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「気持ちいい」から考えるゲームアイデア講座 読後メモ


はじめに

ゲームアイデアを考えるセオリーを学ぶために下記の本を読んだので、個人的な理解・解釈を含めながら読後のまとめを書き残します。

Ch1. ゲームは「気持ちいい」から考える

「気持ちいい」から考える

この本で一貫して述べられている軸となる考えがこれだと思います。
良いゲームには『気持ちいい』とそれを体験し続けることができる仕組み、操作『気持ちいい』を最大化するための最適なテンポが存在するという考え方です。

アイデアを考える時にもまずは『気持ちいい』がポイントになります。
ゲームアイデアを考える際に「アイデアにアイデアを組み合わせながら」考えを進めてしまいがちです。自分もしばしば

「Aというアイデアよくない??」
「面白いな!それにBとかも加えたらもっと楽しそう!」
「いいな〜、じゃあA'というのも混ぜたら面白そう!」

と足し算でアイデアを膨らませて行きがちでした。
本書でもブレストの段階などではこのように「アイデアを連鎖させて考えること」は否定されていませんが、ゲームの核となるアイデアを考える際にはアイデアから『どういう遊びになるか』をまず考え抜くことが重要だと述べられています。

そうすることでアイデアの継ぎ接ぎで生まれた『メタボな企画』ではない、骨格のしっかりした『筋肉質な企画』が生まれると述べられています。

実際の現場でも起きがちですが色々な機能を盛り込んでしまった結果「このゲームは何が面白いポイントなんだろう」という自体ですかね。
まずは軸を定めるために『気持ちいい』からたくさんのアイデアに派生させてそれらをまとめたメタボ企画を作るのではなく、『どういう遊び』が生まれるかを考えることが重要だと学びました。

既存ゲームやジャンルから学ぶこと

新しいゲームを考えるときに
「このゲームのようなものを作りたい」
「このジャンルから考えたい」
といった起点から始まることもあるかと思います。

しかし、本書では非推奨な方法として紹介されていました。
非推奨な理由は『既存の改良』にしかならないからです。

ただし、人気を博したゲームや長年愛されているジャンルには『気持ちいい』が明確に存在するはずで、下記を分析することは学びにつながるとも述べられています。

  • 『気持ちいい』が何か

  • それを構成する要素

  • 『気持ちいい』を実現する操作やテンポ

  • etc

本書では実際のゲームを例に挙げて「気持ちいい」を分析するワークがありました。自分の例を書いておきます。
「選んだゲーム名」
ペルソナ5ザ・ロイヤル

「そのゲームならではの『気持ちいい』は何ですか?
弱点攻撃→バトンタッチを繋いだ最後の総攻撃とそのスタイリッシュ演出

「その時どんな行為をしますか?」
敵の弱点と味方のスキル把握、手順の思考

その行為をするための操作はどんなテンポで行われますか?」
「……(ゆっくり思考中)」
「これでいけるわ!( ・∇・)」
「ホイ、ホイ、ホイッ!(操作中)」
「いけぇぇぇ!!!(総攻撃)」(ここがまじで楽しくて結構テンション高めに叫びながらプレイしてましたwww)

余談ですが、ペルソナシリーズはP5Rから始めた新参者なのですが、まじで面白くて普通に朝5時までとかやってしまってました、、奪われた睡眠時間…
でも後半になるにつれてストーリーの展開も面白くてやめられないんですよね…www
朝3時くらいから2時間近くずっと経験値稼ぎのためにメメントスでシャドウを轢きまくる作業をやっていたりもしました。。あれもまあ気持ちいいんですが『作業』ではありましたねwww

ゲームを構成する要素と分類

ゲームを構成する要素は大きく以下の3つに分類されます。

  • ゲーム・ジャンルの普遍的要素

  • そのゲームの独自性を形作る要素

  • 核を膨らませるアイデア

個人的には下二つの分析が重要だと感じます。それぞれ

  • そのゲームの独自性を形作る要素→『気持ちいい』を実現するための要素

  • 核を膨らませるアイデア→『気持ちいい』を増幅させる要素

だと考えられるかなと思います。

Ch2. 「気持ちいい」を「遊び」にする

「気持ちいい」を「遊び」にするには

何らかの『操作』により、画面内で『行為』が生まれ、結果的に『感情』を生み出すことで『気持ちいい』は演出されます。
『操作』に関してはよく「このゲーム操作感が良いんだよね〜」などの言葉でも表現される『操作感』とは具体的『視覚 + 聴覚 + 触覚』と表現されていました。

個人的にはゲーム開発の現場で『操作感』や『爽快感』など『OO感』という単語で表現されることが多々あると思います。
ただ『OO感』ってそれぞれの感覚依存なところもありますし、それは各自が今までプレイしてきたゲームや触れてきたコンテンツによって定義が異なる場合もあると思っています。
なので例えば「このゲーム操作感をもっと良くしたいんだよね」と話題に上がったときはチーム内で「操作感が良い状態とは?」を丁寧に擦り合わせる必要があると思っています。
感覚的な言葉はとても便利で使いやすいのですが、チームでものづくりをする上では感覚的な言葉に頼りすぎて「それぞれ理解した」で開発が進んでしまう危険性も孕んだ言葉だと個人的には思っています。
なので「抽象的な言葉の具体化」はゲームについて話し合うときに必要なスキルの一つだなと感じる日々です。。(自戒も込めて…ww)

