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無邪気な勝者、優しき敗者

 子供の頃、私にはクラスのみんなから慕われる、人気者の友達がいた。彼はいつも、私の誘いを「嫌だ」と断ることなく、よく一緒に遊んでくれた。彼のお母さんも気さくで優しく、彼らが引っ越して遠くへ行ってしまうまで、本当に親切にしてくれた。
 彼の優しさは数え切れないほどで、まるで光のようにまぶしかった。というのも、私は今振り返ると、子どもらしい非情なところがあったからだ。
 私たちがよく遊んだゲームのひとつが「爆ボンバーマン」だった。このゲームには「ためボム」というテクニックがあって、ボタンを連打することで持った爆弾を大きくし、威力を増すことができる。相手にぶつければ気絶させることもでき、ボタンを早く連打すればするほど爆弾は巨大化する。

 連射パッドを購入した。最初は対戦用の隠しステージを増やす裏技が目的だった。しかし、その便利さにすぐに甘えて、対戦モードで使い始めるのに時間はかからなかった。連射パッドを使えば、ためボムを簡単に量産できるので、負けることはない。私はその連射パッドを友達の家に持ち込み、何度も勝ち続けた。今振り返ると、ひどい子どもだったと思う。

 それでも彼は、そんな私のわがままな遊びに毎回付き合ってくれた。負けるとわかっていても、「これなら勝てるかもしれない」と工夫をこらし、時には他の友達と協力して、何度も挑戦してきた。結果はいつも私が勝ったが、それでも彼は笑顔を絶やさなかった。
 今はもう彼と連絡を取ることはできない。生きているかさえわからない。でも、どこかで、持ち前の優しさと明るさで、必ず誰かを笑顔にしていると思う。彼は誇らしい友人だった。心からそう思う。


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