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ありがとう、仮面ライダーセイバー

~1年遅れの初見感想~


みなさん、お久しぶりです。
先日、再放送にて仮面ライダーセイバーの初見視聴を終えたmukuです。

とてもとてもやさしい物語で、創作というもののすばらしさに改めて気づかせてくれる素敵な作品でした。
セイバーを全話見終わっての感想や、感想ではないけど思い浮かんだことなどを書いたので、よろしければお付き合いください。

今回は以下の5本立てです。

①最終章(47章)を中心とした感想
②蓮とデザストと紅しょうが
③41章~最終章、増刊号のここ好き!ポイント
④私の好きな本を紹介!
⑤「全知全能の書」が形成されつつある世界

(もちろんガンガンネタバレありですし、ある程度セイバーの内容を覚えている方向けとなっております……わかりにくいところがあったら申し訳ありません)
(リバイス最新話までのネタバレもあります。それと②の項にはなぜかビルド21話のネタバレもあるのでお気を付けください)

とにかく長い(約38000字)です。
なので本っっっ当にお時間に余裕のある時によろしくお願いします。
興味のないところは読み飛ばしていただいて全く問題ありませんので……。

それではどうぞ!


①最終章(47章)を中心とした感想

まずは、最終章を中心とした「仮面ライダーセイバー」の物語全体についての感想です(本当は感想をツイートしていない41章から全話分ちゃんと書きたいところなのですが……あまりにも長くなってしまうので割愛します)(それでも十分長い)。

46章のラストで飛羽真はストリウスに追い詰められ、火炎剣烈火を弾き飛ばされて自身も大穴へと突き落とされてしまいました。
いったいどうなるんだ……とハラハラしながら47章視聴開始。
なんと、あのプリミティブドラゴンが飛羽真の身体を操って救ってくれたではありませんか。
プリミティブドラゴンといえば、「仮面ライダーセイバー」における暴走フォーム。当初は変身するたびに身体を乗っ取られ、飛羽真はもがき苦しんでいました。
最終的には、孤独だったプリミティブドラゴンのところに仲間がやってくる、という「物語の続き」を飛羽真が書き加えてあげたことで、プリミティブドラゴンと友達になりエレメンタルドラゴンという新たな力を得たのでした。
そのプリミティブドラゴンが、最終話にして「僕、お兄ちゃんのお話、もっと聞きたい!」なんて言って飛羽真の命を救ってくれ、あまつさえその強大な力をもってしてストリウスと戦ってくれるなんて、もう冒頭から私の脳内エモさメーター(?)の針は振り切れっぱなしです。

「セイバー」の世界では、人が創造・想像したものはひとつもなく、何かを生み出したとしてもそれはすでに「全知全能の書」に書かれているものだということでした。それを知ってしまった詩人・ストリウスは、物語になど何の意味もないと深く絶望し、世界を自分で定めたシナリオ通りに終わらせようとしています。46章では、飛羽真に対しても「お前の作品は模造品、すべて無意味だ」「お前が何一つ生み出していないことを認めろ」と吐き捨てます。しかし飛羽真は、そんな言葉を浴びせられてもなお、物語の力を信じていました。飛羽真はストリウスに対して、「なぜ本が好きなのか」について懇々と語り始めます。

「本の中には宇宙より広い無限の可能性が広がっている。人は本を読んで物語の中で自由・幸せになれる。俺は小さいころひとりで本を読んでばかりだったけれど、本の中でいろんな冒険をして、いろんなものに出会った。そして、本はルナと賢人という友達をくれた。俺が描く物語が大好きだと言ってくれるルナを喜ばせたくて、たくさん物語を書いた。何かに与えられた物語だったとしても、思いはそれを読んだ人の中で生き続ける。だから俺は物語を書く。だから俺は物語が大好きなんだ」(要約)

ラスボスに向けるとは思えない優しい笑顔で、飛羽真は語りつづけます。
物語自体はイミテーションだったとしても、それを読んだ人に沸き起こる「感情」は紛れもない「本物」であり、それが尊いのだと、飛羽真はそう言いたいのだと思います。この最たる例こそ、先ほど飛羽真を助けてくれたプリミティブドラゴンなのではないでしょうか。
寂しさのあまり飛羽真の身体を使って好き勝手暴れまくっていたプリミティブドラゴンでしたが、飛羽真から贈られた「物語の続き」あるいは「友達」にいたく心を動かされ、いまや飛羽真が窮地に陥れば助けたいと思うほど懐いています。飛羽真は口先だけの人間ではありません。実際に彼の物語が一匹の孤独なドラゴンの子の心を救ったことを、ストリウスに見せつけている場面なのだなあと感じました。

しかし、ストリウスはストリウスで、深い絶望に2000年間も苦しんでいるわけですからね……。そう簡単に考えが変わったりしません。
戦いを続ける間にワンダーワールドの崩壊はどんどん進み、世界から本や物語が消えていきます。ワンダーライドブックも例外ではなく、そのうちプリミティブドラゴンも力尽きて変身解除されてしまいます。
今度こそおしまいかと思ったそのとき、芽依の叱咤激励を受けたルナがやってきます。続いてロード・オブ・ワイズを辛くも撃破した倫太郎と賢人も駆けつけてきます。

「新しい物語を作って」と飛羽真に言い残したルナは、6聖剣と一体化して「ワンダーオールマイティ ワンダーライドブック」へと姿を変えます。
ここからの展開はもうノンストップです。
6聖剣の剣士たちの想いが結晶となったワンダーオールマイティ……。OP曲「ALMIGHTY~仮面の約束」を合図に、ソードライバー組最後の同時変身。このとんでもないテンション爆上げ曲をバックに「A NEW STORY IS BORN!」のお時間です。ホントのホントに最光だな!!
このシーン、何度観ても気持ちと体温がアガりすぎて冷静に観られないんですよね……。

飛羽真は最強のワンダーライドブックを使ってはいますが、見た目は3人とも初期フォームというのが粋ですねえ……。セイバーもブレイズもエスパーダも、初期フォームのデザインがものすごくかっこいいなと思っていたので、最終回でも活躍してくれてめちゃくちゃ嬉しかったです。

すべてのワンダーライドブックの力でストリウスを追い詰める3人。誰よりも本や物語を愛する飛羽真に、本の中のキャラクターたちみんなが手を貸している光景は心が震えました。ひとたび本を開いて物語にどっぷり漬かれば、私たちはもうその世界の住人なのです。ドラゴンも青いライオンもランプの魔人も、本の力を借りて頭の中で思い描けば、みんなみんなそこに「いる」のですね……。

飛羽真は攻撃の手は緩めない一方、「なぜ詩を書こうと思ったのか思い出せ」とストリウスに促します。そんなものとっくに忘れたと喚くストリウスになおも、「物語は心の中で消えはしない」と語りかけます。
30章の感想にも書いたのですが、飛羽真はすべてを救おうというスタンスを最初から最後まで貫いているんですよね。物語を紡ぐことに意味を見出せなくなったストリウスの心をも救おうとしています。例え自分を絶望させ世界を消滅させようとする敵であろうとも、最後まで言葉による対話を諦めないところが本当に素敵です。

全身全霊をかけた3人の猛攻に、ついに膝をつくストリウス。しかし、ストリウスが消滅しても世界の崩壊は止まりません。ここで世界が終わることは全知全能の書によって定められているから確定事項なのですよね。例えストリウスが何もしていなかったとしても。ストリウスの気持ちとしては、「どうせ来る終わりなら、自分の決めた結末でせめて美しく彩りたかった」ということでしょうか。

ですが、私はいまだにストリウスの言う「美しい終わり」がどういうものなのか、理解できているようでできていません。ちょっとこの場を借りて整理してみたいと思います。
ストリウスの発言をまとめると、

・人は死ぬ時が一番美しい(41章)
・タッセルの最期はあまり美しくなかった(42章)
・美しい結末には「私の英雄」である飛羽真が必要(44章)
・希望が絶望に変わり無慈悲な死が訪れる……なんて美しい(46章)

このようなものがありました。
どうやら、もともと希望を抱いていた人が絶望の淵に突き落とされて死ぬのが美しい、ということのようです。タッセルが消滅した42章を初見視聴した際は、なぜタッセルの最期が美しくないのかがよくわからなかったのですが、最終章までのストリウスの発言を列挙してみてすっきりしました。タッセルは息絶えるその瞬間まで絶望せず、希望を抱いたままだったからですね。最期の一言が「君たちはきっと大丈夫だよ、飛羽真」でしたからね……。

この価値観をもっと大きなスケールに当てはめてみます。神山飛羽真という「英雄」はこの世界全体の「希望」であり、剣士全員が彼なら未来を変えられると信じています。その飛羽真が絶望し斃れることで、世界全体も「希望」を失って美しい終焉を迎える、というのがストリウスの思い描いたシナリオでしょうか。今、この文章を書きながらこの解釈がすごくしっくり来ています。

しかし、残念ながら飛羽真はストリウスが思っていたよりだいぶ諦めが悪かったようです。絶望するどころか希望の炎をさらに強く燃え上がらせているようにすら見えました。

3人の剣を受けて倒れ、「それでも、もうじき世界は……終わる」と悲しげに告げるストリウス……。
倒壊するストリウスの塔から逃げ出す3人ですが、道半ばにして飛羽真は倒れ、倫太郎と賢人の叫びも虚しく2人の腕の中で身体が朽ちていきます。すでにワンダーワールドとつながってしまっていた飛羽真、やはり消滅は避けられないのか……。

このシーンは本当につらくて、でもなぜだかとても美しく見えて、ストリウスの言っていたことがよくわかった気がしました。やっとの思いでやり遂げたのに、やっぱり身体が消滅し始めた飛羽真を抱き締めることしかできない倫太郎と賢人。皮肉にもストリウス戦を終えたこのタイミングで2人の希望は絶望に変わります。「どうして……!」「しっかりしろ、飛羽真……!」と必死の形相で悲痛な声を上げる2人と、そんな彼らに虚ろな目をして儚い微笑みを向ける飛羽真の姿はなぜだかとても耽美で、私の目には間違いなく「美しく」映りました。ストリウスが言っていたのはこういうことだったのか(納得)。

世界が完全消滅を迎えるすんでのところで、芽依が投げかけた問いがみんなに届きます。人々は心の底にある物語に思いを馳せ、その物語との体験を語り始めます。これこそ飛羽真が言っていた「思いはそれを読んだ人の中で生き続ける」なのではないでしょうか。

単純に、「このお話が好き!」という気持ちとか。
大昔に一度読んだきりで、その本自体は本棚でホコリを被っているかもしれないけれど、どうしても忘れられない物語とか。
その本を読んだおかげで、何かをする決心がついたとか。
人それぞれ、物語との思い出はさまざまでしょう。
けれど、本や物語が人に何かを与えられることは、疑いようのない事実です。
実際私は、この「仮面ライダーセイバー」という物語に深い感銘を受けて、もしかしたら誰も読まないかもしれない感想文を湧き上がる衝動のままに長々と書き綴っています。誰かにこの感動を伝えたい、書き残しておきたい、と。物語には人を動かす力があります。絶対にあります。私が担保します。

身体が消滅し、暗い世界に独り放り出された飛羽真でしたが、人々が物語への愛を忘れていないということがわかると「ありがとう」と笑顔でつぶやくのでした。

時は流れて一年後。
飛羽真の遺作のようなかたちとなってしまった「エターナルストーリー」は、日本文藝振興会主催の「長谷川一圭賞」を受賞していました。これは最終章など多くの回の脚本を担当された長谷川圭一さんのお名前のもじりですね。セイバー世界の創造主から贈られるのですから、きっと大変名誉ある賞です。おめでとうございます、神山先生。

飛羽真がいかに物語を愛し、物語の力を信じた小説家だったかということを授賞式で力説する芽依。そういえば芽依もワンダーワールドと繋がってしまって身体が消えかかっていましたが、平気そうですね。なんででしょう?

