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あなたにとってのドムドムバーガー

「お兄さんそれ、ドムドムじゃないの?」
数年前、今の家内と海の近くの町へ旅行に行ったとき、立ち寄った飲食店で50歳くらいの女性から声をかけられた。

ドムドムバーガーをご存じだろうか。
マクドナルドが日本に来る前から存在する日本最古のハンバーガーチェーンで、全盛期は400店舗あったが今は30店舗ほどに数を減らしているらしい。
一応北は岩手から南は福岡まであるらしいが、入ったことのある人のほうが少ないだろう。

で、なぜ私が珍しいハンバーガーショップをきっかけに声をかけられたかと言うと、その時ドムドムバーガーのロゴが入ったパーカーを着ていたからだ。バーガーのパーカー。

確かデザインが気に入って通販で買ったものだったはずだ。大学の頃、よく一緒に遊んでいた先輩が住んでいた町にもあったので、ドムドムバーガー自体は認知していたものの、特に思い入れもなく購入した。
少し申し訳なさそうに女性に伝えると、「そうなの」と言ってこんな話をしてくれた。

その女性は、学生(わからないが、大学、短大、専門学校のいずれかだろう)の頃東京に住んでいた。当時はマクドナルドがなく、ハンバーガーと言えばドムドムバーガーだった。学校帰りに友人と寄ったり、交際相手と休日に寄ったりしていた。自分にとって若い日の思い出の一つだ。この町に来てから思い出すこともなかったが、このパーカーを見て声をかけずにはいられなかった。まだ店舗があるならうれしい。

今ネットで調べたら、ドムドムバーガーの創業が1970年、マクドナルドの日本1号店が1971年にオープンしているようなので、「ドムドムしかなかった時代」は1年程度のようだが、学生時代の記憶はそんなもんだろう。少なくとも、この女性の生活圏内にはドムドムしかなかったということだ。

いい話を聞いたな、と感じるのと同時に、自分にとってのドムドムバーガーとは何かを考えた。
私は高校までを地方の中堅都市で育ち、大学から上京してきた。まだ卒業からそこまで年月が経っていないし、大学時代はいろいろな店に行ったので、あるとすれば高校時代だろう。

「ポッポ」だな。
通っていた高校から自転車で10分ほどの場所に、映画館がついているイトーヨーカドーがあった。「ポッポ」はイトーヨーカドーのフードコートにだいたいある、ポテトやたこ焼きを提供している飲食店だ。今思えば何屋というのだろう、あれは。
私は部活終わり、定期テストで学校が半日で終わった日、映画を見る休日、ポッポに足繫く通った。
記憶では、ポッポは150円ほどで大量のポテトを食べられる。そのフードコートの向かいにはマクドナルドがあったが、当時の価格でもマクドナルドのポテトと比べて半分程度だったはずだ。バイトもしない高校生にとって、マクドナルドは高級品だった。いつの時代も相手役にされるマクドナルド。

地元には数年帰っていないが、件のイトーヨーカドーは少し前にでっかいドン・キホーテになったと友人から聞いた。
今私が住む都心にはイトーヨーカドーがないので、ポッポがまだあるのかわからない。もし飲食店で隣にポッポのパーカーを着た青年が座ったら、声をかけてしまうかもしれない。ポッポが元気に今日も大量のポテトを提供しているなら、私はうれしい。

あなたにとってのドムドムバーガーはなんですか。

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