見るとダイブしたくなる植物
それはつつじ
道沿いにみっしり咲き誇る様はまるでベッド。つつじに毒があると知ったのは最近の話だ。
生まれ育った千葉の家には広い庭があって、濃いピンクのつつじが毎年咲いていて、よく蜜を吸っていた。花をもいで逆さまにして、ちゅうと吸うと水っぽさについで甘みがくる。花をもぐという、今考えると憚られる残酷な行為を難なくやっていたのがいかにも子供の頃の思い出らしい。
思えば千葉にいた頃は、いろんな植物と触れ合っていた。セイタカアワダチソウを勢いよく蹴ると、首が刎ねられた侍のように茎が切れて飛んでいくのが面白くて、空き地から歩道に伸びているヤツらを蹴っていた。つくしは優しく蹴って胞子を撒き散らしていた。
この間マンションの敷地内にタンポポの綿毛を見つけて、嬉しくて摘んで綿毛を飛ばそうとして周囲を見て辞めた。すぐそばに1階のベランダがあって、洗濯物がたくさん干してあったからだ。もし服に綿毛をつけてしまったら、この部屋のポストに「近隣に住んでいるものです。タンポポの綿毛を吹き飛ばしたらついてしまいました。これ、クリーニング代です」って5千円札を張り付けた手紙を投函しないといけないところだった。
都内へ越したら植物との触れ合いは絶たれるかと思っていたが、都会には都会の植物があると知った。神社に入れば巨木が聳えている。つつじにこんなカラーバリエーションあると知ったのは、大都市を歩き回って数多の植え込みを見てからだ。
街で見る植物の名前をもっと知りたいと思う。「都会に生えてる植物」みたいな、そんなタイトルの本が図書館にあったりしないだろうか?