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「花束みたいな恋をした」私的考察と自分語り

花束との出会い

予告見ただけで泣けるから。といった友達の言葉と出てる俳優さんが好みだし、話題だから見てみようと思って出会った作品。泣ける泣けると言うけど私は泣かないだろうなと謎の自信があった。延び延びになった予定のおかげで結局映画館では見れなくてしばらくしてゲオに並んだ作品を見かけて借りた。1人でパソコンの前に陣取り炭酸ジュースを飲みながらスタート。セミの音がうるさい夏真っ盛りの日。ゴーゴー言うクーラーでキンキンに冷えた部屋の中だった。

昔の恋愛美化期を思い出す

結果…わたしは泣かなかった。泣けなかった。最近涙脆いのになと思いつつ見終わった1番最初の感想はもう一度みたいだった。1人で誰にも邪魔されず途中で止めることなく見たのに。私はいつの間にか物語を追うよりも過去の恋愛を思い出すことに囚われていたらしい。大学生になって初めての恋だった。恋する自分に酔って恋に恋してた。お世辞にも綺麗な恋愛だったなんて言えるものではなかったかもしれないけど、自分で終わらせた恋だったけれど案外いい経験だったじゃんと思える日々だったな。

しょっぱなから思い当たることが多すぎる

ここでやっと花束みたいな恋をした(以下花束と略す)の考察はじめます。主人公麦くんと絹ちゃんの運命的な出会いからスタートする物語。いやこんなことありえなーいと思いがちだが案外ある(と私は思う)。私の自論だけど恋すると盲目になるから記憶も勝手に書き換えられるし、フィルターかかって美化される。相手が好きというなら興味のない音楽も好きかもって思うし、なんなら相手より聴きまくって詳しくなるかもしれない。麦くんと絹ちゃんの場合はほんとに趣味とか思考がシンクロしたんだと思うけど。あと最初の方によく飛び出す若干ひねくれた、マウントとる感満載の麦くんトーク。あれがエモい。何がエモいかって言うと「自分の価値観=優れてる」と本気で信じてるとこが若いなって思う。自分はこの世界を人とは違う角度で見てますから!わかんないでしょ!まぁわかんないならさぞかし非凡な人生なんでしょうね!って心の中で思ってる感じかと。大学に行く意味って何。独学で教科書読んでた方が効率よくね。とよく言っていた元彼を彷彿とさせてあーね!そういう時期ねとツッコミ入れながら見てた笑。

急な自分語り笑

突然の私事だが高校生のとき、そして大学入ってすぐの頃は本気出せばなんだって出来ると思ってたし、自分の才能とやらを信じてぶっ飛んだ行き方するのがカッケーと思ってた。現実なんて見たくないし、誰でも出来ることをやり続ける人生なんて嫌。のらりくらりで何とかなると本気で信じてた。だからこそ一般的なレールに乗るのに抗い続ける男がかっこよく見えた。そのうち大人になるとは?とか暗黙のルールとか、人生そう甘くないっていう現実に押しつぶされて、自分の非凡が証明されるのが嫌で「俗に言う真っ当な人生のレール」をすすんでエリートと言われることで自己肯定感をあげるようになった。勉強は裏切らないって言う耳にタコできるほど言われた言葉の支配下に入り同フィールドの誰よりも上に立つことにとらわれた。まぁ今となっては結果オーライで満足はしてる。