芽依の熱いスピーチをバックに、剣士たちの現在の様子が流れるのがもう、ほんとにもうさあ……。息子のそらくんとキャッチボールする尾上さん、愛刀の手入れをする大秦寺さん、武者修行の旅を続ける蓮……。蓮、ほんとに頼もしい顔つきになったなあ。

それと、賢人ですよ。主が不在のファンタジック本屋かみやまで「アラジンと魔法のランプ」(よく聞くと「ひらけゴマ!」と言っているので「アリババと40人の盗賊」のほうかもしれない)のキャラクターの格好をして、子どもたちと一緒に遊んでいましたね。飛羽真がいたときと変わらず子どもたちを呼び、本を読み聞かせ、物語の世界へと誘って一緒に冒険する。そうやって飛羽真の本や大切にしているものたちがホコリを被らないようにずっと守ってきたんですね。飛羽真がいつ戻ってきてもいいように一年間も「かみやま」の世話をしてきたのだと思うと……賢人、なんて健気なんだ……。

神山飛羽真という人間について熱く語った芽依も、そのスピーチに一番に拍手を贈った倫太郎も、長谷川一圭賞受賞を「いいこともあったぞ」とそこにいない飛羽真に報告していた賢人も、それ以外の剣士たちも、私たち「セイバー」の視聴者も、みんなみんな飛羽真が帰ってくるのを待っています。

そして再びの「ALMIGHTY~仮面の約束」とともに、ついに飛羽真の現在が明らかになります。なんと、人々の思いが生み出した新しいワンダーワールドに一年間こもりきりで、「ワンダーストーリー」という新しい作品を執筆していたのです。
飛羽真が執筆を終えると、開かなくなってしまったはずのワンダーライドブックに力が戻り、ユーリや編集長をはじめ消えてしまった人たちが突然現実世界に戻ってきます。

私はこのシーンを観て、小説家・神山飛羽真にもうとんっっっでもないぐらい大きなリスペクトを抱きました。
だって一年間ですよ……? 消えてしまった人たちを全員元に戻すためにたったひとり現実世界ではない場所にとどまって小説を書き続けるなんて、並大抵の覚悟ではできないことだと思います。はっきりと描かれてはいないんですが、消えてしまった人たちの大多数って、きっと飛羽真とはなんの関わりもない赤の他人がほとんどですよね。そういう人たちのために頑張れる飛羽真、本当に博愛の人だなあ。

ちなみに一年どっかにこもって小説を書き続けろと言われても、私は無理です。いくら文章を書くのが好きでも、ずっととなると厳しいでしょうね……誇張でなく、たぶんどこかで気が狂います。趣味の短編小説や、この感想文だってひーひー言いながら書いています(もちろん楽しいんですけどね)。だから私は、拙いですが文章を綴るのが大好きな人間として、懸命に言葉を紡ごうとする方々を心から尊敬しています。それが仕事でも、仕事でなくてもです。

自分の思いを正確に文章にして相手に伝えるのは、とても難しいことです。考えすぎると行き詰まってしまって、すごくしんどいときもあります。けれども諦めないで、少しでも自分の心にぴったりくる言葉を探す時間は、とても尊くてかけがえのないものだと思っています。
その上で、一年間誰の助けも借りずに物語を紡ぎ続けた飛羽真はやっぱり体力と精神力が強靭すぎると思います。うらやましいとかを通り越してもうただただ憧れます。

行方不明だった人たちが戻ってきたことがわかると、仲間たちは「約束の場所」にいる賢人のもとに駆け付けます。みんなが口々に「賢人!」「賢人!」「もしかして!」「もしかして!」と叫びながら集まってくるシーンですね。これ、きっと1年の間、賢人が誰よりも飛羽真の帰りを心待ちにしていたのを知っているから、みんないの一番に賢人のところに報告に来てるんですよね。うーーーん、好きですみんな、好きです賢人……。

そして神山飛羽真、堂々の帰還です。おかえり、飛羽真……。長い間本当におつかれさま。やはりあなたは約束を守る男でした。

消えてしまったはずのワンダーワールドの存在たちも現れ、飛羽真にお別れを告げます。
自分たちの想像力、そして自分たちが紡ぐ物語が世界を変えるんだと気づいたストリウスの、憑き物が落ちたような笑顔が印象的でした。
後述しますが、ストリウスの「あなたは私の英雄だ」に対する、飛羽真の「俺はただの小説家だ」というセリフが言いようもないほど大好きなんですよね……。
あの狂犬みたいだったバハトまでが飛羽真の背中を押してくれるのもとてもよかったですね。私は本編の彼しか知らないので、早く劇場短編「不死鳥の剣士と破滅の本」を観てみたいところです。

本当にラストのラスト、飛羽真・賢人・ルナ3人の「離れていても、これからも3人、ずっと一緒だ!」、最っ光ですね……。

そして仮面ライダーセイバーの物語は、まがまがしい世界が描かれた飛び出す絵本「Wonder Story」の最後のページが下から上にめくれて、光あふれる世界に剣士と3人の少年少女がいるページに変わって幕を閉じます。
世界という物語に、幸せな続きが書き加えられたのでした。

拍手。もう拍手喝采です。
観終わった後しばらくの間は言葉が出ないくらい放心していました。今は最終章視聴から1か月ほど経ったので、なんとか感想文を書ける程度には落ち着きを取り戻しましたが……。それでもセイバー熱はまったく冷めていません。
心から、この物語に出会えてよかったと思います。
仮面ライダーセイバー、本当にありがとう。

②蓮とデザストと紅しょうが

飛羽真が世界を救う一方、41章〜最終章の間に起こったもうひとつの大事件として、このふたりについて触れないわけにはいきませんね。

強さを追い求めるあまり、苦悩を深め続けてきた蓮。
デザストはそんな蓮に対し「お前は間違いなくこっち側だ」と囁いて引き込み、かねてから一緒に行動していました。
セイバー29章&30章の感想文でも述べましたが、デザストは蓮のことを気に入っているし、なんだかんだ世話を焼いていましたよね。
人とメギド、立場の違う凸凹コンビではありますが、ふたりの関係はときに微笑ましいものでした。

動きがあったのは41章。
デザストは仮面ライダーファルシオンへと変身し、ひとりでストリウス&カリュブディスメギドと戦っていました。
「えっ!? デザストって仮面ライダーになるの!?」というところでまず驚いたのですが、さらに驚いたのは「不死身のはずのデザストにどうやらあまり時間が残されていない」ということです。
カリュブディスメギドに右腕右足を食いちぎられた後、一瞬で身体を再生していましたが、なんだか様子が変です。デザストのコアとでもいうべき「デザストアルターライドブック」がボロボロに傷ついていました。
蓮のもとへ戻ったデザストは「俺と戦え。本気でな」と有無を言わさぬ響きで言い放ちます。自分の命がもう長くないことを悟って焦っている様子でした。
あ゛~~~、もうなんだよデザスト、あんた不死身って言ってたじゃん!!!
こうなってくるとなんとなく今後の展開が予想できてしまってつらいですね……

一方蓮は、デザストがいない間にやってきた飛羽真と対話をしていました。
「剣士ではなく小説家のお前が、なぜそんなにどんどん強くなるのか?」と飛羽真に問いかけます。
蓮のこの疑問はもっともだと思います。長いこと剣士としての鍛錬を積んできた自分と違い、この前初めて剣を持ったばかりのぽっと出の小説家に後れを取ってしまっては、複雑な気持ちにもなるでしょう。
もっと言えば、蓮は最初から「強さ」を追い求めてきた剣士でした。師匠からもそのように叩き込まれ、強くなることだけを目標としてきた彼にとって、飛羽真の存在自体が納得できないものであったことは想像に難くありません。

その気持ちにデザストも気づいていて、42章では、飛羽真がストリウスと戦おうとしているところに突然割り込み「お前が邪魔だ、炎の剣士」「お前がいるから、あいつは迷うんだ!」と息巻いていました。蓮のためにわざわざこんな文句をつけに来るなんて、なんて健気なメギドなんだ……。
デザストも、飛羽真のせいで(飛羽真は何も悪くありませんが)蓮が思い悩んでいることには気づいています。しかし、ここでデザストが飛羽真を倒したとしても根本的解決にはなりませんし、なによりクロスセイバーの強さは圧倒的で、デザストはなすすべもなく追い詰められて水場に突き落とされます。飛羽真も言っていましたが、結局のところ蓮が自分で答えを見つけるしかないというのは、デザストもよくわかっているんでしょうね……。

デザストが「強さ」について言及したことから「蓮とお前は似てるのかもな」と言う飛羽真に、「人間ごときと一緒にすんじゃねえ」と不機嫌そうなデザストでしたが、「お前は間違いなくこっち側だ」とかなんとか言って蓮を引き入れたのはどこの誰でしたっけ???
戦いのさなか飛羽真は、デザストのざっくり抉れた左の脇腹の傷が再生しないことに気づきます。
そして、そんなふたりのやりとりを、蓮もまた陰から見ているのでした。

それと42章といえば、ふたりがカップラーメンを食べているシーンが印象的ですね。デザストって人間の食物を食べられる身体してたのか……。口には唇がほぼないので上手いこと食べるのに難儀しそうですが、ちゃんとすすって食べてましたね。デザスト器用だな。
デザストはラーメンに付属の紅しょうがを追加して食していましたが、蓮にはそのおいしさがわからない様子。
ちなみに私もこの食べ方はしたことないですね……そもそも紅しょうががついてるカップラーメンを見たことがないんですが、普通に売っているものなんでしょうか?
デザストに「おい紅しょうがは!」と怒られると、蓮は「紅しょうがに存在価値なんかない。ない方がうまい」と言い捨てます。
いやさすがに存在価値がないは言いすぎだよ蓮くん……。デザストみたいに紅しょうがが好きな人だっていっぱいいると思うよ??
でもここは「存在価値がない」というセリフを絶対に入れる必要があったんですよね。のちのストリウスの「(デザストは)そもそも私が気まぐれで作ったメギド。存在する理由も目的もない」というセリフとリンクさせて、「紅しょうがはデザストのメタファーである」ということを示すためです。この伏線がのちのち効いてくるんですよね……視聴者の涙腺に。

ラーメンを食べながらデザストとお喋りする蓮。あくまでもつっけんどんな物言いを崩しませんが、「あいつらは強くなってた……俺の知らない強さだ」と、無意識にぽつりぽつりと本音がこぼれます。
飛羽真だけではなく、倫太郎も知らないうちにどんどん強くなっていたことが、余計に蓮の自信を奪っていました。誰かのために戦うことで強くなったふたりに追い越され、もどかしい思いをしているようです。
「それを知ってどうすんだよ? お前には関係ねえだろ」と返すデザストは、さながら人生相談に乗ってあげているみたいです。心理カウンセラーデザスト……。
せっかくのアドバイスを「お前にはわかんないか。死なないから。戦う目的とか、生きる意味なんて考える必要ない。仲間もいないしな」と突っぱねる蓮に「仲間とか、意味がなけりゃ生きてちゃダメなのか」とデザスト。

