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【庭の藝術03】 植物蒐集家の庭 

「ごてごてと 草花植ゑし 小庭かな」という正岡子規の句。
自宅の庭’’子規庵''を評した、この句には、
病床から動けない世界の中で、詩の材料足り得る草花を蒐集し、一句でも多くを詠みたいという業が滲み出ている。

造園の世界では「ごてごて」といろいろな樹木、草花を植えることは、作庭者のエゴであり、落ち着かない庭になると言われ、避けられる。
しかし、目線を変えれば、異種が混生する楽しさに映ることがある。

練馬区立牧野記念庭園はまさに、多種が混生する賑やかな庭だ。

ダイオウマツ、アカシデ、タカオモミジ、ヤマザクラなどの高木をはじめ、アブラチャン、ヤエキリシマ、ドウダンツツジetc。
植物分類学者 牧野富太郎が「我が植物園」としてこよなく愛した庭には、収集された約三百種の植物が、まるで美術コレクションのように植えられている。そして、来園者は無意識的に、美術館やギャラリーのように、一本一本を眺め回遊する。




ふと、’’ごてごて’’とした多種の植物を遠景から眺めてみる。そうすると、一定の美意識で取り揃えられたコレクションであるように感じる。


それはまるで、現代美術家 村上隆が自身の膨大な美術/骨董コレクションを、ひと所に提示した《村上隆のスーパーフラット・コレクション》のように、美術蒐集家の業とアソビごごろ溢れた展示とどこか共通する。

村上隆のスーパーフラット・コレクション 
―蕭白、魯山人からキーファーまで―
横浜美術館 開催期間:2016年1月30日(土)~2016年4月3日(日)

牧野富太郎が自邸に作った植物園は、自ずと美術蒐集家と同じ''嗜好''の回路を辿り、鑑賞価値が高い植物のコレクションで構成された、唯一無二の庭園になったのではないか。

このような、植物蒐集への業に満ちた、多種混生で、ごてごてとした庭は、そこかしこから愛情が溢れている。
そんな愛情溢れる庭は、きっといつの時代の人も惹きつけるだろう。



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