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神海戦士エルマーレ 第1話「戦士の目覚め」Part7 #エルマーレ

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プロローグ
Part6


(これまでのあらすじ)
恐るべき<焼却衆>の先兵、オーロックス焼却獣と戦う海藤碇。奈海の声に導かれてマーレアンカーの力を引き出したエルマーレの必殺技が炸裂し、見事勝利を収めたかに思えた。
だがその時、何やら不穏な兆候が……!?


水柱が爆ぜ、オーロックス焼却獣は消し炭じみて熱を失った残骸と化した。

「やったぜ!」(いいえ、まだみたい)
思わず快哉を叫ぶ碇。だがマーレアンカーから奈海が警告を発している……再び精神を研ぎ澄ますと、不吉な詠唱が碇の耳に入る!


「……ヌイ アヒ ホー……」

『……カプ・マナ!!』


声の主は誰あろうペレー!
そして最後の一節が唱えられると共に、倒れた筈のオーロックス焼却獣から幾つもの火柱が立ち上るとたちまちの内に空中で塊をなす!

(あれは何なんだ、奈海)(焼却衆の悪しきまじない……このままじゃ、まずい)


「グオーオオオォーッ!!!!」


凄まじい爆炎が晴れると、海中から立っていたものは……おお、数十mはあろうかという天を衝く巨躯となり蘇ったオーロックス焼却獣の姿!
「おいおい、こんなのありかよ!」(多分、もっと強いやつが術で力を与えた)
奈海の言葉に、碇は確信を得た。
「そいつが今回の黒幕か」


一方、スルトとペレーは……。
「これはいけるぜ!オーロックスの奴が一度やられた時は肝が冷えたが、これなら間違いなく潰せる!」
「言っとくけど実戦で使うのは初めてだからねこれ?」
ペレーが何か言いたそうに首を傾けるが、スルトは握り拳を打ち合わせて続けた。
「このままボロ船ごとあの邪魔者を焼き払って海の藻屑にするぞ!」
「……封印の地に突っ込ませてブツ回収させた方がいいと思うけどねぇ……でも邪魔者を燃やすのはアタシも賛成ぃ」


既にかげろう号の乗客乗員は脱出を済ませている。故に……。
「タアーッ!……ちくしょう、やっぱり明確に俺を狙ってきてるぜ!」
巨大オーロックス焼却獣のハンマーパンチをエルマーレは側転回避、直撃したフェリーの舳先は飴細工の如く大破!
エルマーレは大きく傾いた船体の高所に飛び移りマーレアンカーを構える。

「何とかどうにかするしかねえ……マーレカトラスシュート!!

光の刀身が伸長し、紺碧の奔流となって巨大焼却獣の胸板を射る。
飛び散る火花……しかし。

「ゴオオオォ……」

巨大焼却獣はわずかに仰け反った程度、殆どダメージはない!
歯噛みする碇。(どうすればいい……どうすれば!)
巨大オーロックス焼却獣の口内が紅蓮に染まる。この圧倒的質量の爆炎を受ければひとたまりもない!

(……大丈夫だから)(……奈海……!?)
(もう少しだけ頑張って。もうすぐ私たちの仲間が来る)

「なら……やってやろうじゃねえか!!」エルマーレの両足が青い光を纏う。

そしてその直後……火山噴火じみた業火がフェリーの側面を直撃、爆炎と共に船体が真っ二つに折れ曲がった!
大破した船体が松明じみて激しい炎に包まれる。


ほど近くの岩礁の上から一部始終を眺め笑みを浮かべるスルトとペレー。
「まぁ、さすがに奴もくたばったな」
「邪魔者も居なくなったし、そろそろ封印の地に……なにあれ」金髪を弄んでいたペレーの手が止まる。
彼女の目に飛び込んだのは、爆炎の中から矢の如く飛び出す紺碧の軌跡!
「あのひよっこ、なかなかしぶといじゃねえか」スルトが唸った。


そう、直撃を受ける寸前、わずか寸前でエルマーレは跳躍し……。

「トゥリアァーッ!!」爆発の勢いでさらに加速。
「トゥリアアアァーッ!!」背後から飛散する破片を蹴って加速を重ねる!
巨大オーロックス焼却獣の右肩を蹴ると三角跳びで方向を変え、宙を舞って頭上から放つのは……。

「トゥリャアァーッ!!」「グゴオオオ……!」

眉間への踵落とし!紺碧の円弧軌道が突き刺さり、巨大焼却獣が怯む。
(今よ碇くん、跳んで)(よし!)


振り落とされる前に再跳躍したエルマーレの両腕を海鳥の足じみた何かが掴み、そのまま舞い上がる。頭上から女性の声。

「間に合った……!」


その言葉と共に白く巨大な何かが波涛を突き破り海中から現れた!!



Part8に続く

スキするとお姉さんの秘密や海の神秘のメッセージが聞けたりするわよ。