……と、こんなやりとりがあってからの、前述のクロスセイバー vs. デザストの戦いが展開されます。
永遠の生を約束された気楽な奴にこの苦しみはわかんねえよと思っていたのに、実はもうデザストに残された時間は長くないことに気づいてしまうんですね。

そして来たる43章。
デザストは呻き苦しみながら、なんとか脇腹の傷を塞ぎます。ここは声優を担当された内山さんの名演も相まって、非常に痛々しくてつらいです……。
「何も残せなかったな……つまんねー最期だ」とため息をつく様子を木陰から伺っていた蓮は、ついにデザストの戦いの申し出に本気で応える決意を固めます。

倉庫の中でうつむき佇むデザストのつやつやした身体に反射する光。そして蓮がやってきた足音に反応して顔を上げるまでの、横顔を舐めるようなカメラワーク。

ここから始まる蓮とデザストが剣を交えるシーンは、ひとつひとつが芸術作品のように洗練されています。光、水、煙、音が巧みに用いられ、映像を美しく彩っていました。

私は長いこと仮面ライダー作品からは離れていて、つい最近戻ってきた未熟者なので、どの監督がどんな演出をする特徴があるか、ということには全然詳しくありません。
それでも、この43章を担当された上堀内監督が強いこだわりと矜持をもってこのシーンをつくりあげられたことは、ひしひしと伝わってきました。

上堀内監督といえば、リバイスの39話「希望と絶望、三兄妹の葛藤」や、少し前の作品でいうと仮面ライダービルドのトラウマ回として有名な21話、「ハザードは止まらない」などを担当されている方です。

リバイス39話を見ると、冒頭の牛島太助が演説をするシーンや、一輝とバイスが2人で語り合うシーンは、やっぱり光の当たり方がすごく独特なんですよね。人物の姿が浮き立つように当たっているというか……。どうやら上堀内監督は光の使い手であらせられるようです。

それとこの回には、Twitterでひそかに話題になっていたシーンがありましたね。
太助が光に、公子のことは見捨てて撤退しろと伝えたあとのことです。
光は「どうして母さんを助けに行かせてくれなかったんですか!」と太助に詰め寄りますが、「我々は任務で家族を偽装していたにすぎない」と静かにいなされてしまいます。いたたまれず光がウィークエンドの指令室を飛び出していくと、ここで初めて引きのカメラワークになり、部屋全体の様子が映し出されます。すると、床に本や資料が散らばっていることがわかります。
私はこれを見たときに「やけに部屋が荒れてるなぁ……」ぐらいにしか思わなかったのですが、この映像にとんでもない秘密が隠されていました。
放送後のTwitterで話題になっていたのは、これは公子を救えなかった悔しさのあまり太助が暴れまわった跡なのではないか、ということです。迷える多くの市民の先頭に立ち、つねに冷静であることを求められる立場の太助が、メタ的に言えば視聴者の目すら届かないところで激情をぶつけていたのです。この演出はすげえや。
なるほど~~~!!!と腑に落ちまくると同時に、その演出の意図、自分で気づきたかった~~~!!!とめっちゃ悔しかったです。

上堀内監督のこだわりを見抜けなかったのがあまりにも悔しかったので、ビルド21話のほうは「こういう意図で演出されているのでは?」ということを自分なりに紐解いてみることにします。

「トラウマ回」のひとことで片づけることすら大変失礼な気もしますが、トラウマ回がトラウマ回たりうるのも上堀内監督の名采配があってこそだな、と感じます。
戦兎が青羽を手にかけるシーンや、そのあと廃人と化してしまった場面なんかはもちろんストーリー的にトラウマなんですが、不気味なシーンは最大限不気味に、虚しいシーンは最大限虚しく見えるように映像が練り上げられているので、ひどく感情を揺さぶられるんですよね。

戦兎がハザードトリガーの副作用で自我を失う瞬間に電球が割れて、天井からぶら下がった部分が揺れるギイギイという音だけが響きます。そしてわずかな光によってハザードフォームの真っ黒なボディが怪しく照らされ、ついにビルドは殺戮マシーンへと変貌してしまいます。

……ここのシーン、めちゃくちゃ怖くないですか???
この文章を書くために何回か見直したんですが、底知れない恐ろしさを感じて鳥肌が立ちました……。

青羽の身体が青い光の粒子となって消滅したシーンも、流れ続ける川に光の粒が漂っていくカットが挟まることによって「一度消えた命は戻らない」ということをまざまざと見せつけられているようでひどく虚しく感じられます。当事者の戦兎をはじめ、その場に居合わせた万丈、一海、赤羽、黄羽。それに視聴者までもが、「とんでもないことを……」と心を抉られるのです。
その傷を引きずったまま見ることになるのが、無音でビルの谷間を太陽が昇ってゆく映像と、無人の東都に流れる雲の様子を早回しにした映像です。
おそらく合計5秒ぐらいしかなく、しかもストーリーには何の関係もない自然の映像なのですが、ここに何か強い意思を感じます。
どんな意思? と言われるとうまく言語化できないのですが……ここには絶対この映像が必要なんだ!! というような……とにかく何かを感じることは間違いないのです。自分の表現力の無さが恨めしいです……。
太陽が昇っているから時間帯は朝なのだと思いますが、空も街も変に薄暗くて、それが渦中の仮面ライダーや避難中の一般市民たちの重苦しい気持ちを表しているのかな……と解釈しています。

事件から一週間経ち、茫然自失の抜け殻になってしまっている戦兎が映るシーンでは、カチカチカチカチ……と「ニュートンのゆりかご」の音が響き続けています。ニュートンのゆりかごは物理学の分野で使われる装置で、アメリカンクラッカーがいっぱい連なったようなアレです(説明下手すぎ)。
この装置越しに虚ろな戦兎の表情が映り、装置自体はぼんやり映る程度でほとんど見えないのですが、音だけがやけにやかましくカチカチ鳴りつづけています。
これは戦兎が物理学者であること、しかし皮肉にも科学の力で人を殺めてしまい喪心していること、それでも時間だけは無常に過ぎていくことを、またもやたった数秒に詰め込んであるとんでもない演出なのではないかと思いました。

戦兎が件の現場に出向き、震えながら花を手向けるシーンでは、青羽の亡霊が現れます。
それもまず「よう」と声だけがして、おそるおそる顔を上げると冷たく見下ろしてくる青羽と目が合う、という考えただけでも身の毛がよだつような恐ろしい演出になっています。ここで急に川の水音が大音量になって耳に刺さるのもいい意味で本当に嫌です。
そのあと飛び退いて嘔吐きだす戦兎はかなり遠い位置から撮られていて、同時に「ピヨピヨ……」と野鳥の平和なさえずりが聞こえてくるのが憎い。本当に憎い。
戦兎が、仮面ライダーたちが、こんなに苦しい思いをして戦っているのに、ちょっと目を逸らしてみると世界は悲しいほどに普通に回っているのです。

こうしてみると、上堀内監督の演出って自然の要素が用いられていることが多いような気がしますね。川や太陽、雲や鳥の声など……。
自然というのは、人間の力ではどうにもならない大きな力を秘めており、ときに残酷に、無慈悲に襲い掛かってきます。そういう面をうまいこと利用して作品に落とし込もうとされているのではないかと推測します。

スタークに唆されて再びビルドに変身するシーンでは、ビルドドライバーのシステム音声「Are you ready?」にこれでもかとエコーがかかり、その間に走馬灯のように記憶が駆け巡ります。
変身前にいつも聞いていたこの音声が、「準備はできたか?」――「覚悟はいいか?」と問いかけ、戦兎の心に重くのしかかってくるようです。

21話は戦兎役の犬飼さんの名演がとてつもなく光る回ですが、上堀内監督の名演出によって輝きが何倍にも増していますね……。
改めて見返してみると「ハザードは止まらない」は「上堀内監督の名演出が止まらない」でもあるなあ……なんて思いました。

……あれおかしいな、セイバーの感想でしたよね??
話を戻すと、43章を担当された上堀内監督はこういう実績のある方だということです。今回もすばらしい作品を提供してくださっています。

何回も言いますが、光がとんでもなくキレイに使われているんですよね。
デザストにスポットライトのように当たる光の筋であったり、逆光になる蓮の輪郭であったり。おかげで画面がずっと美しいです。

倉庫の淡い光の中、ふたりは剣を交えます。
本気で挑むと決めたものの、迷いが断ち切れないままの蓮はデザストに追い詰められていきます。
そんななか蓮の脳裏をふとよぎったのは、倫太郎の剣技。
蓮はとっさにその流れるような動きを真似て技を繰り出しました。
それに気づいたデザストは「……はぁ?」とやる気をなくし、地面に転がってしまいます。
そして「そりゃねえだろ……そうじゃねえだろ!!!」と詰め寄り、蓮を変身強制解除に追い込みました。
泥水に突き落とされてからの「ああ!!ああ!!なんで俺こんなに弱えんだよ!!」という悲痛な絶叫は富樫さん迫真の演技でしたね……。このシーンだけでなく、この回は全体的に声が今までと違って感じられました。低くて、凄みが出て、蓮の本気が滲んでいるようでした。

成長しない蓮に呆れたデザストは、「お前の存在意義はない」と生身の蓮に剣を振り上げます。
このセリフ、すごくつらいですよね……。ストリウスの勝手で生み出されたデザストにはブーメランとなって突き刺さる言葉です。
おそらくデザストは、蓮の存在意義を見出してやることで自分自身の存在意義も見出したかったのだと思います。
かたや自分を見失った人間、かたやもともと物語を持っていないメギド。存在意義をなくしたものどうし、ふたりは本当によく似ていました。

刃が届くすんでのところで、蓮は身をかわします。それは「強さの果てを見たくないか?」と語りかけてきたデザストの言葉を思い出したため。
そして、「俺は……見てみたい」とついに覚悟を決めます。
このシーンも、水が反射した光が倉庫の壁に映ってゆらゆら揺れているのがキレイですね……。

蓮の様子が変わったことに気づいたデザストの声色はひどく楽しそうで、なんとも言えない気持ちで胸がいっぱいになりました。
デザストが「お前らしくなってきたじゃねえか!」と笑うと、「『お前』じゃない! 俺は……緋道蓮だ!」と名乗りを上げます。
それに倣うような「俺は、デザストだ」。
蓮は再び仮面ライダー剣斬に変身し、デザストにぶつかっていきます。

他者に名前を呼んでもらうというのは、一番簡単にできる自分の存在証明だと思います。あまりにも簡単だけれど、自分ひとりだけでは決してできないことです。
長いこと一緒にいても名前すら呼び合うことのなかったふたりが剣を交え、ようやくお互いに存在を与え合ったこのシーンが、エモの塊でなくて何でしょうか。

今まで以上に激しく火花を散らすふたりに寄り添うように、芽依役の川津さんが歌う挿入歌「Will save us」が流れ始めます。この曲が視聴者の涙腺を引っ掴んでガバッ!! と緩めてきます。
「闇と光が交じり合ってく」の歌詞のところで、背後から差し込む光を揺れるデザストの身体が遮ったり遮らなかったりして、本当に闇になったり光になったりと歌とリンクするところは鳥肌ものです。ここだけでなく、歌の「間」と映像の「間」が、パズルのピースがパチッとハマるように完璧に組み合わせられています。