「気持ちいい」アイデアを『遊び』に昇華させるには
『ストレスない操作を提供し、それに伴って画面内での行為(変化)が発生し、ユーザの感情を動かすことで「気持ちよさ」を提供。それを最適なテンポで連続して発生させることで「遊び」へと昇華する』
と理解しました。

現実世界での出来事に置き換えて考えると、「包装用のプチプチを潰す」とき、一つ一つのプチプチを指で摘んで潰すという操作をすると、プチっという音と破裂した感触と共にプチプチが潰れる変化がおきます。それにより「気持ち良い」と感じることができます。
これをプチプチ連続で潰したり、雑巾を絞るようにして一気にプチプチしたりなどテンポを探しつつプチプチを潰すことはすでに「遊び」になっているというようなことかなと思います。
でもこれはあくまで「遊び」であって「ゲーム」にはなっていません。
次は「遊び」を「ゲーム」に昇華させるためにはというお話です。

Ch3.「気持ちいい」を「ゲーム」にする

「遊び」と「ゲーム」の違い

Ch2までで『気持ちいい』を『遊び』に昇華するには『操作』によって生じる『行為』があり、それにより『感情』が動くことが必要と学びました。
ただ、『遊び』は『ゲーム』ではありません。
『ゲーム』には『目的』と『課題』の2要素が必ず存在します。

特に自分が感じたこととして『課題』は成功・失敗の2値を取るバイナリではなく、「上手くできた」から「失敗した」までを連続的に変化するものであるべきと思います。
課題に対して「成功・失敗」がバイナリに存在する場合は、「成功」を探すだけの「作業」になってしまいます。
また「失敗した」時にユーザにとって「失敗した納得感」を正しくフィードバックすることも重要だと思います。自分がゲームを止めるときは大概「失敗した」ときであり、さらにいうと「納得のいかない失敗」をしたときです。だからこそ「適切な課題」というのは「上手くできた」から「失敗したけど納得できる」ところまでをうまく線形に移動するようなものなのかなと思います。

「気持ちいい」を「ゲーム」にするまで

ここまでで「気持ちいい」→「遊び」→「ゲーム」の流れを辿りましたが、個人的な解釈として下記の構造をイメージしました。

「操作」+「行為」+「感情の動き」によって「気持ちいい」は生まれる
「気持ちいい」を上手く実現することで「課題」が上手く解決される
「課題」を解決すると「目的」の達成に近づき「褒美」がもらえる
この3工程を最適(そのゲーム独自の「気持ちいい」を最大化する)なテンポで繰り返す構造が「面白いゲーム」につながると理解しました。

Ch4. アイデアの3要素から「気持ちいい」を考える

核となるアイデアを構成する3つの要素

核となるアイデアは下記の3つに分類できると述べられています。

  • テーマ: ゲームの題材であり、勇者、戦車などの名詞だったり、走る、飛ぶなどの動詞だったり自由に考えられる

  • コンセプト: ゲームの主内容であり「何を楽しんでもらうのか」を表すもの

  • システム: コンセプトを「どうやって実現するか」

まとめ

本書の内容は全部でCh9まであり、実際のゲームや架空の企画書を例に挙げたケーススタディのようなものまで記述されていました。
前半部分で記述されている内容がこの本のメインポイントだと感じながら読み進めていたので、個人的解釈を載せながらまとめてみました。

この本に一貫して書かれているポイントとして『気持ちいい』という点があります。
以前、有名なゲーム会社さんの開発話を伺った際にも『UIシステムにはかなり時間をかけ、最大限の配慮をしている』という旨の話がありました。
『ユーザを迷わせない』『ストレスを感じさせない』『触っているだけでも楽しい』といった点をポイントに開発されているそうです。
実際にそこから生み出されるゲームは画面を周回しているだけでもワクワクしてくるようなものが多く、洗練されたUIシステムが作られていると感じますがこういった点も『気持ちいい』を最大化するための工夫の一つかなと思いました。

また普段ゲームを作っている自分が感じたこととして「気持ちいいを最大化するには」という視点と合わせて「気持ちいいを阻害している点は何か」を考えることも重要だと感じます。
例えば簡単な例だと「長いロード時間」や「わかりにくい画面遷移、操作方法」「テンポの悪いゲームシステム」「違和感のあるキャラクターの動き」などがそれに挙げられると思います。
『気持ちいい』が阻害された瞬間、ユーザのゲームに没頭していた気持ちはプツンと途切れてしまい、それを機にゲームを辞めてしまうことまであると思います。
だからこそ、徹底して「気持ちいいを阻害している要素はないか」に目を凝らすことも重要だなと思います。

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