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【庭の藝術 02】 彫刻家 若林奮が造る庭



作庭を依頼された際、かならず読み直す文章がある。
それは、彫刻家 若林奮がまとめた、軽井沢・高輪美術館(現・セゾン現代美術館)の庭園計画に関するノートである。

そこには、浅間山嶺から続く地形についての考察から始まり、来場者が美術館へ向かう間に緊張感を与え、時にほぐすような導線の計画。鉄を自然環境に沿って配する造形的なアプローチまで、驚くほど明瞭にそして端的に、仮説と検証の思考プロセスが明文化されている。そして地形と建物、鑑賞者の関係をストーリー化し、徹底して言語化することで必然性を生み出している。
何度読んでも鮮やかな印象を持つ文章である。

そして、美術家でしか引けないであろう、伸びやかで大胆な線の平面計画図が描かれる。


造園家は、古今東西の造園手法・事例を組み合わせ、植生条件の最適化によって庭を構想する。対して、前衛アーティストは独自の文脈・手法を作品ごとに表現する。

本来、庭は専門家だけが立ち入れる領域ではない。前衛アーティストと造園家で、向き合う庭がもっとあってもいい。

そこには、まだ見ぬ、人の心を沸き立たせる庭の体験が溢れているに違いない。

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