「俺の全存在をかけて……お前を倒す」という蓮の言葉に、デザストは泣き笑いの声で「来いよォーーーッ!!!」と叫びます。
これが、デザストが長い間、本当に長い間、いちばん待ち望んだ言葉だったんですね……。
存在価値を持たぬ自分に「全存在」をかけて向かってきてくれる相手など、どこにもいなかったのだと思います。だからこそデザストは強さを求め続け、ここまでやってきました。ついにたどり着きました。

鍔迫り合いのシーンもライティングが実に美しい。デザストの表情筋は動かないし、蓮も変身後のマスクの状態ですが、ふたりの鬼気迫る表情が見えてくるかのようです。
デザストの「お前になんか声かけるんじゃなかったぜ」と蓮の「お前となんか出会わなきゃよかった」は、この戦いの場での迫力ある声だけでなく、やわらかくてちょっと間の抜けたようなもうひとつの声が重なって聞こえます。
これは、ふたりとも本当は気持ちと裏腹なことを言っている、というメッセージだと思います。後者の声は、あきらかに冗談とわかる明るい声色なのです。
でも、ふたりとも素直に「出会えてよかったな!」なんて言うことはしません。それが蓮とデザストなのです。

死闘の末、ついにガラ空きになった胴に風双剣翠風を叩き込まれ、地面に転がるデザスト。
身体が朽ちてゆく中、「お前はそのままでいいんだよ」と語りかけます。

そう、蓮はそのままでよかったんです。
飛羽真や倫太郎が「誰かを守りたい」という思いを糧にメキメキと強くなっていったので、蓮は自分の進むべき道がわからなくなってしまいました。
でも、別に「強くなるために強くなる」が強くなりたい理由でもいいじゃないか、とデザストは伝えたかったのではないでしょうか。
最初から強さを追い求めていたふたり。それを究極まで突き詰めていけば、おのずと答えは見えてくるのでした。
だからこそ、蓮が倫太郎の剣技を真似たときにデザストはあんなに怒っていたのですね。「他人の真似をするな、お前だけの強さを極めろ」と、そう言いたかったのだと思います。
飛羽真や倫太郎に対して「俺の知らない強さだ」という本心を吐露した蓮に「それを知ってどうすんだよ? お前には関係ねえだろ」と言っていたのも同じ理由ですね。

「それとな、紅しょうがちゃんと食えよ」と笑いながら、デザストの身体は塵となって消滅します。
その場に残されたデザストのスカーフと、ボロボロになり力を失ったデザストアルターライドブックを拾い上げ、「楽しかったよ、ありがとう」と顔を上げる蓮。
ここもチラチラと揺れる光と煙が、蓮の横顔を美しく際立たせています。

蓮とデザストの戦いは、これにて決着です。

デザストも愛刀のグラッジデントや無銘剣虚無を振るう立派な剣士でしたから、剣士どうし、良きライバルどうし、最後まで剣で語り合い、このような結末を迎えられて本当によかったと思います。
デザストの身体は消えてなくなりましたが、姿かたちが消えると同時に蓮に消えない強さを授けてくれました。

これで43章は終わりかと思いきや、EDのあとに蓮がひとりで紅しょうが入りのカップラーメンをすすっています。
そして「しょっぺえ」と一言。
そばには寄り添うように立てかけられた無銘剣虚無と風双剣翠風。
もはや多くを語るのも野暮というものでしょう。たったこれだけのシーンですが、ここにふたりの関係性がすべて詰め込まれています。

続く44章では、戻ってこないかと声をかけに来た賢人に「俺は俺の道を行く。でも、世界を終わらせちゃいけない理由ができた」と語ります。

41章で、デザストは世界を終わらせようとするストリウスに対して「十分楽しむ前に世界がなくなるのは困る」と言っていました。

41章のデザストと44章の蓮は同じことを言っています。「強さの果てを見るまでは終われない」、そういう意味だと思います。

いよいよ最終決戦の幕が開いた45章。
大秦寺とともにロード・オブ・ワイズ スパルタンとの戦いを引き受けた蓮は、一度はその圧倒的な強さに強制変身解除に追い込まれますが、「こんなところで止まってられない……!」と自分に喝を入れ、再び立ち上がります。

ここの映像も気合の入りようがものすごい。スラッシュと剣斬の息ぴったりのチームワークでロード・オブ・ワイズを翻弄します。
音銃剣錫音が放った弾丸で空中に放った風双剣翠風のトリガーを押すって、どんな離れ業だよ……。

蓮は無銘剣虚無にデザストアルターライドブックをリードさせ、幻影のデザストとともにデザストの必殺技「カラミティ・ストライク」を発動。
最後の一撃を叩き込む瞬間、笑うデザストの姿と交錯します。

デザストが本編で初めてカラミティ・ストライクを放った時には、「カラミティ・ストライク……(ドヤァ)」みたいな感じだったのでうわあすっごい中二病!!! と思ったのに、こんなにかっこよく見える日が来るなんて思わないじゃないですか……。

ついにロード・オブ・ワイズを撃破すると、かろうじて形を保っていたデザストのスカーフとアルターライドブックも完全消滅します。
これで、デザストが存在していたことを証明する「物」は、何ひとつこの世界からなくなってしまいました。
ですが、蓮がこれからも強さの果てを求め続けることが、デザストの存在を繋ぎとめてくれることでしょう。
この先、誰ひとりとしてデザストのことを思い出さなくても、蓮だけは彼とずっと一緒にいるはずです。

蓮は大ダメージを負った大秦寺をその場に残し、最強の賢神であるロード・オブ・ワイズ クオンと交戦中の飛羽真と賢人のもとへ走ります。
飛羽真と賢人のふたりも強制変身解除に追い込まれ、苦しい戦いを強いられていました。

そこへ「先に行け! 飛羽真!」と蓮。
このセリフには痺れました。
飛羽真は初めて剣を握ってからありえないスピードで強くなり、いつも蓮の先を走っていました。
そんな飛羽真に対しずっと劣等感を抱いていた蓮が迷いを振り切り、自分は自分でいいんだと気づけたからこそ、こんなふうに飛羽真の背中を押せたのだと思います。
ストリウスを倒して世界を救う役目はお前でいい、でもロード・オブ・ワイズ クオンを倒して強さの果てに近づくのは俺だと言わんばかりです。

「こいつは俺が倒す!」と息巻く蓮に賢人は「俺とお前で、だ」と諭しますが、蓮は小さく笑って「足を引っ張るなよ」と答えています。

あんなに賢人大好きっ子だった蓮がこんなこと言うようになっちゃってまあ……。
ずっと憧れていた賢人と、肩を並べて立てるほどに蓮は成長していました。
「せいぜいがんばるさ」と返した賢人の声が少し寂しそうに聞こえたのは、私の気のせいでしょうか。

47章でふたりはランプドアランジーナと猿飛忍者伝のワンダーライドブックを交換し、辛くもロード・オブ・ワイズを撃破します。
蓮は「強さの……果て……!」とつぶやきもう一度起き上がろうとしますが、そんな体力はどこにも残っていませんでした。
ここ、目を開けたまま動かなくなってしまったのでえっ? まさかそんな……と思ったのですが、ユーリが命を懸けて癒してくれたことで息を吹き返します。
同じく動くこともできず倒れていた賢人にも癒しの術を施すと、ユーリは力を使い果たし消滅してしまいます

これ、賢人はものすごーく責任を感じるんじゃないかと思うんですよね……。
なんでもひとりで抱え込みがちな賢人のことですから、自分のために力を使って消えたとなると、賢人の心に一生消えない傷が残る気がします。
飛羽真がユーリを再び物語に登場させてくれてよかったね、賢人……。

さて、飛羽真が世界を救った後、蓮は武者修行の旅に出ていましたが、ソードオブロゴスがマスター制を廃止し、評議員制に切り替わる記念の日にはサウザンベースに戻ってきていました。
ブラコン玲花が嫉妬の炎を燃やしているときは、蓮もなんだか幼い表情に戻って怯えていましたね。
飛羽真が火炎剣烈火をソフィアに返すと、蓮はわざと大声で「さて! 俺はまた武者修行の旅に出るとするかね!」と叫びます。そんな蓮の頭を「元気でやれよ!」と撫でるシーンは最光だな!

飛羽真と倫太郎は固い握手を交わし、賢人と芽依も加わって4人で抱き合います。
このシーンは、キャストさんたちとしても最後になるので、キャラクターとしてだけではなく本当に泣いていらっしゃる方もいる気がしますね。
そりゃ泣くよこんなシーン……。
みなさん本当に、一年間お疲れさまでした。

そうして、平和になった世界でそれぞれの生活に戻っていく剣士たち。
彼らの物語は、この番組が終わった後もずっと続いていきます。

以上が、私が蓮とデザストの旅路を振り返って思ったことです。
これからも蓮は、デザストの想いも背負っていっそう鍛錬に励んでいくことでしょう。

③41章~最終章、増刊号のここ好き!ポイント

続いてはこちらのコーナー。上記の項では書ききれなかったけれどめちゃくちゃ推したいポイントとか、細かすぎて伝わらない「ここ大好き~!」ポイントを挙げていきます。
ストーリー上の好き! だったり俳優さんへの好き! だったりスーツアクターさんへの好き! だったり音楽への好き!だったり、その他もろもろの「好き!」もジャンルレスにぶち込んだごった煮です。
文章がずっと続いたので、動画なんかも交えてご紹介したいと思います。
全部で20個+αあります(多いよ……)。
それではどうぞ!

1.OP曲「ALMIGHTY~仮面の約束 feat.川上洋平」

ひとつめはこれ。言わずと知れたセイバーのOP曲です。
これめちゃくちゃいい曲ですよね!?!?!?(何を今更)
①の項でも書きましたが、ストリウスとの最終決戦でこの曲が流れだすところが本当に大好きで、見直すたびになんか居ても立っても居られなくなるんですよね……。
逆に曲を聞いただけでもあのシーンが脳裏にありありとよみがえって、やっぱり変なテンションになるのを禁じえません。
個人的には1番と2番の間の間奏のトランペットのメロディを聞くと、いちばん「あぁ……最終決戦だ……」と感慨深くなるんですよね。ここまで、番組中では1分30秒のTV sizeしか耳にする機会がなかった(最終章以外でフルサイズで流れてるシーンありましたっけ?)ので、フルサイズでしか聴けないフレーズが一番盛り上がるシーンと強く結びついたのだと思います。

歌詞もセイバーとめちゃくちゃリンクしてていいですよね。歌詞の考察は苦手なので割愛しますが、冒頭の英語部分の詞とか大好きです。「君の手の中の剣(saber)は世界を救う言葉を書くためのペンだ」――作曲されたときには最後の方のストーリー展開なんて全然決まっていなかったと思うんですが、よくここまでリンクしましたね?? すごい……
47章では剣士たちの想いに反応した6聖剣とルナが融合してワンダーオールマイティワンダーライドブックが生まれました。ルナは全知全能の書の一部なので、きっと物語を書かれる側(本とか紙とか)ですよね。ということは歌詞の通り、剣士たちの想いが乗った聖剣が物語を綴るための道具、すなわちペンになった瞬間なんだ……と感動しました。

