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【小説】終焉。僕は君らとこの物語を変えられるの、かな?7

第六章:豊穣の女神。そしてこの世界のお伽話。其の三

昔あるお城に一人の王子様が居ました。
その王子様は頭がよくて強い人でした。
ですが、そのような人でも悩むことがありました。
それは、毎日のように来るお見合いの話についてです。
何度断っても、しつこく手紙を出してくる貴族に対して王子様はうんざりしていました。
なぜ王子様はお見合いの話を断るのか。
それは、簡単な話です。
王子様は貴族の思惑おもわくを知っているからです。
貴族の人達は、どうにかして娘をとつがせ、自分の立場を安定させようとしているのです。
このように自分のことばかりしか考えていない人を王子様は嫌いました。
そんなある日です。
王子様が暮らしている王国で緊急事態が起こりました。
それは、人を襲う悪い魔物が大群で攻めてきました。
そのせいで国は大混乱になりました。
王子様は強い人なので、戦いに行きました。
町に着いた時、王子様は違和感を覚えました。
悪い魔物が見当たらないからです。
王子様は意を決して大勢の兵の中から強い三人の兵を連れて、町の外に向かいました。
王子様はすぐ異変に気づきました。
町の外に近づくにつれ、魔物死体が現れ始めたからです。
異様にもその死体には木の根が巻かれていました。
町の外を出て王子様はあるものを見てハッとしました。
それは…一人の少女が呆然と立っていたからです。
王子様は一瞬警戒しましたが、すぐに気づきました。
この人は女神様なんだと。
そして王子様は女神様に感謝をするために近づいていきました。
王子様は彼女に近づくと跪いて言いました。
女神様は王子様を見て思いました。
(綺麗な金色の髪…強い志をもった目…あれ…この気持ちはなんなんだろ…)
「あなたがこの悪い魔物を倒してくれたのですね。感謝します。」
そして、王子様は下に向けた顔を上げて女神様の顔をみて思いました。
整った顔つき、綺麗な銀色の髪、体は細く、色白の肌。
(きれいだ)と王子様は今までにないほどの恋心を覚えました。
王子様は思いました。この人と結婚したいと。
「女神様どうかお城に来てくれませんか?感謝を伝えたいのです。」
そう言い王子様は女神様を連れてお城に向かいました。
向かている途中に王子様は話しました。
「女神様。僕の名前は、アルク・ルミナです。この国の第二王子です。お気軽にアルと呼んでください。ところで女神様お名前はあるのですか?」
女神様は首を横に振りました。
「そうですか…でも名前がないのはかわいそうですね。もしよければ僕が名前を付けてもよろしいですか?」
女神様は嬉しそうな顔をしながら頷きました。
「では、イベリスはどうでしょう?」
「イベリス…いい名前!ありがとう。」
王子様は花言葉で初恋とういう意味のイベリスという名を付けました。
そして王城に着き女神様は、広間に行き国王様とお話することになりました。
「我の名はリガル・ルミナスだ。女神様よ、この国を救ってくれたことに感謝しています。救ってくださったのに上から目線で話すことをどうかお許し願いたい。この国は貴女様を歓迎します。もし女神様がよいのでしたらこの国に住んでくれても構いません。」
途端イベリスは笑顔を浮かべ
「国王様。そのお言葉ありがたく頂戴します…」女神様は控えめな優しい声で言いました。
「父上。いえ、国王様。もしイベリスが良いのであればですが、彼女を我きさきとして迎え入れたいのですが。」
途端周りに居た貴族たちがざわめき始めました。
「アルよ。いくら何でも…」国王様も困った表情を浮かべていました。
アル王子はイベリスを見ました。
そのイベリスは両手を顔を押さえ赤くなっていました。
「イベリス。僕は君のことが一目で好きになった。最初はお付き合いからでもいい。僕と結婚してくれ。」
王子様は女神様に手を差し伸べました。
女神様は嬉しそうな顔をし、手を取りました。
(これは、恋だったんだ…えへへ…)
広間でのプロポーズ。このお話は後世に語り継がれることになるでしょう。
そして、王子様と女神様は1年後結婚し幸せに暮らしましたとさ。
おしまい。
*     *     *
というのが、語り継がれる為に改変されたお話。
でもね…こんな簡単な話じゃないんだ。
簡単な幸せって存在しないんだよ。
「***。力を完全に使えるようになる為に全部思い出せてあげるからね。」




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