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【宗教2世ごろごろケア日記14】宗教2世支援の方法と実践


 宗教2世のケアや支援について考えるとき、実は大きくわけて2つの軸が存在することがわかります。

 それは

■ 現在、親が宗教に属していて、その環境下にあるこどもとしての2世

■ 自分は成人したり、一定の自立をしているが、過去において宗教環境下にある家庭に属していた2世

の2つです。

 もちろん、細かく分類してゆけば、「自分は成人しているし離れているけれど、現在進行形で両親は宗教に属している」などの場合もあるので、上の分類はほんとうにざっくりとした分け方なのですが、ポイントは


■ 外部情報にアクセスしにくく、外部が介入しにくい2世

■ 外部情報にアクセスでき、自分で行動ができる2世

の2つに分類できる、ということだと考えます。


 さて、現在の宗教2世の支援については、実は後者が主になっています。

 インターネット上の情報や、自助グループ、あるいは支援団体などの「外部情報」にアクセスできるのは、いわば「大人」になった2世が主であり、カウンセリングにしても、精神医療にしても「大人」になった2世でないと受診することができません。


 ぶっちゃけ、現在リアルに宗教環境下にある家庭の子女は、自分から外部に助けを求めることもできないし、外部から親の保護監督権という網を破ってその家庭に介入することはとても難しいと言えます。

 そのために政府や社会などに訴えている2世は「制度として宗教行動による虐待等を制限しなくては意味がない」と言うわけですね。

 なので、そもそも論としての「違法(異常)な宗教活動そのものを止めさせるべき」というアプローチの仕方は、やり方としては「あり」だと思います。


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 さて、後者に相当する「自分で行動できる2世」については、2023年時点で、少しずつその支援方法が具体化されるようになってきました。

 まだまだ実際には不十分ですが、それでもそうした「存在」が発見され、それに対しての支援策が「考えられる」状況になってきたことは喜ばしいことと思います。

 これまではそうした2世について「存在そのものが未発見」であり「自分がそれに該当することも気付かなかった」のですから、山上事件以降の社会の変化は、相当に早いものであったと実感します。

 特にツイッターやブログなどの活動は活発になっており、多くの宗教2世が、自分の意見の発言や、自己の再発見に関わるようになってきたように感じます。


 とはいえ問題なのは、「実際にまだ宗教環境下にある2世」のほうで、彼らは外部へのアクセスも教義上制限されていたり、あるいは親の管理下にあることで、情報入手が困難になっていることが予想されます。

 そして、現実問題として彼らが声を上げられないことで、外部からも「未発見」状態が続いており、なおかつ、外部からの介入手段も限られている、ということが生じているのです。


 とくにカルト宗教については顕著なのですが、構造的に

■ カルト側が発信する情報は膨大で、つぎつぎにそれに引っかかるカモが続出する

ということが生じています。 それに対して、

■ 対カルト側は、情報発信が追いついておらず、イタチごっこになっている

のが実情でしょう。



 具体的な例で言えば、あるカルト宗教では

「日曜日ごとにすべての家にピンポンして教義について伝達して回っている」

のですが、逆に言えば

「カルトに気をつけてくださいね、とすべての家にピンポンしてチラシを入れる」

なんてことは、行政であっても、誰もできていません。もうこの時点で負けているわけですね。


 あるいは某カルトでは、

「多くの大学に、その信者を増やすためのサークルを作っている」

のに対して、

「そうした信者獲得作業をやめさせるサークルは、ほとんど存在しない」

という実情があります。これも負けています。

 多くのカルト宗教では、なんらかの出版物を作って頒布したり、チラシや小冊子を配布していますが、「反カルト出版物」を自費で配りまくっている団体や個人はおそらくいないか、いてもごく少数だと思うので、その面でも負けています。


 要するに、投入する情報の物量では、基本的に反カルトの体制は常に「カルト側に負けている」ということに気づく必要があるわけです。

 ということは、なすべきことは単純で、

「反カルト側は、情報の面でカルトを上回る必要がある、あるいはせめて同じくらいの土俵に立つ必要がある」

ということになります。


 わたし武庫川が、noteやtwitterなどで宗教2世に関する情報を立て続けに、かつ膨大に発信しているのは、こうした理由によります。向こうより多く、一人でもたくさんの人にこちらの情報が届くことが、大事だというわけですね。

 これは別に宗教に限らず、マルチ商法や詐欺的ネットサロンなどの問題と対抗するときも同じです。被害の存在を明らかにする情報量が、ある程度投入されないと、対抗するにも話にならないのです。


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 その意味では、「宗教環境下」にある家庭の子女に情報を届ける一番効率がよいツールは「学校」(あるいは公民館など公的機関)をいかに巻き込むかです。

 たとえば、すべての学校に「宗教虐待」についての啓発ポスターを貼ってもらうとか、こどもたちがいつも持って帰ってくる「お便り」のなかに、「宗教虐待」についての人権チラシを入れてもらうとかの活動が想定できるでしょう。

 なんとかしてプッシュ型で、必要としているはずのどこかのだれかに、情報を届ける必要があるのです。

 支援の受け皿を作って待っていることも大事ですが、支援が必要な人を探し回るような、そんな力も必要かもしれません。

 もちろん、ポスターやチラシを作る、入れてもらうエネルギーは膨大なものです。費用もかかります。

 それを反カルト側が、どこまでどれだけやれるか、という話だったりします。

(しかし、カルト側の方はそれを実際にやれちゃうのですね。神のために、信仰のためならお金も出せるし、労力も出せるわけです)


 そのように考えてゆくと、やるべきことややれる対抗策は、いくらでも出てくるのですが、実はそれを「やれる動機やエネルギー(お金)がどこの誰にあるのか」という問題になってくるわけです。


 これが意外とものすごく大きな話で、彼らは神のご加護のためなら喜んでやれるけれど、僕たち私たちは何のためにどこまでやれるか?ということを突きつけられてしまうわけで。

 彼らが神に献身できるのであれば、僕やあなたは「宗教2世の未来のために献身できるか?」ということなのですね。

 さすがに、大半の人は、そこまで宗教的に、信念を持って何かの活動をすることは難しいと思います。

 だとすれば、宗教2世の支援というのは、実は「身近に、あなたの周辺で、できることをやっていこう」ということなのだと思います。

 あなたの知り合いにそうした人はいないか?とアンテナを張ってみたり、関わる人たちをほんの少し「虐待が隠れていないか」という目線で見ることも大切です。

 ほんとうにわずかの力でよいので、少しでも多くの人が関われば、多少の結果にはつながるだろう、ということです。


 実はそうした小さなことが、いちばんの宗教2世に対する支援の実践だったりします。


 私は妄信的に宗教2世の未来のために「すべてを献身する」わけにはいきませんが、ほんのわずかでも、自分にできることはやってみよう、と思っています。

 もし、読者の中で「自分こそはすべてを献身して、その活動に命を捧げる」という人がいれば、ぜひご連絡ください(笑)

 それはそれで尊重いたしますし、そのための方法をいくらでも一緒に考えてサポートいたします。


(おしまい)


 

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