そして、もう一つみなさんにお伝えしたかったのが、この曲の音楽性のことについてです。
最初に断っておくと、私は全然音楽に詳しくないです。そして大変申し訳ないことに、演奏の東京スカパラダイスオーケストラさん(以下「スカパラ」)も、ボーカルの川上洋平さんが所属されている[Alexandros]さん(以下「ドロス」)も、そんなによく知っているわけではないです。
なので有識者の方、もし間違いなどを発見したらこっそり教えてください(他力本願)。

私がこの曲を聴いて「音楽」の面で感動したことは、「スカパラとドロスの音楽性が最高のかたちで融合してる!!!」ということです。
ドロスといえば、「ワタリドリ」が有名な曲かと思います。この曲は「ターンターンタン、ターンターンタン……」という、「付点8分、付点8分、8分」の繰り返しのビートが特徴的で耳に残ります。確かドロスの他の曲でも同じビートの曲があったような気がします(薄すぎる知識)。
一方スカパラは「スカ」なので、「ンタンタンタンタ……」という裏拍のリズムが特徴です。
改めて「ALMIGHTY~仮面の約束 feat.川上洋平」を聴いてみると、イントロやサビはドロス、Aメロはスカパラのビートになっているんですよね。
これに気がついたとき、なんというか「わあ……!!」って世界が明るくなったような気がしました。ドロスとスカパラの音楽性、なんて幸せな出会いを果たしたんだ……!!! めっちゃくちゃノリノリになれるのはそういうカラクリだったのか。
この辺、ご本人のインタビューとかあったりしないかなあ、と思って探したら、なんとありました。作曲者、スカパラの川上つよしさんが明言されています(こちらの記事です)。こんな神アレンジをやってのけるみなさん、スゴい。でもこの記事を読んだところによると、私がドロス特有のリズムだと思っていた「ターンターンタン、ターンターンタン……」の方もスカのリズムなんですね? ひとつ勉強になりました。

そのほかこの曲の好きなところと言ったら、カラオケで歌うとそりゃもうめっちゃ楽しいことです。みなさんお察しの通り(?)、ラスサビの「うごーかせーるーさ、みーーーーー↑↑↑らーーーーー↑↑↑い」がMAX楽しいです。「超、開放感」って感じで最強に気持ちいいです。

2.41章の飛羽真の表情

これは、「ルナと会うとワンダーワールドの力が手に入り、代償としてこの世界から消えてしまうが、それでも君はあの子に会いたいか?」とタッセルが飛羽真に聞いたときのことです。
質問に対する飛羽真の答えとしては「ルナとは会うけどみんなとも離れない。だから未来を変える」という至極前向きなものでした。
……なんですが、ここの飛羽真の微笑み、儚すぎません……???
飛羽真は人であることをやめないと言っているのですが、なんか逆に人外に近づいているように見えてしまってすごくゾクッとしたんですよね。めっちゃ目も潤んでるし、どうやったらこんな繊細な表情が作れるんだろう……???

3.42章などで見られる飛羽真の走り

42章の冒頭、それと45章のラストなどでも見られるんですが、飛羽真が全力ダッシュするシーンが大好きです。観てて気持ちいい走りっぷりです。脚なっがいし回転も速いしフォームも美しくて、絶対足が速い人の走り方なんですよね。私みたいな鈍足人間からするとうらやましい限りです。

4.織姫飛羽真

皆様、まずは何も聞かずにこちらの動画をご覧ください。

これ、今回私が一番紹介したかった最推し動画です。
実は、私が観ていたセイバーの再放送ではゼンカイジャーとコラボした合体SP、すなわち特別章を放送してくれなかったのでとても悲しいのですが、そんな悲しみも吹っ飛ぶぐらい衝撃を受けました。むしろ私自身が吹っ飛びました。

この動画、全年齢対象で全世界に向けて公開してて大丈夫ですか……???
織姫飛羽真、というか内藤さんの色気がダダ漏れすぎるんですが……。

まずは公式での女装ごちそうさまです。とても似合っているし大変お綺麗です。傾国の美女です。
最初はポーズを決めて動かないですよね。質問されてもずっとしゃべらないですよね。女性になりきっているから声を出さないようにしているのだと勝手に解釈しています。なんか変なタイミングで硬直が解けて思わずといった感じで笑い出すのも好きです。上目遣いのカメラ目線も大変あざとくて最光です。
で、そのあと、一回目線を外して(これもあざとい!!!)から青木さんに後ろから抱きつく仕草、目を細めて青木さんの耳のあたりを見つめる視線(ここ、個人的に織姫飛羽真がいちばん美人なポイント!!!)、そして極め付きは、やるぞ?やるぞ??と焦らしてからの耳ふーっ(耳ふーっ!!!!!?????)、動画が終わる最後の一瞬の屈託のない笑顔まで含めて、すべて計算か??? っていうぐらい魅せ方が完璧です。

この動画、冗談抜きで毎日観ています。手つきと目つきが天才すぎて、何万回観ても飽きないのです。丸一日この動画だけ観て過ごせと言われても余裕だと思います。それくらい好きです。

私はこの動画のせいで内藤秀一郎沼にドボンしてしまいました。どうしてくれるんですか(知らんがな)。
本編でもない、たった20秒の自撮り動画なのに……。恐ろしいですね。

今自分で書いてて思ったんですが、この動画ってきっと青木さんの自撮りですよね。青木さんのアカウントから投稿されてるし。
耳ふーってされたときに画面が揺れてるのがもう……すべてを物語っていますね……。きっとゾワァ…ってしたんでしょうね……。
そんな気軽にキャストさん同士の耳ふーっとか見せられるとオタクは安直に絶命するのでやめてください……。もっとやってください……(矛盾)。

結果的に、動画の冒頭で川津さんが言った通りけしからん動画に仕上がっていて大変けしからんでした。
それにしても内藤さん本当に美人ですね……。目の保養になります。

番外編.38章の宣伝動画

皆様、まずは何も聞かずにこちらの動画をご覧ください(2回目)。

なんですかこれは???耳ふーってするの流行ってたんですか?????なんで?????
私さっき言いましたよね??(怒)もっと耳ふーっしてくださいと!!!!!ありがとうございます!!!!!(爆死)
青木さんの肩にあごをのっけて目をつむってるの、この上なくあざとかわいいですね。それにしても青木さんにめっちゃ懐いてますね……。
大事な宣伝のセリフに合わせて覚醒し、必殺技・耳ふーっで邪魔をしてご満悦の内藤さん。ぎゅっと目をつむる青木さん。そして画面いっぱいの山口さん。このお三方仲良すぎでは。そして最後のふたり、なんて楽しそうな笑顔なの……。

さっきより短い、たった13秒の宣伝動画ですよ?これだけで心かき乱されまくってしまって、ダメだもうほんとに好きだ内藤さん……。誰か助けて……。

5.44章 仮面ライダーストリウスの初変身

このままだとスーパー内藤秀一郎タイムが終わらないので、本編の好きポイントに戻ります。

44章の、ストリウスが仮面ライダーに初変身するシーンがすごく印象に残っています。
ストリウスの斜めに構えた姿勢、グリモワールワンダーライドブックのなんて言ってるか聞き取れないけど不気味なシステム音声、すぐ変身かと思わせておいて一瞬無音の間があってからの怪しい手つき、そして開かれる本……。
ストリウスから伸びた黒々とした影が飛沫を上げ、闇の波となってストリウスに押し寄せます。ここの、ちょっと距離のある場所から影の上を通ってストリウスに近づいていくカメラワーク、言いようもないほど不気味で、でもそれが大好きなんですよね。視聴者もストリウスの変身に、すなわち2000年分の絶望に巻き込まれているような……。すごい演出だ……と感心しました。

6.44章 クロスセイバーが剣のエンブレムをスライドさせる動き

これはセイバーのスーツアクターさん、浅井宏輔さんへの「好き!」です。
ロード・オブ・ワイズの猛攻に倒れ伏したクロスセイバーにストリウスが超巨大火球で追い打ちをかける場面で、飛羽真が慌てて刃王剣クロスセイバーのエンブレムをスライドするシーンがあります。刃王剣クロスセイバーを地面に置いたまま必殺技で十聖剣を呼び出そうとしているのですが、ここの動きがめちゃくちゃ好きです。地面に置いたまま、っていうのがなぜだかたまらないんですよね……。
「飛羽真がとっさに機転を利かせた」「焦りの滲んだ」「ふらふらになりながら必死に」をすべて感じられるこの仕草に本当に感服しました。
浅井さんすごい……!!!

7.44章 飛羽真が泣いているシーン

ようやく、飛羽真・賢人・ルナの3人が15年ぶりに再会することのできた感動のシーン。最初は、どうすればいいのかわからないとルナが思い悩んでいました。飛羽真の励ましによってルナは元気を取り戻すのですが、今度は飛羽真が「俺があの時約束を破っていなかったら……」としゅんとしてしまいます。
そして、ここまでどんな苦しい状況にあってもただの一度も弱音を吐かなかった飛羽真がボロボロと涙を流しはじめ、声を震わせて「俺は……俺は……」と繰り返します。
ことばを生業とする飛羽真がひとことすら紡ぐこともできずに泣いている姿は、胸に来るものがありました。

蓮の言うとおり、飛羽真はずっと強かったんです。たぶん最初から。いつも強くて、やさしくて、まっすぐで。まるで超人のようでした。
いったい彼は、どこでなら弱った姿をさらけ出せるのだろうかと思っていたのですが、幼馴染3人がそろったときにやっとそれができたのですね。

そして、ここでかかっている劇伴がすごくいいんですよね……。切なくて暖かくて、視聴者も涙を誘われます。ずるいよ……こんなん泣くよ……。

このシーンの繊細な空気感をぶち壊しそうなので書くかどうか迷ったのですが、オタク的に言わせてもらうと「顔のいい男性が泣いている」ってやっぱりいいもんですね(しみじみ)。よしよししてあげたくなります。でももちろん、その役目は賢人とルナのものです。ふたりとまた会えて本当によかったね、飛羽真……。キュンキュンを通り越してギュンギュン(?)しながら3人を見守っておりました。

8.44章の特殊ED

44章のEDはいつもと違い、少しばかりの日常の風景と、最終決戦のために集結する剣士たちの姿が描かれています。こんなんダメですって。また視聴者の涙腺ぶっ壊す気か……。
剣のコンディションを確かめる大秦寺さん、上条さんと隼人さんと三人で写った写真を見つめるソフィアさん、時間ギリギリまで鍛錬を積む蓮、そらくんの寝顔を眺める尾上さん、芽依がくれたピンバッジを手に覚悟を決める倫太郎……。もちろんみんな負ける気はさらさらないと思いますが、もしかしたらこれが最期かもという思いはどうしてもつきまとうわけで……。あああ……。
最初は人数が少ないですが、歩みを進めるうちにはじめは敵対していた神代兄妹や、ソードオブロゴスには戻らなかった蓮も合流し、九人の剣士が集結します。早朝の陽光の下、ストリウスの塔へと向かう彼らの後ろ姿のなんとかっこいいことか……。エモい。エモすぎる。ソフィア役の知念里奈さんが歌う挿入歌「The story never ends」、これがまたいい仕事してるんですよね。戦いの宿命を背負った剣士たちの悲哀のようなものをひしひしと感じます……。

9.45章 飛羽真、速筆すぎ問題

これは単純に飛羽真スゲーな!!!ってなったところなんですが、飛羽真あまりにも速筆すぎませんか??
45章では無人の「かみやま」に芽依が現れ、飛羽真が残していった「エターナルストーリー」の原稿を発見します。

えっっっ!?!? 剣士としての戦いが激化する中、長編小説を執筆する暇なんてどこにあったんだ!?!?!?

