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グランマモーゼスとアップル・バター

2021.06.16

 昨日、今回2回目となる「グランマ・モーゼス展」に行ってきました。

グランマ・モーゼス展は、現在大阪あべのハルカス美術館で開催されています。

なぜ2回もこの展覧会に足を運ぼうと思ったのか。

 それはもう、グランマ・モーゼスの魅力あふれる生き方とその徹底した堅実な生き方に惹きつけられて、少しでも長くその世界にいつづけたかったからだと思います。

 それからなんと言っても「アップル・バター作り」という作品の題名の素晴らしさ。

グランマ・モーゼス
グランマ・モーゼス
グランマ・モーゼス

アップル・バター
アップル・バター
アップル・バター
 

 今もまだ、頭の中でずっとこのおばあちゃんとアップルが飛び跳ねている状態です。

 グランマ・モーゼスは70代で初めて絵筆を握り、80代で本格的に作家活動を始め、なんと101歳まで生きたそうです。

さらに、彼女の創作意欲は相当なものだったのでしょう。展示されている絵画の多さに展覧会の最後には本当にお腹いっぱいの状態になりました。(後半は少々くたびれるぐらいでした)

私が彼女の作品を見る前に、個人的にとても気になっていた作品は

「シュガリング・オフ」

       と

言わずもがなの

「アップル・バター作り」です。

再びになりますが、この題名の素晴らしさよ!

「シュガリング・オフ」!!!!

「アップル・バター作り」!!!!(アップル・ジャムではないんですよ!)

 とても美味しそうな響きと、好奇心をくすぐるようなこの題名の付け方が本当に秀一でした。(多分、グランマはそのままつけただけなのだと思うんですが)

 まず、「シュガリング・オフ」とは、冬の終わりに楓の木から流れ落ちる樹液を取って、大鍋で煮込んでメープルシロップを作る作業を指すそうです。

 続いて「アップル・バター」ですが、これもまた夏の終わりにリンゴの収穫が終わる頃、皮を向いて切り刻んだりんごをありったけ大鍋にポイポイ放り込んで、村中の人々が協力し合って、早朝から夜中までずっと煮詰めてドロドロにしたものらしいです。

 

 メープルシロップは日本でも手に入るので、味は想像できますが、このアップル・バターは、本場アメリカのものをいつか食してみたくなりました。乳製品のバターとは全く違う代物のようなので、味がまた気になるところです。(しつこいですね〜。しかし、大いに味が気になります)

 さて、この2枚の絵はどちらも多くの人々が描きこまれていますが、一人一人の顔はレゴですか?こけしですか?と思うぐらい随分簡略化して描かれています。グランマはあまり個人個人を描くことを得意としていなかったようです。

 この2枚に限らず、彼女の絵の特徴は、まず空があって、山、川、木々、そしてその中に点在する家々。一番最後に人が来るような印象を受けます。

「あ、人を入れとかないとね。そうそう。テンテケテン」と言うぐらい人はあっさり描きこまれています。

 人々は自然に生かされ、感謝を捧げ、移り行く季節をユニオン(一体となって)として乗り越えようとしていたのかな、と遠い古き良き時代のアメリカに思いを馳せました。

 グランマ・モーゼスの少女時代がぎゅっと凝縮されたようのこの2枚は本当にすばらしてくて、幼い頃から今もまだ読んでいる「赤毛のアン」の世界を彷彿とさせました。

 「赤毛のアン」と聞くと、極端にメルヘンチックな世界を想像される方もあるようですが、実はメルヘンチックの対極にある作品だと思います。

 例えば、人生の中で厳しい現実に直面した時、その厳然たる事象に対峙するばかりでは疲弊してしまう。でも、その辛さをユーモアのセンスや、想像力の豊かさで上手に味付けすることによって、いよいよもってくだらないと思われていたことでも、かえって滋味あふれる味わい深いものにしてくれるものだ、と教えてくれる処方箋のような作品に思われます。

 グランマ・モーゼスの世界も一見すると絵本の中の世界のようで、みんなが微笑ましく、仲睦まじく、平和に暮らしている、のほほんとした世界が広がっているようにも思えるのですが、「のほほん」を貫き通すということは、実はなかなのことだと思います。

長い長い冬を皆で乗り越え、そして迎える喜びの季節の到来に、また皆が揃って喜び、浮かれ騒いだことでしょう。そんな1年のサイクルの清らかさに満ち溢れた作品の数々に、静かに熱狂させられました

 ちょっと気分が沈んだ時、なぜだかわからないけれど悲しくなる時に、暖かでそれでいて堅実な揺るぎない世界を見せてくれる「グランマ・モーゼス展」、とってもおすすめです!

それから、アップル・バターがどんな味か想像して観るのもきっと楽しいですよ〜。

モーゼス20210616note

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