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クラファンと無尽業

クラウドファンディングとは何なのか。自分が理解できないものに投資することを避けるためにも、その存在にいたる歴史について整理したいと思います(けっこう遠いですが…)。

無尽業の歴史と現代の類似金融システム

無尽業は日本の伝統的な金融システムであり、資金調達の手段として地域社会で広く利用されていました。江戸時代から現代にかけて、無尽業の形態や意義は大きく変化してきました。その歴史的変遷と現代の類似金融システムであるP2P融資プラットフォームやクラウドファンディングについて整理します。


1. 江戸時代の無尽業

江戸時代の無尽業は、主に共同体や親しい人々の間で運営されていました。無尽業の基本的な仕組みは、参加者が定期的に一定額の資金を出し合い、その資金を順番に受け取るというものでした。このシステムは、特に地域社会の助け合いの一環として機能していました。

  • 運営の仕組み: 江戸時代の無尽業は、地域や町内で行われることが多く、参加者は事前に決められた額を定期的に拠出し、決まった順番で資金を受け取る形態が一般的でした。例えば、10人が集まり、毎月1万円ずつ出し合い、毎月1人に10万円を渡すといった具合です。

  • 意義と役割: このシステムは、特に農民や商人などの小規模な経済活動を行う人々にとって、突発的な資金ニーズに対応するための重要な手段でした。また、無尽業は、地域社会の結束や信頼関係の形成にも寄与しました。信頼が基盤となっているため、詐欺や不正行為は少なかったとされます。

  • 社会的背景: 江戸時代の日本は、封建制度が根強く、金融機関が発展していない時代でした。したがって、無尽業は、地域コミュニティ内での経済的な支え合いとして機能していました。また、無尽業の運営においては、儀礼やしきたりが重要な役割を果たし、地域社会の絆を強める役割も果たしました。


2. 明治・大正時代の変化

明治時代に入ると、近代化とともに金融システムが整備され、銀行業が発展しました。しかし、無尽業は完全には消えず、特に地方や伝統的な地域社会では依然として利用され続けました。

  • 近代化の影響: 銀行業の発展により、正式な金融サービスが提供されるようになり、無尽業は次第に公式な金融システムの補完的な役割に変わっていきました。また、近代的な金融機関が地域に広がることで、無尽業の利用者は限定されるようになりました。

  • 社会的変化: 社会の近代化とともに、無尽業の形式や運営方法も変化しました。都市化が進む中で、地域密着型の無尽業は次第に少数派となり、都市部では正式な金融機関が主流となっていきました。しかし、伝統を重んじる地域では無尽業の運営が続けられ、地域コミュニティの一部として重要な役割を果たしました。


3. 戦後から昭和・平成時代の変遷

戦後の日本は経済成長とともに金融システムが高度に発展し、無尽業の役割はさらに変わりました。特に昭和・平成時代には、金融の規制強化や銀行の多様化が進みましたが、無尽業の形態は一部で残り続けました。

  • 金融システムの発展: 戦後、日本の金融システムは急速に発展し、商業銀行や信用金庫、信用組合などが全国に広がりました。これにより、無尽業の必要性は相対的に低下しました。特に経済成長期には、無尽業よりも正式な金融サービスの利用が増加しました。

  • 無尽業の変化: それでも、無尽業は地域や伝統行事の一部として残り続けました。特に高齢者層や伝統を重んじる地域では、無尽業の形態が維持され、地域内での相互扶助の仕組みとして利用されていました。現代においても、一部の地方では無尽業が存続していることがあります。


4. 現代のP2P融資プラットフォームとクラウドファンディング

21世紀に入ると、デジタル技術の進化に伴い、P2P(ピア・ツー・ピア)融資プラットフォームやクラウドファンディングといった新しい金融手法が登場しました。これらは無尽業の伝統的な仕組みを現代のテクノロジーで再構築したものといえます。

  • P2P融資プラットフォーム: P2P融資は、インターネットを通じて個人と個人が直接資金を貸し借りする仕組みです。これは、無尽業のように参加者間での信頼に基づきますが、テクノロジーを用いることで、より広範なネットワークを持ち、より多くの人々が参加できるようになっています。具体的には、LendingClubやFunding Circleなどのプラットフォームがあります。

  • クラウドファンディング: クラウドファンディングは、多くの人々から少額ずつ資金を集めてプロジェクトや事業を実現する手法です。無尽業の共同出資の原則と類似しており、特定のプロジェクトや事業に対する資金提供を通じて、共感や支持を集めることができます。KickstarterやMakuakeなどが代表的な例です。

  • 意義の移り変わり: 現代のP2P融資やクラウドファンディングは、無尽業の伝統的な価値観を持ちつつ、グローバルなネットワークとデジタル技術を駆使して、より広範な資金調達の手段を提供しています。特に、地域や国を超えた資金調達が可能であり、個々のニーズに応じた柔軟な対応が可能です。これにより、無尽業の精神を維持しつつ、現代社会のニーズに応じた新しい形態の金融サービスが提供されています。


クラウドファンディングという金融システム

無尽業は江戸時代から続く伝統的な金融システムであり、その基本的な仕組みは地域社会の助け合いの一環として機能していました。近代化とともに金融システムが発展する中で、無尽業は変化しつつも、地域や伝統の一部として残り続けました。現代においては、P2P融資プラットフォームやクラウドファンディングなど、新しい金融手法が登場し、無尽業の精神を現代に合わせた形で再構築しています。これらの新しい手法は、無尽業の伝統的な価値観を現代社会に適応させるとともに、グローバルなネットワークとデジタル技術を活用して、より広範な金融サービスを提供しています。

現代の金融プラットフォームを利用するにあたっての注意深さを養うため、頭の片隅に入れておきたいと思います。

ちなみに、金融庁にも無尽業者の登録がありますが、もちろん現代のクラファンサービスは対象外の様子です。狭義の無尽業というところでしょうか。金融庁許認可登録一覧


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