さすが、世界を救った文豪は違いますね……。丸1年かけて、消えてしまった人たちを全員救うための物語を綴った飛羽真ですが、彼でなければもっと時間がかかっていたかもしれませんね。

そしてこの芽依が「エターナルストーリー」の原稿を読むシーン、目に留まるのは「終焉」「破滅」「絶望」とマイナスな言葉ばっかりっていうのが意味深ですよね。どんなにつらくても、絶望しても、物語は終わらない。そのままでは終わらせない。永遠に続いてほしい。そういう願いが込められた作品なのでしょうか。

そういえば、劇中に登場する飛羽真の原稿って全部内藤さんの直筆なんですよね。
筆跡はその人の性格や人となりを表すといいますから、そういう角度からも役と一体化して演じてくださるのはいち視聴者として大変嬉しいです。
さらさらっとした書きぶりが、常日頃から星の数ほどの文字を綴っている小説家らしくてとても好きです。

ずっと思っていたのですが、現実世界でも神山飛羽真先生の作品を出版してくれないかなあ……。判明しているだけでも「ロストメモリー」「エターナルストーリー」「剣に生きる」などの作品がありましたよね。
言い値で買うから全部読ませてほしい(切実)

10.45章の飛羽真の服装

別に45章に限らず飛羽真はいつも超オシャレさんなんですが、最終決戦に赴くのにこのドット柄のフリフリヒラヒラしたブラウスを選んだんだと考えるとめっちゃ可愛くないですか???
これが飛羽真の勝負服ってことなんですかね……?

いつも思ってたんですが、この人、何着ても本当によく似合いますよね。上背があるし、脚が長くてめっちゃスタイルいいし。ちょっと背伸びした服を着ると「服に着られる」という現象が起こりがちですが、そういう悩みを知らない男ですね……。どピンクでフリル付きのシャツとか着てたこともあったし、しかもそれも完璧に着こなしてたからな……本当に敵いません。

てれびくんさんが販売していたセイバーの十冊撃BOX、再販でなんとか買えて嬉しくて小躍りしたんですが、中でも一番楽しみなのは「神山飛羽真ファッションスタイルBOOK」だったりします(そこは飛び出す絵本とかじゃないんかい!!!という特大ツッコミが聞こえてきそうですが……)。
いったい誰がこの企画考えたんですか??? 天才ですね??? だってこれ実質、神山飛羽真の写真集ってことになりますよね? 公式が需要を完全に理解している……。
オシャレすぎる飛羽真が眩しくて直視できないかもしれないことだけが心配です。

11.46章・47章の「俺は英雄なんかじゃない。ただの小説家だ」

①の項でも書きましたが、私は飛羽真のこのセリフが大好きです。
飛羽真のことを英雄だ英雄だと言い募るストリウスに対して、46章と47章でそれぞれ言っていた言葉ですね。
誰もが自分の人生の主人公で、自分もそうやって生きているに過ぎないただの小説家なんだと……。
ストリウスにしてみれば、というか飛羽真の周りの仲間たちや視聴者ですら、誰がどう見たって飛羽真は英雄なんですよね。
どんどん強くなるし、何回も奇跡を起こして何回も世界を救っちゃうし。でも、本人はそれを英雄的行為だとは思っていないところが飛羽真の愛すべきポイントだと思います。

46章でストリウスが言った「私の英雄」は、世界を美しく終わらせてくれるという意味での「英雄」でしたが、47章での「やはりあなたは、私の英雄だ」は、「物語の力で世界を救い、自分の心も救ってくれた」という意味での「英雄」だったのかなと思います。
だからこそ、46章では声が割れるほどに叫んでいた「俺は英雄なんかじゃない! ただの小説家だ!!」が、47章では穏やかな声色の「だから、俺は小説家だ」に変わったんですね。このシーンで、メギドだった人たちも含め、本当にみんな救われたんだな……と胸が熱くなりました。

12.46章 クロスセイバーが剣のエンブレムをスライドさせる動き(44章ぶり2回目)

またそれかよ!!!と言われそうですが、どうもこの仕草に目が行きがちなんですよね……。
今回は刃王剣クロスセイバーは地面に置いてるわけではなくちゃんと手に持ってるんですが、二刀流なのでエンブレムをスライドするときに火炎剣烈火の柄を使うんですよ!!!!!それがもう本当にかっこよくてかっこよくて!!!!!
息を吞むような鍔迫り合いの中、余裕のなさそうな戦い方をしているのがなんというかとても……いいですね……

ちなみにその少し前の、水勢剣流水と雷鳴剣黄雷の二刀流で戦うシーンもすごく好きです。くるんくるんって剣を回す動作がとても流麗でうつくしいですね……。
浅井さんあなたって人は……どれだけ視聴者の目と心を奪えば気が済むんですか……??

13.47章のプリミティブドラゴンの仕草

飛羽真がプリミティブドラゴンに連れられて大穴から舞い戻った後の戦闘シーンです。
プリミティブドラゴン状態のセイバーは、野性味にあふれ獰猛さを感じる動きで数々の視聴者の心を鷲掴みにしてきていることと思いますが、ここの火炎剣烈火をねっとり舐めるような仕草、特にヤバくないですか???
えっなにそれなにそれ……プリミティブドラゴンってドラゴンの子どもでしたよね?? なんだその艶さえ感じるような大人っぽい立ち振る舞いは……。
ワンダーライドブックが力を失い、強制的に変身解除されて膝から崩れ落ちるその瞬間まで、プリミティブ浅井宏輔を堪能できて大満足です。

14.47章の裏話動画

47章の、ストリウスを撃破したあと飛羽真が消えてしまうシーンでの裏話をされるお三方です。
好きポイント10.のところで述べた飛羽真のドット柄のフリフリヒラヒラの服はこれですね。

内藤さんの「肉ちぎれるかと思った」発言に思わずええっ!?となりました。
そんなに痛かったのか……。そこまで力んでしまうほどみなさんが本気で撮影に取り組まれていることが伝わってきて、なんだか胸がいっぱいになりました。

そういえばリバイスの確か37話だったと思いますが、大二が一輝の胸ぐらを掴むシーンの撮影で、一輝役の前田さんは胸に本当にアザができたとおっしゃっていましたね。仮面ライダーの撮影って、きっと私たちが思っている何倍も過酷なのだと思います。みなさん体を張って一生懸命作品を作ってくださっているのだなあ……。

そのあとの泣いた泣いてないトークだったり、「コンタクト両目なかったので何も見えませんでした」のあとの山口さんの超キュートな笑顔だったり、わちゃわちゃした空気感がたまりません。
ソードライバー組のお三方はそれぞれ演じられているキャラクターも大好きですし、もちろん素のキャストさんも大好きです。みなさん本当に魅力にあふれた方々です。
一年も遅れてしまい恐縮ですが、本当に、本当にお疲れさまでした。飛羽真、倫太郎、賢人の人生を生きてくれたのがあなた方で本当によかったです。お三方に心からの感謝を。

15.47章 ワンダーワールドの飛羽真の家

ワンダーワールドでの一年間の執筆を終えた飛羽真が玄関を出て、家の前で伸びをします。
なんか見たことあるぞこの景色!と思ったらOP映像にありましたね!
初期のOP映像のときから映っていた場所ですが、これワンダーワールドにある「ファンタジック本屋かみやま」だったのか!!! まさか最終章で回収される要素だったとは……
わざわざ「かみやま」をそのまま建てるあたり、やっぱり慣れた環境で執筆したかったんでしょうか。
でも、新しいワンダーワールドは、以前のワンダーワールドとはちょっと違う眺めですね。人を作るワンダーワールドではなく、人が作るワンダーワールド……見た目は異なっていて当然かもしれません。

16.増刊号 お兄様から倫太郎への気持ち

タイミング悪くノーザンベースにやってきた神代兄妹が、「顔を貸せ」と倫太郎を連れ出します。何かと思えば手合わせしてほしいとのこと。
戦いが終わったあとのシーンでは、お兄様が地面に膝をつき、倫太郎は立ったままでした。お兄様も「お前は強いな」と言っているし、倫太郎が勝った説が濃厚ですかね。ですがまあ、勝敗はどっちでもいいのです。
剣を交えた後、お兄様はようやく素直になって「今まで悪かった。新たなマスターロゴスはお前のような男がなるべきだ」と尊敬の念を露わにします。
「マスターロゴス」という存在に絶対の忠誠を誓い、仕え続けてきた神代兄妹。そんな彼らが、倫太郎にはマスターロゴスになる器があると認めたのが超胸熱です。わかってんじゃんお兄様~!!!
倫太郎は誰よりもソードオブロゴスを愛している人物ですから、本当に適任だと思いますね。
29章で「(歪んでしまった)組織を正したい」と希っていた倫太郎の念願が、ようやく叶うときが来ました。

17.増刊号の賢人

増刊号の賢人って、飛羽真に対してめちゃくちゃデレデレしてますよね。
一度は自分の命を投げ打ってでも助けようとした相手ですから、一緒に平和な日常を過ごせるのが嬉しくて仕方ないといった感じです。
バイスに詰め寄られた飛羽真を心配するあまり雷鳴剣黄雷を焦って取り落としたりとか、「飛羽真、大丈夫か」の声とか、もはや過保護なくらいですね……。
バッタデッドマンを撃破するときの「賢人!」「ふふっ……飛羽真!」のやり取りも最光すぎますね。「ふふっ……」の部分、なんですかあれ? 笑い声から愛情が滲み出ている……。

一方「かみやま」の玄関の扉が開く音だけで「賢人か!」と言い当てる飛羽真もなかなかのものです。幼馴染ってすごい(?)。

ラスト、「これからは自分の幸せのために生きてほしい」と飛羽真に言われた賢人が出した答えが「飛羽真の物語を世界中のみんなに届けたい」「だから本屋を手伝わせてほしい」なの、控えめに言ってヤバヤバのヤバでしたね???それが賢人自身の幸せだというのか……。おさなな尊い。万歳。

あと、関係ないんですが遠くから走ってくる五十嵐一輝、なんかとてもいいですね。リバイスもそろそろクライマックスというところでこの初々しい一輝を見ると感慨深いものがあります。
しあわせ湯のチラシをみんなに押し付けているのを見ると胸が痛みますね……。ちょうど今日の放送で、実家が銭湯であるという記憶すらなくしていることが判明したもので……ううっ……(涙)

18.増刊号 芽依ちゃん、倫太郎のこと頼んだよ

増刊号では、倫太郎が何度も芽依にアタックしようとしてことごとく失敗します。毎度毎度タイミングが悪い。倫太郎、恋愛のことになるとそんなふうになっちゃうのか……。
やっと「家族になってください!」と告げられたと思ったら「何言ってんの? 私たちもう家族じゃん?」と冷たくあしらわれる始末。なんかこの回の芽依、やけに倫太郎に手厳しいですね。
それでもラストはおそろっぽいカラーリングの服で2人そろって「かみやま」に現れ、なんだか楽しそうにしていました。
明言はされてませんが、これはくっついたってことでいいんですよね?????

