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「脱宗教」の教科書7 あなたはなぜ生きているのか?


 この回は、前回のつづきです。 もしお読みでない方がいたらぜひ、先に前回をお読みくださいませ。

 さて、自分の歴史、あなたに至るまでの流れを知っていたら、「新しく途中から出てきた宗教や教祖の言説」に振り回されることなく、もうすこし冷静に捉えることができるのではないか?と思うのですが、残念ながらみなさんやみなさんの両親は、

「無知、知らない」

ゆえについつい「宗教などの勧誘者」の言葉を信じてしまうのだ、というお話でした。

 そうなってしまう原因、あなたが「知らなかった」原因というのは徳川家康のせいだ!ということでしたが、それに追加して、もうひとつの原因があります。

 それは、江戸時代が終わり、明治時代になって日本の人口が爆裂して増えた、という事実です。

 https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h24/hakusho/h25/html/n1111000.html

  このリンクは国土交通省が発表している公のものですが、わかりやすい図をひとつ引用しますね。


日本の人口推移

 この図は、あなたの人生にも、日本の国家の未来にも関係する、とても大事な図ですので、ぜひよーくみておいてください。


 ここから読み取れることは、まず、「人口が爆裂したのは明治維新のおかげ」ということです。それまでは、鎌倉時代からすこーしずつ人口は増えていますが、とてもカーブがゆるやかです。

 そして、享保の改革が「暴れん坊将軍・徳川吉宗」の頃ですから、江戸中期から幕末まで、ほとんど人口に変化がないこともわかると思います。


 この2つのことが「宗教」とどのように関わるかは、実はとってもシンプルです。江戸時代は村の人たちはその村のお寺に所属して「檀家」になっていました。ですから基本的にみな仏教徒です。神社に属していても、当時は「神仏習合」でお寺と神社は一体化していましたから、神社の神主さんや氏子でも結局はお寺に深く関係していました。

 じゃあ、江戸時代から幕末まで、どんな宗教があったのか?というと仏教しかありません。そもそも檀家制度は「隠れキリシタン」を追い出し、あぶり出すための制度ですから、キリスト教徒も表向きは「ゼロ」だったわけです。

 そして、明治維新までは人口も増えていませんから、日本にはその時まで「宗教問題」なんてざっくりいえばなかったのですね。基本的に全員仏教なので。

 ところが明治になり、欧米との交流によって宗教が自由化されます。そこでキリスト教が再び入ってくるわけです。あるいは天理教などの幕末新宗教がつぎつぎ生まれます。日本の宗教問題は、文明開化とともにスタートしたとも言えるわけですね。


 もうひとつ、恐ろしい話が隠れています。図をみると、鎌倉時代から幕末まで、それほど日本の人口には大きな変化はないわけですが、これは「日本の国土の広さが一定であり、農業を用いて食べることができる食料自給率から考えて、それくらいの人間しか養えなかった」から基本的に横ばいなんです。

 ではなぜ、明治以降は食料を増やすことができたり、食べさせられる人口を増やすことができたのでしょうか?
 それは歴史で習ったとおり、「北海道や樺太、満州に進出したから」です。

 つまり、植民地政策で、「よそに土地をゲットしにゆくことができるようになった」から、抱えられる人口も増やすことができたのです。

 この「増えた人口」というのは「昔であれば食い扶持がなかった人たち」です。もともとの村や集落では「ほんとうは食べさせることができなかった子供たち」を意味します。

 つまり、一家の次男や三男の家系が外へ出てゆき、本家を継いだ長男の家系は、昔からあまり人数は変わっていないということを意味しています。

 長男の家系は、お寺にひもづいています。代々のお墓もそのお寺につながっているので、宗教を変えることはありません。

 そうすると「新しい宗教に入ることができたのは、村からあぶれた人たち」ということになります。これは現代でもまったく同じで、どこかの田舎の本家を継ぐことができなかった次男や三男の家系の人たちが、「北海道や満州」に行くか、現代だと「東京などの都市」に行くかの違いだけで、ようするに「紐づいていた宗教から、放り出されているので、よその土地で新宗教にひっかかった」のだとわかるのですね。

 言い方は悪いですが、新宗教にとって「田舎から出てきたカモ」なんです。みなさんのお父さんやお母さんは、そうやって搦め捕られてしまい、新宗教に入信させられることになったわけです。

