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「AAEEはどのように運営されているのか」


大瀬「私自身も大学4年間AAEEに関わっていますが、それは10年以上続くAAEEのほんの一部分にすぎず、まだまだ知らないことがたくさんあります。今日はAAEEの実状について、代表である関先生から話してくださると聞いて、楽しみにしていました。」

朝楓は知っていると思うけど、AAEEは持続可能な活動をするために活動資金を得る手法を取った時期があるんだ。AAEEアドバイザーのネパール支援家、OKバジの活動方法を数年間観察してみて、人々の善意に依る草の根活動の意義は十分に学んだ。本当に彼のことは尊敬する。一方で、寄付のみに頼る活動というのは持続性の観点で最適な方法ではないということも学んだ。すべての人々がWin-Winになれるビジネス化を考え始めたんだ。しかし、お金が絡むとコトは大変複雑だということがわかってしまった。

大瀬「何かトラブルがあったのですか。」

2013年にある学校から依頼を受けて、その学校と東南アジアのある国の交流プログラムを手掛けたんだ。目的は、我々のノウハウを活かしながら、プログラムを手がけ、その手数料収入を活動資金とすることだった。
正直、あのプログラムの準備には日本ベトナム双方で相当な時間を費やした。結果、超盛大な4日間プログラムを成功させた。ベトナム南部トップ高校で、セレモニーにはベトナム国家元首からのメッセージ。プログラム後はその学校の地元新聞にも掲載されていたよ。
ただ、こちらは初めてのビジネスの試みなので、業界超スーパー低価格で手掛けた。ただ、翌年以降も続けることになるならば価格は上がるという但書は強調したよ。その上で、事業経費を専門家の方の助言をいただきながら計算していったんだ。そしたら、とんでもない金額が算出されてしまった。100万円をはるかに超える金額。

大瀬「…100万超えですか!?」

AAEEの交流活動って超込み入っているでしょ。あのような細かいことを企画するための人件費ってバカにならない。ぶっちゃけた話をするとね、僕みたいな大学教員がその専門性を使ってコンサル的なことをすると、安く見積もっても時給一万円以上という計算になることが判明したんだ。予想通り、翌年もその学校から連絡が来たよ。「今年もお願いします。価格はできるだけ御社に合わせます」と。
あの時は困ったね。初年度の価格とかけ離れた金額を提示しなければならないことがわかっていたので。電話越しで見積もり金額を伝えたら、案の定気分を害されて通話を切られてしまった。それで関係はあっけなく終了。その後一切音沙汰なしだ。先方が気分を害す気持ちもわかる。だって、安かったものが急に高くなるのだから。

大瀬「確かに、先生がAAEEのプログラム準備に費やしている時間は膨大ですよね。時給いくらという意識で先生の活動を見たことがありませんけど・・・。一大学教授が関わるプログラムとなれば、普通に考えてみればそれなりのお金を要しますよね。大学の授業でさえ、学費を授業のコマ数で計算すれば一コマ3000円以上…。」

ビジネス的視点で考えるとそういうことになってしまうのが現実だね。例えば、JICAなどの国際協力プロジェクトでも、助言を受ける際の謝礼には規定があって、そこにも同じような金額が記載されている。あの時僕は、空き時間のほぼすべてを使ってベトナムの関係者と準備に当たっていた。AAEEの交流プログラムはかなり細かく計画するから時間がかかるの。さらに、この案件はこちらからの営業ではなく頂いた依頼だったから、先方からの求めに応じて、僕は超真剣に取り組んでいた。
だから、次年度予算を伝えた時の反応は予想していたとは言え、満足度の高いプログラムをつくったにも関わらず、あっけない幕切れを迎えてしまったことには気持ちが落ちた。