おめでとう!!! 倫太郎おめでとう……!!! ふたりとも幸せになってくれ!!!!!!!!!!!!!

44章で芽依の手を握りながら「この戦いが終わったら聞いてほしいことがあります」と言ったときは、「り、倫太郎!? それ死亡フラグじゃないよね!?!?」とたいそうヒヤヒヤしたものです。
よかった。みんなが無事で本当によかった。新しい関係が追加されたふたりには、苦労してやっと手に入れた平和な世界を謳歌してほしいと思います。

そういえば、倫太郎は「この戦いが終わったら聞いてほしいことが……」と言っていたのに、飛羽真が現実世界に戻ってくるまでの一年間は芽依にアプローチをしなかったのでしょうか。
……なんで??? 飛羽真に義理を立てたんでしょうか??
飛羽真のいないところで飛羽真の担当編集と関係を進めるなんて……!! みたいな思考があったりして。倫太郎なら考えそうですよね。
それか、飛羽真が戻ってくるまでは戦いは終わっていないということなんですかね? どちらにしても律儀で健気ですね……。
飛羽真がいない一年の間の倫太郎と芽依の動向はとても気になるところです。

19.DX刃王剣クロスセイバー

ここにきて玩具への「好き!」です。
「DX刃王剣クロスセイバー」、いい玩具ですよね。発光がキレイだし、飛羽真のセリフがいっぱい収録されているし、短縮版の変身音とかも入っているし、非常にプレイバリューの高い一品です(こんなこと言っておきながら私は持っていないのですが……)。
セリフモードで起動したときに飛羽真が「クロスセイバー!」と名乗ってくれるのが大好きです。

搭載されている飛羽真のセリフの中で一番好きなのは、「めでたしめでたし!!」です。
私の覚えている限りでは、本編にはそのようなセリフはなかったと思うのですが、つねづね「物語の結末は俺が決める!!」と言ってきた飛羽真にぴったりです。
ほんと、めでたしめでたしになってよかったね……(涙)

20.ED曲「仮面ライダーセイバー」

最後の好きポイントはこちら。ED曲の「仮面ライダーセイバー」です。
セイバーのEDといえば、飛羽真、倫太郎、芽依の三人がこの曲に乗せてダンスをしますよね。
あのダンス、めちゃくちゃ踊りたくなりませんか……???
私は運動がとんとできない人間なので、ほぼすべてのスポーツが苦手です。ダンスも例外ではありません。全然覚えられないし、見本みたいにキレキレに動けないし……。
しかし、「仮面ライダーセイバー」のダンスを見ていると、踊ってみたくて体がウズウズしてしょうがないのです。

そうそう、46章のEDは特殊で、ずっと踊ってましたよね。
いつも挟まる別の場面の映像がなくなっていて、三人のダンスを最初から最後まで堪能することができました。やっぱりこのダンス楽しそうで楽しそうで……。お三方の表情もそんな感じに見えるのが最光です。
今まで見たことのなかった振り付け、「そこそうなってたんだ!!」とテレビに嚙り付いてガン見しました。

キャッチーでコミカルな動きや、本に何かを書きつけるような仕草、ジャンプしながらバッサバッサと敵に斬りかかるようなダイナミックな動き、そしてヒーローっぽい決めポーズ的な振りもたくさんです。
うまいことセイバーの世界観が振付に落とし込まれていて本当にすごい。

この曲の振付をされたのは、ダンサー・振付師のTAKAHIROさん。
アイドルグループなどの振付を多く担当されているすごい方です。
最近「関ジャム」という音楽番組でTAKAHIROさんが出演されている回を観たのですが、とてもおもしろくて魅力的な方ですね。ダンスに対する情熱がすごくて、その熱量に気圧されそうになりました。
それとは別の、もっと昔に放送された回ですが、「関ジャム」のダンス特集回でこのセイバーのEDダンスが紹介されたことがありました。確かそれを見て「へー、セイバーっていう仮面ライダー、エンディングで踊るんだ……」と知ったような気がします。当時はセイバーを観ることになるなんて、ましてやこんなにドハマりするなんて思いもしなかったので、自分が一番びっくりしています。

飛羽真、倫太郎、芽依以外のみんなが踊ってる姿も見られたりしないかなあ、しないよなあ、なんて思っていたら、そんなニーズにぴったりの動画が公式から上がっていました。どうしたセイバー、ちょっと大盤振る舞いすぎやしないかい???

主要メンバー全員でこのEDダンスをする「ダンスオブロゴス」なるすばらしい企画です。ご覧になっていない方はぜひ見てみてください。観返しても観返しても目が足りない神動画です。


それと、ED曲においてダンス以外で好きなことといえば、やっぱりカラオケで歌うとそりゃもうめっちゃ楽しいことです。
ラスサビの「かーめーんらー↑いだーせいーばーー」の「らー↑」のところが個人的に一番楽しいです。何度でも歌いたい。
あと、2番の最初は初めて聞いたとき「なんだなんだ!?!? 急に早口!!!!」とめっちゃびっくりしました。
あそこ、最後の方の「戦う」でいつも舌が回らなくて噛んじゃうんですよね。ちゃんと歌えるように早口言葉の練習します(勝手にやってください)。


好きポイント紹介はここまでです。
いかがでしたでしょうか。みなさんに共感してもらえるポイントがあったらすごくうれしいです。
とても長くなってしまいましたが、紹介しきれなかった好きポイントは実はまだまだあります。

特に内藤さんについて。
最近いろんなドラマなどで内藤さんの姿を見ることが増えて、そのたびに「あぁ……やっぱ好き……」となってどうしようもありません。
本当は「内藤秀一郎」だけでコーナーひとつ作りたかったぐらいです。
ぜんぶ織姫飛羽真のせいです。

そうそう、内藤さんと言えば、です。
この項の最後に、みなさんにお願いがあります。
この動画をご覧になったことがある方はいらっしゃるでしょうか。

(この動画はこの動画で死ぬほど好きなんですが、とりあえず今それは横に置いておきます)
ここから始まり、フォロワーの目標人数を達成するたびに出演者の方々でモノマネや芸人さんのネタのバトンをパスして現在まで来ています。
そしてフォロワーが9万人を達成したら次はいよいよ飛羽真もとい内藤さんが出演!!というところで終わっているんですよね。

えっそんな悲しいことあります…………!?!?
主人公だけ出てこないとか何!?!?そんな結末はダメだよ!!!!!

めっちゃ探したんですが、そのような動画は見当たらなかったので、きっとまだ9万人達成してないんですよね?達成してから減って今の人数になったわけではないですよね。

この動画シリーズの流れで行くと、きっと何かお笑いのネタをやってくれるはずなんですよ。これまでの皆さんがそうだったので。
……めっちゃ見たくないですか???
内藤さんがはっちゃけてる姿、あるいは恥じらっている姿、私は見たいです(悪い顔)。

私は、「フォロワー9万人達成したら内藤さんが出演」はまだ有効だと信じています。きっと「約束」を守ってくれると思います。なのでどうか、仮面ライダーセイバーの公式Twitterをフォローされていない方はよろしくお願いいたします。こちらのアカウントです↓

ちなみに、現状このシリーズ最後の動画である生島さんと岡さんの「年長空想ショートコント」、本当におもしろくて大好きです。机を叩いて大爆笑しました。
芸人さんの既存のネタをアレンジして披露されていた方が多かったのですが、このお二人はおそらく完全オリジナルネタですよね……?
急ごしらえとは到底思えないすごいクオリティだ……。本気でM-1いけるんじゃないか……???

話が逸れに逸れましたが、この項はこれで本当に終わりです(締まらないなぁ……)。

④私の好きな本を紹介!

それではここでちょっと趣向を変えて。
セイバーが物語のすばらしさを教えてくれる作品だったので、私の一番好きな本をみなさんにご紹介したいと思います。


重松清さんの「きよしこ」です。
重松さんといえば、ドラマ化・映画化された「流星ワゴン」や「とんび」など有名な作品をたくさん書かれている方ですね。
小学6年生の国語の教科書に載っている「カレーライス」の作者さん、と聞くとピンとくる方も多いのではないでしょうか。「ぼくは悪くない。」から始まるあの作品です。

「一番好きな本はなんですか?」と聞かれたら、私はいつもこの「きよしこ」を挙げます。

まずこの本で衝撃を受けたのは、本編が始まってすらいないまえがきの部分です。なんと、「とある手紙の返事の代わりにこの小説を執筆した」というのです。
プロの小説家がたったひとりに宛てて小説を書いてくれるのってとんでもないことですよね……?
どんな想いで手紙の返事ではなく本を書くことにしたかが事細かに綴られており、このまえがきだけでいつも胸が熱くなります。みなさんにもぜひ実際に手に取って読んでもらいたいので詳しくは書きませんが、ここだけでも読む価値がもんのすごくあると思います。

本編の紹介に入ります。
この小説は、とある「少年」の6歳から大学受験までの半生を描いた短編集です。
少年は幼い頃から吃音(特定のことばがうまく出ない)があります。何の因果か、自分の名前の発音を大の苦手としている少年の父親は転勤族で、しょっちゅう転校してはみんなの前で自己紹介をしなくてはならないのでした。
少年が日々の生活の中で出会うさまざまな人との一期一会の交流や、成長に応じた吃音との向き合い方の変化など、人間の心の機微がとても丁寧に描かれている作品です。作者の重松さん自身も吃音をお持ちの方で、まえがきによると「ぼくとよく似た少年を、主人公にした」とのことで、どこからがフィクションなのかわからないくらいリアリティにあふれています。

中でも私が一番好きなのは、表題にもなっている「きよしこ」です。
本のいちばん最初の一編である「きよしこ」は、少年が6歳のときのクリスマスの日のお話です。楽しいクリスマスのはずなのに、あるひとことが言えなくてパーティをめちゃくちゃにしてしまいます。そんなとき「きよしこ」が現れて……というお話です。
少年はまだほんの小さな子どもで、しかしだからこそ言葉がうまく出ないことのもどかしさ、沁み入るような切なさが心に押し寄せます。
私が本を読んで泣いたのはこの「きよしこ」が初めてです。大げさに言っている訳ではなく、本当に何度読んでも涙があふれます。というか本編を思い出しながらこの紹介文を書いている今も目頭が熱いです……。
もちろんそのほかの作品も粒ぞろいで、いろんな感情で胸がギュッとしっぱなしです。

人間誰しも、言いたかったけど言えなかった言葉や、言いたいけどぐっと我慢した言葉を抱えていると思います。私もそうです。なんであのときたったひとことが言えなかったんだろう……と今でも後悔することがあります。
吃音かどうかに関係なく、そういう経験のある方々には絶対に刺さる作品です。
「きよしこ」とは一体どんな存在なのか、そして少年がどんなふうに大人になっていくのか。ぜひ、皆さんの目で確かめてみてください。

⑤「全知全能の書」が形成されつつある現実世界

これがこの感想文の最後の項です。

何度目かの言及になりますが、セイバー世界ではそこに在るものや起こる事象がすべて「全知全能の書」にもともと記載されているのでしたね。自分の頭でひらめいたと思ったことや、自分の心が創造・想像したと思っていたことですら、です。
私たちが住む現実世界に全知全能の書はありませんが(私たちが知らないだけであるかもしれませんが)、似たようなことはすでに起きているのではないかな、と感じました。
この項では、またもやセイバー本編の感想ではなく私が個人的に考えたことを述べていきます。

長い歴史の中、人類はさまざまな創作活動を行ってきました。小説然り、イラスト然り、マンガ然り、歌然り。
そういう、これまで人間社会に蓄積されてきた膨大な量の創作物が、現実世界においての「全知全能の書」を形成しつつあるのではないかと思えるのです。

(以下、ちょっとややこしくなるので「セイバー世界における」には(セ)、「現実世界の話における」には(現)を付けます)

私が思う「全知全能の書(現)」というのは、今まで人類が創作活動の中で思いつき用いてきたアイデアやネタなんかをすべて網羅した「概念」です。
新たな創作物が生み出されるとそれが世界で唯一のオリジナルとなり、それ以降似たようなものは模倣と見なされるようになってしまいます。つまり、作品が生み出されるたびに「全知全能の書(現)」に新たなページが加わり、それは新しいアイデアではなくなってしまうということを意味しています。

ストリウスの言葉を借りれば、「全知全能の書(セ)」に記載されているものは、苦労して生み出したところで「模造品」であり「与えられたもの」でした。私が思う「全知全能の書(現)」も、すでにそこに記載されているのと同じものを生み出したら「模倣」「パクリ」「盗作」と見なされてしまうという点で、セイバー世界と現実世界はそんなに違わないのではないかなと思いました。

しかし、地球上では毎年、毎月、毎日のように、名作と呼ばれる新たな創作物が次々と産声を上げます。近頃エンタメの消費速度がどんどん速まっているとも言われていますね。
とてつもない勢いで生み出される多くの作品たち。それらは本当に、オリジナリティ100%で構成されているのでしょうか?