 (だから宗教問題の多くは、従来の田舎の寺や神社ではあまり起きません。せいぜいお墓の維持費が高いねん、ぼったくりちゃうか?くらいの話しか出てこないのは、本家の人たちは昔から困っていないからなのです)


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 そうすると、カルト宗教や新宗教の問題点というのは、実は「神様がいるのかどうか」とか「どれが真実なのか」とか、そこが問題なのではなくて、

「かつての領地、土地に紐づいていた日本神話の神々の子孫のうち、領地から離れざるを得なかった分家の人たちが、先祖からの伝承を失い、神話を失ってしまったこと」

がベースにある、ということなのです。

 なので、「あなたが今ここに生きている理由」について、新宗教は「神様があなたに命を吹き込んだのです」みたいなことを色々言うかもしれませんが、歴史的には

◆ 今では神話の神と呼ばれている日本の古い氏族がいて、ヤマト王権時代から各地に根づいた。

◆ それらの氏族が、天皇を中心とした中央集権国家にまとまっていった。

◆ あるいは皇室・豪族・貴族らの子孫が、各地へ赴任して領主となった。

◆ かつての領主同士が争ったり、土地を奪い合った結果、戦国時代になった。

◆ 信長・秀吉・家康によって、元領主の子孫同士の争いはストップさせられた。

◆ そのストップ時に、元領主の子孫がいた場所が、みなさんの先祖の【田舎】と呼ばれる場所であり、その土地の所有権をおじいちゃん、おばあちゃんが持っているのは、元領主の武将だから。

◆ けれど、その元領主の子孫を名乗れるのは本家の血筋だけだった。それ以外のこどもたちは、土地を受け継ぐことができず、また地方や海外の植民地へ移動していった。戦後は都市へ出てゆくことで、田舎から放出されていった。

◆ そしてあなたは、何も知らずに新しい土地で生まれてしまった。

◆ そしてあなたの親やあなたは、たまたま聞いてしまった新宗教にひっかかった。

ということだったのです。


 ですから正確には、「あなたが生きている理由」というのはどこかの「神様」のおかげでもないし、「教祖」の力でもないのです。あなたの先祖が田舎の領地にいたから、というのが限りなく正しいし、あなたが今恵まれていないのは、「本家から追い出されて、自分でなんとかせい!と言われた側の人間だから」ということなのです。

 この「自分でなんとかせい!」と言われた側の人間は、みじめだとつい思ってしまいますが、実は各地の領主となった人たちもみな「追い出された側の人間」です。もともとの立場は同じですので、安心してください。

 たとえば源氏や平家のおとうちゃん、おじいちゃんは天皇家です。でも天皇家では食い扶持を支えきれなくなったから、「源」や「平」という姓を与えられて臣籍降下(天皇家から追い出されて、皇位継承権を剥奪されること)させられちゃったのです。

 朝廷の仕事もないので「地方の役人の仕事だけ斡旋してやるから、あとは地方でなんとか自分でやってこい」みたいに放り出されているわけです。

 そのため、地方に行って「自分でなんとかしてやるわ!」と逆ギレした子孫たちは、朝廷の言うことなんか聞かず、自分たちで勝手に年貢を中央に送らずに溜め込んだり、新しい土地を開発して力をつけたりしてゆきます。

 それが「武士」なんですね。武士は本家を追い出された人たちの逆ギレした姿です。

 そして各地に自分たちの領地を囲い込み、互いに取り合いはじめると戦国時代になるわけです。

(あれ?なんか最初のほうの話に戻ってきましたね)


 ちなみにその頃の武士が信仰した宗教は、ざっくりですが「八幡大菩薩」と決まっています。軍神・武神と信じられた八幡神は「鎌倉の鶴岡八幡宮」を源頼朝が信仰したから、がスタートのようですよ。

 みなさんが武士を続けていたら、まあ、新宗教にはハマっていないでしょう。(ただし、戦国時代に浄土真宗とキリシタンはめっちゃ流行したので、一向一揆や島原の乱などに加わっていた可能性はあります)


 ここまで読んできたみなさんは、「はて?ところでなんでうちの家はこの新宗教を信じているんだっけ?」とわけがわからなくなることでしょう。

 ええ、みなさんが信じてきた新宗教やカルト宗教は、実はそれくらいのちっぽけな「空想」みたいなものだったのです。


(つづく)



 

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