大瀬「なるほど。。お金の話がでてくると難しいですよね。互いの気持ちだけではなかなかうまくいかない。」

そうなんだ。朝楓もずっと僕の活動を見ているから少しはわかると思うけど、僕は別に自分がお金持ちになるためにこの活動を始めたわけではない。でも、お金が絡むとすべてが超複雑になる。結果、極端な決断をした。
完全ボランティア団体。それが今のAAEEだよ(笑)
利益が1円も出ていないことを完璧に証明してネット上でも公開する。プログラムで集めた参加費はAAEEの学生たちが可視化できる状態で管理し、余剰金は参加者に返金。
収入ゼロ、人件費もゼロのスーパーボランティア団体と化した。
AAEEの活動を支える学生も僕も、手弁当集団。Facebookのフォロワー2万人の手弁当集団だ(笑)。

大瀬「手弁当集団(笑)もはやこの話は、AAEE学生の中では定番になっています。私はもちろん、お金を期待して活動している学生など一人もいませんよ。AAEEでアシスタントとして活動していくこと自体が学びであり、将来の財産です。」

でも、それにしては定期的にイベントやったり、国内でも様々な活動をしているでしょ。外務省やJICAがいつも応援してくれているんだ。
都心の会場を無償で提供してくれるし、宣伝も手伝ってくれる。集客はすべてSNS,ポスター作りも学生皆で自作を重ねている内に次第に上手くなった。会議も可能な限りオンライン。
このような状態だけど、団体の知名度はどんどん上がっていくわけ。
お金をかけずに活動を続けていくうちに、「活動費ゼロでいけるところまでいってみよう!」みたいな団体文化が形成されてしまった。で、お金をかけなくても、相当なことができることがわかってしまった。

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(写真は最近4ヵ年の学生アシスタントリーダー。左端が大瀬、その隣が関。)

大瀬「でも、AAEEは一般社団法人。やはり法人の維持費とかはかかるんですよね。」

毎年市民税、都民税というのがかかる。後は定期的に理事選任登記料というのがかかる。正直にいうと、その部分は僕を含めた理事からの寄付で賄っているのだけど、「これは法人として正しいあり方とは言えない」という意見をAAEEの卒業生たちからも指摘されている。確かに、現在のAAEEは活動規模からいって「スーパーボランティア団体」などと胸を張っていられる状態ではない。だからこそ昨年から、団体をどのように持続させていくかを、本格的に検討し始めているんだ。

大瀬「私もそのタスクフォースに参加させていただいていますが、世の中の流れを読みながらの暗中模索の作業。大変ですけど、私的には超勉強になっています。社会人になる前にすでに多くの社会勉強状態。毎回メモ取りまくりです。」


朝楓のように向上心と忍耐力、組織マネジメントや国際交流への興味関心が強い人でないとAAEEでの活動は続かないね。お金が出ないから、バイトではないし。その結果、どう?AAEEで主力として活動する人って個性的で面白い人ばかりでしょ。
極めつけは昨年、急遽決まった神戸でのイベント。東京から、全員自費で高速バスを使ってコンビニ弁当で旅した。

大瀬「懐かしい(笑)夜行バスの到着した早朝の大阪で、司会資料の最終調整をしていたのがもう一年前とは。あの時は、関西で初の報告会ということもあり、緊張とワクワク感がありました。」

朝楓を含め、ここにいる人たちは、AAEE文化が好きでそこから学び取ろうとしている人たちなんだ。だから自腹を払ってでも参加しようという気になる。でも、このままAAEEを続けて、さらに大きい組織になっていくのであれば、いつまでもこんな状態ではいけないよね。

大瀬「先生は私が卒業するまでは続けると仰いました(激白 参照)。あれから約2年。潰れかけていた状態から大きく飛躍して、アシスタントも増え、プログラムも拡大していきました。正直私も驚くほどの進化です。私は今年度で卒業するのですが、その後もAAEEを続けるおつもりなのでしょうか。」

「朝楓が卒業するまでは・・・」とつぶやいた2018年と今では状況が大きく異なる。学生アシスタントの体制もしっかりしてきたし、アジア各国での知名度もさらに上がってきている。さらに、AAEE初期に学生だった人たちが社会人として下支えしてくれるようにもなってきた。これは嬉しいことだよね。
ここで辞めるという選択肢はもう取れない気がするな。何とか持続可能な形で発展し、よりよい世界、よりよい国際交流、よりよい学生生活を草の根で支える組織として機能し続けたいね。
そのための基盤はある程度構築できているはずだから。

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