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「コロナ禍におけるAAEEオンラインプロジェクト始動の背景」

(見出し写真は「やる気」を持ち直したベトナム学生オーガナイザー)

-今年は、コロナウィルスの影響により、毎年開催していたベトナムプログラムもネパールプログラムも開催できなくなってしまいましたね。私も大学最後の年に海外に行けないことがとても残念です。
ところで、今年のAAEEはオンラインプログラムを始動させて、学生アシスタントも参加学生もやる気MAXで準備に取り掛かっていることを聞きました。
一体どのような背景で、初のオンラインプロジェクトが始動したのですか?

 例年通り、昨年8、9月のプログラム終了後から今年のプログラムの準備はしっかり進めていたんだ。
特に、ベトナムプログラムに関しては、今回僕がベトナムビンフック省教育アドバイザーになって初めてのプログラム。
昨年の10月31日に就任してから、これまで以上に責任が生じた一方で、教育に関してはこれまでよりも深く聞ける状況を得ることができたんだ。だからこそ2020年は「教育」をテーマに準備を始めた。

一つとても印象的なエピソードがあってね。
ベトナムでは「エリート教育」を公教育に取り入れていて、特質すべき能力のある生徒を受け入れるべく各地域に”High School for Gifted”(Gigtedは才能に恵まれた)を設置している。就任式のために現地に行った際、調査の一環でビンフック省の”High School for Gifted”を訪問したんだ。その学校は8年来の付き合いで、ベトナム国内の数ある”High School for Gifted”の中でも実績がすごい。数学国際オリンピックみたいなものの受賞者も数多く輩出している。それなのに校長先生はこう嘆いていたんだ。
「私たちはこんなに頑張ってきたのに、今の制度の効果を疑問視する声が上がっている。客観的なデータに基づく批判ならば受け入れるけど、どうやらそうではないらしい。」
僕はこの学校がすごく頑張っている姿を毎年見てきたから、「それならば、ホーチミンの大学の先生やAAEEの学生たちと一緒にこの学校の素晴らしさや課題点を明確にしてみませんか。」と提案した。これには校長先生も現地行政府の皆さんも大賛成。現地の学生オーガナイザーもやる気マックス。リサーチ部隊も起ち上げて本気の準備が始まっていたんだ。

しかし、魔の新型コロナウィルスが襲い掛かってきた。
2月頃、新型コロナウィルスの影響がニュースで取り上げられるようになった。2月初旬から中旬にかけてネパールでの交流プログラムは予定通り開催したが、我々がネパールにいる期間は「ダイアモンドプリセス号」事件の真っただ中。何も知らずにネパールから帰国して「浦島太郎」状態になってしまった。その後パンデミックに至る。
ベトナムの場合は、早い段階ででの政府主導の強力なロックダウンにより、ウィルスの封じ込めに成功した。一方で、遅れて日本で緊急事態宣言が発表されたのは4月初旬。
3月から夏のプログラムの参加者募集を開始するAAEEにとっては最悪のタイミングだった。でも、国際交流の現地に行って学生と出会い交流してこそ。ギリギリまで募集を続けて応募者もいた。現地の学生たちの準備も随分と進んでいたしね。

ただ、何よりも安全と健康は第一、非常に状況が厳しいであろうと言う認識はかなり早い段階で関係者で共有していた。そしてオンライン開催のシミュレーションは、実は2月のネパールプログラムの最中から始まっていたんだ。

「ヒマラヤの山の中でオンラインプロジェクトの準備を開始したんですか。それは驚きです!?。」

そう。ここが我々AAEEの良いところではあると思うんだけど、常に前向き、かつフットワークが軽い。さらに面白い人材が集まっていてアイディアの宝庫だからね。「プログラムキャンセル」を発表するのではなく「最強のオンラインプロジェクトに変身しました」と言えるように水面下で議論を重ねたんだ。ちなみに、この作業に関わったのは日本の学生アシスタントだけ。

「え、なぜここだけは日本の学生だけなのですか。」

前にも言ったように、ベトナムやネパールの学生は、学生生活をAAEEに懸けているんだ。既に5か月も準備に費やしていたんだよ。伝え方やタイミングを間違えると組織自体が破壊されてしまうのが怖かった。
一方の日本の学生アシスタントは、フワフワの綿のようにフレクシビリティ(柔軟性)に溢れた人ばかり。新学生リーダーとベトナムプログラム担当学生で猛烈な勢いでオンライン構想が進んでいった。そして4月半ばに構想完成。

「ベトナムの学生たちはその構想を聞いてどんな反応をしたのですか」

号泣。辛い宣告だった。予想通り、ひたすら泣かれてね。
「なんであきらめるんですか!最後の最後まであきらめずに全力を尽くすのがAAEEではないのですか!」とZoom越しに詰め寄られたよ。(AAEEのモットーは。Try your best, Never give up, and Be Flexible.) 
「オンラインでAAEEプログラムの良さを引き出すのは無理です。反対です!4月に先生がベトナムに来なければ、行政府の方々からの許可ももらえない。許可を得なければ教育について立ち入った議論ができないじゃないですか。しかも、テーマは申請済なので変えることができないのですよ。」

