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コロナ禍「飢えた」学生たちの心の叫び ー新国際交流プログラムの創出ー

大瀬「日本―ベトナムオンライン交流プログラム」を終えてまだ2日。相変わらずお忙しそうですね。Facebookに「新たなプログラム開催まであと12日」という投稿を見て「えっ」と思いました。そのエネルギーは一体どこからでてくるのでしょうか。」

実はまだ、ベトナムプログラムの余韻が残っているよ。さらに正直疲労もある。誠心誠意尽くしたからね。しかし、その影でベトナムプログラム開催中、このプログラムに関わっていない学生アシスタントは急ピッチで新プログラムの準備を進めていたんだ。
朝楓も知っての通り、この新プログラムは、珍しく7月下旬の僕の気まぐれなAAEEアシスタントのグループLINEへの投稿で始まった。(笑)

大瀬「AAEE学生アシスタントのLINEグループでのあの投稿ですね。確か、電話で先生とミーティングをした日の夜の出来事で、、、さすがの私もあの『つぶやき』には一瞬頭が混乱しました!いったいどうしたのですか。」

(以下がその『つぶやき』)
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唐突ですが、この夏、ちょっと暇ができたので他のこれまでと異なる国の学生たちとの交流プログラムを作り始めようかなどと言う気持ちが生まれています。一人でも勝手に始めてしまうと思いますが(すぐ辞めてしまう可能性もある)、もし、「うわ、超興味ある」と言う人がいたらお知らせください。
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この夏のスケジュールは随分前から決まってきて、Googleカレンダーに入力済だった。当初の予定では8月上旬~9月中旬までイギリス、ベトナム、ネパールとほぼすべての海外での調査やプロジェクトで埋まっていたんだ。時期が近づいてくるとリマインドが表示されるでしょ。連日表示されるリマインドに心が落ちてしまった。過去10年以上同じリズムで夏休み期間を過ごしてきたんだよ。今年もこの超ハードスケジュールに備えて日頃から体調管理に努めていた。それがコロナ禍ですべてキャンセルされたんだ。僕の海外での夏はかなり過酷なのだけどそれが生きがいでもあったから、落胆は人一倍大きい。それでつい。

大瀬「しかも、あの『つぶやき』確かかなり遅い時間帯でしたよね。」

寝る前に気持ちが落ちている時に、ふわーっと心に浮かんできたアイディア。気の許せるAAEEの学生アシスタントたちに取り合えずつぶやいた(笑)。そしたら、なんと10秒後に「やりたいです!」という強い返事が来た。去年のベトナムプログラムで超頑張っていた学生。さらに数分後に2名から熱望メッセージ。結局、7名もの学生アシスタントが名乗り出た。これには本当に驚かされた。
それで翌日早速Zoomミーティングを開いたのだけど、彼らの目は「飢えた狼」のように目をギラギラとしていた。襲い掛かられて噛まれるかと思うほどだったよ(笑)。学生達もそれぞれ、コロナ禍で大学生活を狂わされてフラストレーションがたまっていたんだ。

大瀬「私は上智大の総合グローバル学部なので海外志向の人が多いんです。私自身を含め、悔しい思いをしている学生はものすごく多くいます。この夏の過ごし方についてはよく話題になります。」

急に集まったメンバーだし準備時間も限られているから大きなことはできない。そこで「オンライン旅行を兼ねた気楽な国際交流プログラムを作ろう。」と笑顔で言ったんだ。そしたら、「飢えた狼」たちが心で吠えたんだ。「ふざけるんじゃない。こっちはガチできてるんだぞ!」と言っているように聞こえた(笑)。そして第一に名乗り出てきた学生が僕をにらみつけるように言った。
「せっかくやるのならば、大変な思いをして本気で取り組みたいです。」
この一言で僕の心のスイッチ「オン」

大瀬「でましたよ、このAAEEクオリティ。3年AAEEで活動していて、私はもうこのノリに慣れてしまいました。思いついた瞬間にやりたいと思った人だけが集まっている集団独特の展開ですね。しかし、7人ものメンバーが集まってプログラムを企画できるのは、AAEEの学生アシスタントメンバーが増えたからこそでもありますが。2年前では考えられないですもんね。」

