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神海戦士エルマーレ 第1話「戦士の目覚め」Part2 #エルマーレ

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プロローグ
Part1


(これまでのあらすじ)
ごく普通の青年だった海藤碇は故郷の幼馴染、浜乃奈海の行方不明の報を受け帰郷の途についていた。しかし彼の乗っていたフェリー「かげろう号」が正体不明の怪人に襲撃されてしまい、碇は勇敢に戦うも海中へ転落……。


声が聞こえた……余りに聞き覚えのある声が。
海中で何かが光る。彼は必死に“それ”を掴んだ!

そして、視界を紺碧の光が満たす……!!


「……これは、一体……?」
次の瞬間、碇は見渡す限り青い輝きの渦巻く空間にいた。
水の冷たさや沈んでいく感覚は無く、ただ優しげな浮遊感がある。
彼の手に握られているのは、儀礼用短剣にも似た白亜の神秘的構造物だ。その中央にはめ込まれた宝石が穏やかな光を放つ。

(……感じる、確かに奈海の存在を……!!)

碇は確かに何かを感じ取った。彼女はまだ、自分を呼んでいると。

「答えてくれ、奈海は……」
その問いに応えるように、辺り一面から光の粒子が彼の目前ひとところに集まる。


そして眩い光の中から現れた女性の姿は、誰あろう奈海そのものであった。
羽衣じみたヴェール装束を身に纏っていたが、それ以外はどこも変わりはない。


(奈海……なのか?)(正確には、そうじゃない。でもその話は後)
二人の間には海上の光景が浮かび上がっていた……かげろう号が、炎上している。

(俺はいったい、どうすればいい)
(成し遂げて、君がやろうとしてた事を)
碇のしようとしていた事。即ち……(俺には何もできなかった)


その間にも、フェリーの船上はまさに火の海と化していた。
スプリンクラー等の消火設備は正に焼け石に水、非常ベルが虚しく響き渡る。
「ここは危険です、早く救命ボートへ」「まだ子供たちが見つかってないんです!!」
子を見失った母親の悲痛な叫びがこだまする。
その一方、デッキ上ではあの灼熱の怪人たちが我が物顔で闊歩!


(やるっきゃねえな……!!奈海、どうすりゃいい?)
(マーレアンカー……手に持ってるそれをかざして、私の手が届くようにして!)
(よし、これでいいな!?)(大丈夫)

彼女が手を触れると、白亜の短剣に輝く宝石は次第にその光を増してゆく!

((今なら、戦える……!))
触れ合った彼女の手が、揺れる髪の毛が、ヴェールから覗く足が……現れた時と同じ光の粒子へと変わり白亜の短剣に吸い込まれていった。

「「マーレアンカー、開放!!」」
二人の声が一つに重なると、白亜の短剣はその側面が展開し三又矛の穂先か船の錨を思わせる形状に変化する……そして!

……そこから渦潮の如く放たれた紺碧の光が碇の全身を包み込む……!!


フェリー内、二人だけで脱出を試みる少年と少女の姿あり。
「熱いよお兄ちゃん……こわいよ……」「泣くな、一緒に母さんのとこに帰るんだ」
兄らしき少年が幼い少女を必死に励ましながら出口を探す。自分を奮い立てながら。
「……ほら、あそこから外に出られるぞ」「でも……火が……」すでに非常口まで火が回っている!
「走るんだ!」兄は妹の手をとり、駆け出す!

デッキに飛び出した二人の前に現れたのは、無貌の有象無象よりも明らかに強大な牛頭の魔人!蹄の足が金属を踏みしめる重々しい音が迫る。
「まだ生き残りがいたか……焼き尽くしてやる、人間」牛頭は燃える鼻息を噴き出す。


もはやこれまでか、だがその時……。
……水柱と共に青と銀の流麗なシルエットが海面から光輝を纏って跳躍する!!


人魚。そうとしか表現できぬ存在が駆けるここは地上から隔絶された海底の聖域である。
一人の人魚が恭しい態度で口を開く。「……ウェパル様」

「……海の戦士が……目覚めました」



Part3に続く

スキするとお姉さんの秘密や海の神秘のメッセージが聞けたりするわよ。