麦くんと絹ちゃんのすれ違い

はい、自分語り終了。で本題に戻ると、思考も趣味もシンクロ。まさに運命な麦くん絹ちゃんがいつの間にかすれ違って最終的にお別れするんだけど、私は結構早い時期からすれ違ってんなと思う。時折出てくる2人の靴が並んだカット。お互いにプレゼントして笑いあった象徴のイヤホンがお互いの存在を遮断する代物になったカット。無造作に(でも過ごした時間の積み重ねがある)積まれた本がほんとうに無造作に(雑に)積まれたカット。すれ違う瞬間の証拠を集めたカットが沢山あるからだ。最初の1つは海のとこかなっと思う。麦くんが勝手にご飯買いにいなくなるシーン。歯車がずれ出すきっかけになると思う。たった一言声をかけていれば心配も不安も無くなるのにな。小さなことだけど小さな違和感、不信感。やがて大きな溝になる。時間がたって思い出す時あの時もさぁ…っていうエピソードにピッタリになる。でもさ、きちんと話せる時間をとれて(最寄り駅から30分歩く道)、お互い相手を想う気持ちが消えなくて(眠った絹ちゃんに毛布かけたり)、ほんの少しでいいから生活に経済的・精神的余裕があって、なんでもいいから2人で笑える時間(同じ漫画読んで泣いて、ガスタンク見に行って、一緒にご飯食べて…)があって。それだけで良かった。それさえ続けば傍から見れば大学生の恋愛じゃんって言われる絶滅危惧のような恋が、愛が続いたんだろうな。

麦くんという男の子

就職前の麦くんは男の子。例えばさ、ミイラ展の話聞いてPCで夜まで検索してたっぽいとこ。ミイラ展の待ち合わせに走ってくるとこ。ミイラ本を店員さんに見られてそっと閉じてあげるとこ。毛布をそっと絹ちゃんにかけるとこ。絹ちゃんの写真愛おしそうに見るとこ。敬語なとこ。歩幅合わせるとこ。話が合うからかもしれんけど絹ちゃんの話途中で遮ったり否定しないとこ。告白するまでの麦くんは一途に恋する男の子。3回ご飯行くまでに告白しなかったら友達のまま。ジンクス気にかけてカウントダウンするとこ。ファミレスからの帰り道横断歩道渡ってまた渡るとこ(絹ちゃんと出来るだけ長くいたくて帰り道じゃないけど送って行ったのかな?話すの楽しすぎていつの間にか絹ちゃんについていっちゃったのかな。この赤信号なかったら初キスここじゃないのか。こういうコミュニケーションは頻繁にしたい方です。というとびきり可愛い絹ちゃんのセリフには繋がらなかったなとか考えた)。ワンオク聴くって聞かれて聴けます。となんだか上から目線で答える正直なとこ。男の子の一面が消える度に麦くんは成人男性になって言った。それがなんだか切なかった。それでも絹ちゃんを犠牲にしてまで夢追いかけなかった麦くんは社会の洗礼に負けたのかもしれないけど、絹ちゃんを守るナイトであり続けたんだとおもう。

絹ちゃんという女のこ

「このままこういう感じが続くんだろうなと思ってた。」このセリフから感じる通り、絹ちゃんはいつまでも「世間の常識<楽しいこと」なのだ。芯が通った女の子であり続けることはなかなか難しい。人に流されることが多い私にとって安定のレールから外れることを選べない私にとって絹ちゃんの生き方はかっこいいと同時に少し嫉妬する。いつまでも好きなことを好きであり続けるのは難しい。日常の煩わしい出来事に飲まれたり、別のことで頭いっぱいになって大切な何かを失っちゃう。自分を構成してた好きなことが次々に抜け落ちて、必死にでもワクワクして追いかけてた趣味がいつの間にか消えてしまっている。悲しいけどそんなもんだ。でも絹ちゃんは好きな映画や本を無意識に同じように追い続けてる。

気になること…

①長蛇の列で行けなかったハンバーグ屋さわやか。あれさあの後、麦くんは上司と行ってたけど絹ちゃんは誰といったんだろうね。1人で行ったんかと思ってたけど、後々浮気したことあるんっていう話出てきて。えっもしかして…。と気になった。

②麦くん、絹ちゃんの持ち物チェック柄が多いけどこれは誰の好みなのかな。何か意図があるのかな。上着も服もカーペットも布団カバーもマフラーもソファーもチェックだった。

最後に

バールのようなものが好きな言葉といった麦くん。何か元ネタのようなものがあるのか気になって調べた。「〜みたいなもの」つまりそのものでは無い。

花束みたいな恋をした。つまり花束ではない。麦くんと絹ちゃんの恋は花束みたいなものであり花束ではない。なんか哲学的でよくわからんなってきたけど、それでも私はまだ花束みたいな恋を探してる。いつか出会う運命の恋とやらはまだ飽きずに求めてる。だってその方が恋してるって感じるから



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