのはパン屑で汚れた正方形のテーブルのみ、誰も利用できない席が誕生した。

 孤独な島と化したその席を、私以外誰も気にかけていないようだった。耳を澄ましても「あの席椅子ないね」みたいなおしゃべりは聞こえてこなかった。テーブルだけだと、席として認識すらされなくなるのかもしれない。

 椅子が持ち去られてから1時間、IKEAを出る時も島はそのままだった。私は切ないやら面白いやらでニヤニヤしながらIKEAを後にした。原宿にきたらまた入ろう。


ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。🍏

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