「前向きに考えようよ。新しいタイプの国際交流プログラムが始まろうとしているんだよ。全世界のパイオニアになろうよ!」と必死に訴えてね。でも、ベトナムでは日本より一足早くロックダウンしたのでオンライン化が進んでいた。「オンライン」にベトナム学生は飽き飽きしていたんだ。でもね、僕は、例え完璧なプログラムでなくても、開催することで参加学生の人生にとってメリットがあると思った。おそらく多くの団体はプログラム自体をキャンセルするでしょ。そしたら大学生たち、機会を失って可哀そう。プログラムを開催することで、人との新たな出会いがあり、その出会いこそがその人の人生に影響を与えるから。
で、随分と話し合った後に妥協案。

「妥協案ですか。妥協は異文化交流の重要資質と学びましたが、どんな妥協をしたんですか。」

彼らの主張は、日本の学生がリーダーとなることだった。オンラインプログラムに今いち興味が湧かない以上、モチベーションを維持できるかどうか不安だし失敗しても責任を取ることはできないとのこと。

このことを日本の新学生リーダー野澤葉菜に話したら、なんとあっさりと「じゃあ、私がリーダーやればいいですね。わかりました。」と来た。驚いたよ。難航必至のプログラムのリーダーを買ってでる葉菜(そして桃花)度胸が座っている!ここに、初の日本学生アシスタント主導、AAEEベトナムー日本学生交流プログラム(正式名称 Challenge Vietnam-Japan 2020)が誕生した。

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(日本、学生アシスタント―リーダー野澤葉菜。将来日本を牽引する人材となると確信している)

「でも、それほど一生懸命取り組んできたベトナムの学生たち。責任がなくなってやる気を維持することができたのですか?しかも、葉奈はベトナムプロフラムに参加したことないですよね。」

そう、葉菜は参加していない。でも、彼女や桃花は想像力とフレキシビリティに長けている。経験したことがなくても「何とかしようと」一生懸命考えて強引にでも新たな視点を生み出す力があるんだ。そこから二人の大活躍が始まった。葉菜は、2月に参加したネパールプログラムで、AAEEが求めていることをよく理解した。桃花は、昨年の超ハードなベトナムプログラムを「楽勝!」と言ってのけた強者。この二人の超楽天的・前向きアプローチで、ベトナムの学生たちを蘇らせたんだ。

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(ベトナムプログラム担当、三浦桃花。最強のフレクシビリティと心の強さを持つ。将来活躍間違いない人。右が桃花。於ホーチミン)

「葉奈の一生懸命取り組む姿には日々感銘すると同時に、彼女がリーダーになったことで、日本とベトナムの両国の学生が一緒にプログラムについて考えると言う本来AAEEが求めていた国際交流のあるべき形に図らずも近づいたと言えますね!」

朝楓の言う通り、AAEEのさらなる進化と言えるね。
これまでのプログラムは、日本人学生がベトナムに行くため、ベトナムメンバーがプログラムの構成を作り、現地の人たちの動きに合わせて行うプログラムだった。日本の人たちにはカルチャーショックを受ける機会が多く、異文化適応が求められていたね。
一方で、オンライン上の交流となると途端に、Away-Homeという空間的差異が消滅する。彼らはオンライン空間という平等の世界で交流を深めていくんだ。
正直、今回のプログラムはコロナ禍による一連の混乱で、当初イメージしたものとはかけ離れてしまった。社会主義国ベトナムの行政府との共同プログラムであるため、教育について本気で議論するためには、様々な書類のやり取りと協議が必要なのにそれを果たせなかった。結果として、「教育」をテーマとしながらも深い部分に踏み込めなくなってしまったんだ。そんな苦しい状況の中で、モチベーションを維持しながら実現にこじつけた彼らには脱帽する。今回のプログラム、参加者から様々なクレームが出てくることは僕にとっては想定内なのだけど、葉菜や桃花をはじめ、オーガナイザーたちは内心辛いだろうね。ベトナム行政府や有力大学が注目されているのを知りながら、出来ることが限られているから。でもね、彼らはさらに大きく成長するよ。参加学生たちもここまで話したような事情を理解して奮闘してくれることを願うばかりだ。「思っていたプログラムと違う!」という声も聞こえてきそうだけど。
Can you be flexible and try your best? Yes, we can! 

「与えられた状況に合わせて臨機黄変にベストを尽くす。そして異文化を超えたモチベーション維持管理。ここにもAAEEの進化を感じますね!」

次回は実際にプログラムの集客がどのように行われ、どんなメンバーが集まってどのように準備を進めていったのかを話していこう!

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