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クァンタム・ファントムの涙


幼馴染の真弓が学校に来なくなってから、一週間が経った。

あいつはクラスの人気者で、いじめられていた訳ではない。勉強や進路の悩みもなかったはず、俺にも理由はわからない。
厄介な事にこれだけではない。ある噂が学校を騒がせ始めたのだ。

「幽霊騒ぎ?」「ああ、実際に目撃した奴もいるらしい」

特異的現象研究部の部員で俺の悪友、宗谷がそんな話をしてきたのは数日前の事だ。最初はいつもの客引きオカルト与太話かと思っていたが、今回は違うらしい。


「じゃあ、和沙もその幽霊を見たってわけ?」
「それだけじゃなくて、目が合っちゃったの……何か言いたそうだったけど」
「やっぱりあれじゃない、突然不登校になった真弓さんの生霊……」
「怖いこと言わないでよ伊瀬ちゃん!」


というように、目撃談は急速に広まっていった。

「御剣、これはマジな話だ。うちの部に調査依頼がかかってる」宗谷が語気を強める。
「……それで、なぜ俺を巻き込んだ?」
「あれは真弓の生霊だという噂が立ち始めたのは知ってるな。つまりそういうことだ」

幼馴染の名前を出され、俺は渋々宗谷に手を貸す事にした。
特異的現象研究部は怪しげな存在や現象を研究している集団で、正直関わりたくなかったが。


「宗谷君から話は聞いているわ。部長のよ、よろしく」
「副部長の新浜です」
「はい、御剣です」
部室中央の机上では用途不明の装置がゆっくりと回っている。
困惑する俺に藤が食い気味に問いかけてきた。
「で、真弓ちゃんの様子はどう?」
「俺が会いに行った時は顔出してくれましたけど、またすぐ……」
その時だ。


「出たぞ!」宗谷が叫んだ。
振り向くと、薄暗がりで揺れる『何か』と目が合う。おいおい噓だろ。
新浜は機械を弄っているのか動く気配がない。

「ふぅん……わかっちゃった」
藤が例の装置を眺めながら一人納得している。
「あれの正体が?」


「真弓ちゃんの深層意識が量子領域に存在する生命体を顕在化させた」

「すみません今何て」


【続く……】



スキするとお姉さんの秘密や海の神秘のメッセージが聞けたりするわよ。