御用聞きケアマネになってはいけない理由

(国民の努力及び義務)
第四条 国民は、自ら要介護状態となることを予防するため、加齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努めるとともに、要介護状態となった場合においても、進んでリハビリテーションその他の適切な保健医療サービス及び福祉サービスを利用することにより、その有する能力の維持向上に努めるものとする。

介護保険法で定められているところを一部抜粋しました。

介護保険サービスの利用者は介護を受けるだけの人ではありません。
要介護状態になったとしても「常に健康の保持増進に努め、その有する能力の維持向上に努めるものとする。」と明記されているのです。

先日ショートステイに行ったKさん(男性)からメールが来ました。
「もうショートステイには金輪際いきません。場所が変わり一睡もできませんでした。」
行かなくてもいいんです。でもたくさんシミュレーションしてこの方法が良いと選択されましたよね?入院した時は普通に眠れていましたよね?
今回は個室です。特に問題点は心当たりがありません。
ではなぜKさんはそんなことを言ったのか?

糖尿病で食生活の見直しが必要な方です。実際にご自宅でどのような食生活を送って頂く必要があるか知ってほしいと考えました。Kさんも「健康的に過ごすための理想的な食生活を勉強したい」と望まれたショートステイの利用です。

いつものような暴飲暴食ができず辛かったのが手に取るようにわかります。主治医からも毎回注意を受けています。
今後神経障害や腎疾患などが併発する可能性が高いです。

好きなお酒をたくさん飲み、揚げ物やスナック菓子を好きなだけ食べられる生活から抜け出す事ができません。

神経障害が発症すれば歩きにくさや痛みと戦うようになる、腎疾患を発症すれば週3回の透析に通わなければいけないかもしれない、状況によっては片足を失うかもしれない。目が見えなくなるかもしれない。リスクは高くなる一方です。

「我慢を続けて長生きするより好きな物食べて飲んで過ごせるなら早く死んでもいい。もう我慢はしないしショートステイも行かない。ヘルパーに買い物に行ってもらえればそれでいいんだ。」

もしショートステイから帰った後このようなことをおっしゃったとしても「はい、わかりました。ではKさんの理想に沿うようにプランをたてますね。」とはなりません。

私たちケアマネは利用者さんの価値観をとても大切にしています。
利用者さんそれぞれの価値観と自分の価値観は絶対に違うからです。
しかしその価値観が明らかに健康を脅かす場合、自立を阻害する場合は良しとすることはできません。

利用者さんは介護されるだけでの人ではなく利用者さん本人も健康の保持増進とその有する能力の維持向上に努めなければいけないんです。

一緒に考えていかなければいけないしケアマネはどうしたらその利用者さんが頑張ることができるかを考えて支援していく必要があると思います。

「御用聞きケアマネ」という言葉があります。

「デイサービスに行きたいです」「ヘルパーさんに掃除に来てもらいたい。」「車イス使いたいんだけど。」

「わかりました!」利用者さんやご家族から言われたまま課題分析もしないでとりあえずサービスを手配するケアマネのことを指します。

利用者さんに言われるがままのケアプランは適切なケアプランとは言えません。
利用者さんに対して「その有する能力に応じ自立した日常生活を営むため」のプランを立てるのがケアマネの仕事です。

介護支援専門員(ケアマネ)という専門職としてケアプランを立てているということを常に頭に置いておかなければいけないと思います。

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