本気にさせてしまった以上、手抜きは許されない。こちらも本気でこう返したよ。

「それでは『第一回バングラデシュ-日本学生交流オンラインプログラム』」を開催しようと思いますが、覚悟はいいですか。」

その瞬間、“飢えた狼”が“天使”に変わった。皆の心の中の感性を僕は聞き逃さなかったね(笑)。
実は、AAEEはバングラデシュにもしっかりとしたネットワークがある。2012年には僕が2回教育調査に行き、合計4週間滞在した。2013年には日本の高校生がダッカで「学校清掃キャンペーン」開催して新聞にも掲載された。さらに2014年には僕がダッカで開催された国際学会で発表し、教育関係者に協力を要請した。拍手大喝采だったよ。しかし、翌年はネパール大地震発生のためネパール復興支援に専念せねばならず、その後ISによる邦人殺害をきっかけに外務省の渡航危険レベルが上がってしまい、バングラデシュでの国際交流プログラムが実現不可能になったんだ。現地の期待が大きかっただけにがっかりさせてしまい、申し訳なく思っていたんだ。

大瀬「なるほど、そのような事情があったのですね。でも2014年からもう既に6年も経っていますが、そんなに急に対応してもらえるものなのですか。」

2012年に行った時に、ダッカ大学の4名の学生と一緒に活動をしたんだ。素晴らしい学生たちばかり。今でもSNSで交流を続けている。そのうち3名は、奨学金を得て先進国に留学してしまって今もその国に留まっている。後発発展途上国ではこのパターンは珍しくない。しかし、1人だけは2012年当時から「僕はバングラデシュに残ってこの国をよくする!」と熱く語っていた。それ以来8年間、彼の活動をSNSを通じて見続けてきたのだけど、学生時代の志を今でも貫いていて、バングラデシュの貧困・教育問題に最前線で向き合っているんだ。コロナ禍の今もマスクに防護服で、スラム街の住民に食料を配り続けている。僕が心から尊敬する若者の一人。
彼にこちらの意図をメッセンジャーで伝えたら、すぐに「やりましょう!」と力強い返事が来た。長い期間会っていなくても心が通じているので話はとても速いんだ。

大瀬「素敵な方ですね。私もぜひ一度お話を聞いてみたいです。先生のお話を聞いていていつも思うのですが、先生と関わりのある方達は皆志高く、優秀で自分の手で何かをやり遂げている人が多いですよね。そもそもAAEEのプログラムに参加する学生も皆優秀な人たちばかりですが。
そういえばネパールのAAEEリーダーも同じタイプの方ですよね。超優秀なのに国内に留まって国を発展させようと頑張っている。」

そうだね。ネパールの元法務大臣の方とバングラデシュの元資源エネルギー大臣(AAEE元アドバイザー、4か月前に急逝)の方が同じことを言っていたんだ。
「この国でしっかりと教育を受けた学生は外国に行ってしまう。このままでは我が国は貧しいまま。この国に根差す若者を何とか増やさなければ。」
僕は彼らの言葉に強く共感した。先進国に国費留学をできる実力を備えながらも雇用機会が限られ賃金も低い自国に残る選択をするのには、相当な勇気がいる。だからこそ、敢えて困難の多い選択をした人を応援したいという気持ちが強い。

大瀬「確かにそうですよね。私も、ネパールプログラムに参加した時にネパール人の学生が同じようなことを言っていました。彼の場合は、だからこそ自分はネパールにとどまって国を発展させたいと熱く語っていたのが印象的でした。彼の話を聞いて、私はそこまでに国の発展などについて考えられていないなと思わず恥ずかしくなったのを覚えています。
ところで、先生の最初『つぶやき』からまだ3週間くらいしか経っていないですが、プログラム開始まであと12日間。私のこれまでの経験では、参加者募集やプログラム作成を考えるとほぼ不可能に近いと思われるタイトなスケジュールに見えるのですが、いったいどのように準備が進んでいるのか大変興味深いです。次回詳細を聞かせてください。」

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