例えば、小説やアニメ、ドラマなんかでは、「よくある展開」「ベタな展開」というのがありますよね。女の子が朝ごはんのパンを咥えて「遅刻遅刻~!」と走っていたら曲がり角から現れたイケメンにぶつかって恋が始まったり、「俺、この戦争が終わったら結婚するんだ」と愛を語っていた兵士が思いを遂げることなく戦場で命を落としてしまったり、現実世界では冴えない社畜だったけれど交通事故に遭ったら最強になって異世界に転生したり……。これ、何かで見たことあるな、というような。
ゼロから創作したつもりの作品でも、他の誰かがすでに描いた作品と似通う部分はどうしても出てきてしまうはずです。個々の要素や展開だけで見れば、ほとんど世に出尽くしてしまっているのではないでしょうか。万人にウケる要素や展開は数が限られてくるという理由もあるでしょう。100%オリジナルで構成された創作物というのは、もう今後出てこないのではないかなとすら思います。
それでは、これ以上創作活動を行うことに意味はないのか? というと、答えはNOです。
飛羽真も言っていたように、作品を受け取った人の中に思いや感情が刻まれることにこそ意味があるのであり、独創性が完全であるかどうかは必ずしも問題にならないのではないでしょうか。

「よくある展開」「ベタな展開」が定着してきたのは、ベタだろうが何だろうが、「いい」ものは「いい」からです。その展開に抗いがたい魅力があるから、目にするたびに制御不能の感情が沸き上がるから、何度でも使われるのです。
私たちは、イケメンとぶつかって始まる恋に憧れるし、過酷な運命に引き裂かれた恋人たちのことを思って涙を流すし、今はブラック企業に囚われていてもいつか異世界に転生したら最強になってモンスターを統べる第二の人生が待っていると信じたいのです。

いわゆる「王道」と呼ばれるストーリー展開もありますね。音楽であれば「王道進行」と呼ばれる、数多くのヒットソングに使われているコード進行が存在します。それらを利用して作品を作るのは、もはやパクリではなく立派な手法のひとつです。

ただし、王道な作品が本当に王道なだけでは、きっとおもしろくありません。
先ほど、独創性が完全であるかどうかは必ずしも問題にならないと述べましたが、全部が全部既存のアイデアの流用だとそれこそただの盗作です。唯一無二の作品を生み出すためには、少しだけでもいいので他と違う輝きを持ったオリジナリティが必要になってくると思います。

ところで、セイバー世界と現実世界における創作活動には上記のように似た点もありますが、決定的に異なる点もあります。それは、セイバー世界ではどうあがいてもオリジナリティが得られないことが保証されています(こう書くと嫌ですね……)が、現実世界では頑張ればオリジナリティを見出せることです。

まだ誰も見つけていないアイデアを発見するのは非常に大変なことです。それができるのは、努力を積んでというのもあるかもしれませんが、天性の才能によるところが大きいのかもしれません。
ただし、まっさらな状態から全く新しい何かを生み出すことだけがオリジナリティではないはずです。既存のものと既存のものを奇想天外に組み合わせて新たなものを生み出すことも、立派な独創ではないでしょうか。「その発想はなかった!」というやつです。

例えば小説なら、同じ事物のことを表現するのだっていろんな言葉があります。「激しく燃え盛る炎」ひとつとっても、烈火、業火、猛火、強火、火柱など、実にさまざまな単語がありますね。
どれを使うか、どのタイミングで使うか、どう組み合わせるかを納得いくまで吟味し、推敲を繰り返し、苦心してやっと綴った文章はきっと唯一無二であるはずです。

既存のものの組み合わせから斬新さを生み出す方法は、それまでにどれだけ努力を積んだかが重要になってくる気がします。多くの既存の作品に触れ、吸収し、研究し、一度自分の中に落とし込むことで語彙・引き出しを豊かにしておくと、斬新な取り合わせも思いつきやすいのではないでしょうか。ここぞというときに、その人にしかない「味」が付加されたアイデアを繰り出しやすくなるはずです。

どちらの方法にしても、オリジナリティを練り上げるのは決して簡単なことではないでしょう。時間もかかるし体力も持っていかれるし、モタモタしていたら別の誰かが先にそのネタをやってしまうかもしれません。そうなったらそれまでの労力はパーです。
今後も時間の経過とともにおびただしいほどの創作物が生み出され、オリジナリティを見出すための隙間は小さくなっていくだろうと思われます。そう簡単に目新しいものを思いつくことはできなくなるでしょう。世界単位のネタ切れです。
ただし、人間の想像力がなくならない限り、オリジナリティを練り上げる余地が完全になくなってしまうことはないだろう、とも考えています。

これが、見出しを「『全知全能の書』が形成されつつある現実世界」とした理由です。「形成されてしまった」ではなく「形成されつつある」です。

創作物におけるアイデアはほとんど世に出尽くしてしまっているのでは? と上で述べましたが、「ほとんど」であり全部ではありません。それは今後星の数ほどの、いや星の数以上の作品が生み出されたとしても同じことなのではないでしょうか。
人間の想像力は大したものです。本の中には宇宙より広い無限の可能性が広がっているんですからね(飛羽真談)。思考の癖や方向性だって、地球上の80億人みんな違いますから、全員が本気を出してイマジネーションを膨らませたらすごいものが生まれそうです。

長々と書いておいて、結局オリジナリティはなくなるのかなくならないのか! どっちなんだい!?(なかやまきんに君風)という声が聞こえてきそうですが、私としては「なくならない」と考えています。「ALMIGHTY~仮面の約束」の歌詞にもあるように、「人はいつも物語を産み出す」のだと思います。そうであってほしい。ただしオリジナリティの確保は時間の経過とともに難しくはなっていくと思います。
現実世界でも「全知全能の書」は確実に形成されつつあるけれど、人間の想像力が尽きない限り完成・完結することはないだろうというのが私の見立てです。

その上で思うことは、とても大変な思いをしながらも努力を怠らず、わずかなチャンスをとらえてオリジナリティを生み出せる人が、そしてそれを楽しむことができる人が、クリエイターに向いている人なんだろうなあ、ということです。
私は努力することが苦手な人間なので、創作活動はあくまでも趣味止まりで生業にはできそうもありません(趣味でやっていることが悪いと言っているわけではありません。むしろ筆を執るのをやめていないことはちょっと誇りにすら思っています。私も一瞬だけですが小説家になりたいな~と思ったことがあったので、クリエイターとして生計を立てている方々は本当にすごいなということです)。

まだこの世にないものを生み出し、いつも私たちを楽しませてくれるすべてのクリエイターさんたちへ。
創作活動を続けてくださって本当にありがとうございます。あなたの作品で私たちの生活が豊かになります。あなたの作品が私たちの言いたいことを代弁してくれます。あなたの作品で私たちの心や命が救われます。これからも楽しみにお待ちしておりますね。どうかご無理だけはなさらず、身体と心の健康にはお気をつけて。今後ともどうぞよろしくお願いします。

そしてそして、何かをクリエイトしてみたいと思っているけれど、まだしたことのない方々へ。
私も創作に関してはペーペーなので変なこと言えないんですが、やってみるととても楽しいですよ! あなたも作り手側になってみませんか!? というお誘いです。
まずは思い切って形にしてみてください。どんなに素晴らしいものを想像していても、頭の中に閉じ込めている間は妄想にすぎません。それではあまりにももったいないです。これは、私に小説の書き方の手ほどきをしてくれた先生が言っていたことです(記憶があいまいだけど確かそうだったはず)(おい)。そしてもし作品が完成したら、信頼できる人や、同好の士に見せてあげてください。彼ら彼女らは、きっとあなたの作品を待っています。
ネットに上げるとなるとちょっとハードルが高いかもしれませんが、自信作はぜひ検討してみてくださいね。私も仮面ライダーの感想文などをnoteに投稿するときは毎回ドキドキですが、ひとつでもいいねやコメントなんかをもらえると飛び上がるほどうれしくて、創作意欲がどんどん沸いてきます。

……なーーーんて偉そうに語って大っ変申し訳ありません。そんな、人様にいろいろ言える立場では全くないんですが、何かを生み出すって楽しいですよ! やってみたらハマるかも! ということだけお伝えしたかったのです。
自分が好きだと思える作品を自分で生み出せたら最高ですよね。まずは自分の好みを詰め込んだ作品を作ってみるといいかもしれません。自分という需要が未来永劫約束されるのでオススメです。

おわりに

さてさて、とんでもないほど長くなってしまいましたが、仮面ライダーセイバーの感想(最後らへんは感想じゃなかったけど……)はこれで本当に終わりです。
ここまでこんな激重感想にお付き合いいただいた方には感謝してもしきれません。お読みいただくのに大変なお時間と労力を頂戴したと思います。読者の皆さまに優しくないつくりでしたよね……反省。
セイバーを観終わったばかりの、今このときの自分がどんな気持ちだったのか、未来の自分にできるだけ事細かに書き残したかったこともあり、こんなに冗長になってしまいました。
次はもうちょっとコンパクトにまとめられるように努力します。

最後にもう一度私の最推し動画でもご覧になって、癒されて(?)いってください。

はい好き!!!!!!! 妖艶!!!!!!!

そしてもう一度宣伝しますが、まだの方はどうか仮面ライダーセイバー公式Twitterをフォローしてください!!!!!よろしくお願いします!!!!!

この後、開封を我慢していたセイバー十冊撃BOXを、この感想文を書き終えた自分へのご褒美としてようやく開けようと思います。宅配のお兄さんから箱を受け取ったときのずっしりとした重みは忘れません。荷物と一緒に幸せを受け取りました(唐突な桃井タロウ)。
あれ、箱までめっちゃこだわったデザインになってますよね……。ファンタジック本屋かみやまは実在していました!!! 開けるのが超超超楽しみです。

それでは、本当にありがとうございました!
また会う日まで!

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