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至福物質アナンダミド

 気分が落ち込んだ時は、脂の乗った肉を喰らう。しばらくすると、悩みや不安が些細なものに感じられるから不思議だ。
 肉の脂にはアナンダミド、別名「至福物質」の素となるアラキドン酸が含まれているらしい。この物質は快感中枢を刺激し、幸福感をもたらすと同時に、鎮痛効果もあるという。アナンダミドという名前の由来は、サンスクリット語で「歓喜」を意味する「アーナンダ」だ。仏陀の弟子の名にも使われている。
 肉を食べるなら、焼き肉がいい。脂たっぷりの特上ロースをタレにつけ、口いっぱいに頬張る。そして最後にタレをライスにかけて食べれば、脂を無駄なく味わい尽くせる。至福だ。
 ラーメンもいい。背脂たっぷりの豚骨ラーメンに叉焼を追加して、スープと具材を隅々まで楽しむ。これもまた、至福だ。
 フライドチキンもまた、いい。レッドホット味を選び、汗をかくほど頬張る。汗を流せば、カロリーは相殺されるだろう。これも、至福だ。
 身体は食べたものでできている。意識も感覚も、食べたものから生まれるといっても過言ではない。こうして生まれた自意識が、ストレス解消のために肉を喰らえと、また自分に命ずる。
 さあ、肉を味わい、暑気も悩みも不安も払って、至福を手に入れよう。

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