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「脱宗教」の教科書4 〜宗教はポコポコ生まれる〜


 私は世をしのぶ仮の姿では、会社員をしています。今では会社役員ですが、建築業界のすみっこ暮しをしているので、いろんな建物と関わることが多いです。

 その中で寺社仏閣にかかることも多々あります。もちろん、一般住宅もあるのですけれど。先日は、とあるお城の整備に関わって、私がチョイスした部材がお城の建物に使われたりしています。

「大阪城建てたん誰か知ってるか〜」「豊臣秀吉やろ?」「違うわい、大工さんじゃ〜」というネタが昔からありますが、

「この城建てたの、俺!」

くらいには言えるようになりたいですね。


 さて、話は変わって、今度は「天理教」の建物に関わった話です。「黒住教」の建物もありました。もちろん、「八幡神社」とか「天満神社」の工事も関わったことがあります。そんな風に、日本にはたくさんの宗教上の建物がどこにでもあります。

 今日はそんな、「たくさんの宗教」についてのお話から入りましょう。


 今、国政も交えながら問題になっていのは「新興宗教」と呼ばれていますが、実はほとんどすべての宗教は「新興宗教」であり、宗教は常に

”ポコポコ次々に生まれる”

というのが真理真実、実態です。

 「キリスト教」がヘブライ人の信仰した「ユダヤ教」から派生したことは少し触れました。またそこから「イスラム教」も派生しています。

 キリスト教のうち、イエスの弟子たち直系のグループが「カトリック」です。そこから分派して「プロテスタント」が生まれ、今はそれからさらにたくさんの分派や新興グループが登場しています。

 インドでは「バラモン教」「仏教」「ヒンズー教」などが同系統の分派です。仏教の成りたちはおもしろくて、お釈迦様が悟りを開いた時、本当は

「この素晴らしい教えを独り占めしよう、ぐひひひ」

と思っていたのだけれど、

「あかん!みんなにもちゃんと教えたれや!」

と「ブラフマー」という神が現れて釈迦に言ったので、思い直すというシーンがあります。これを読むと、私なんかは天邪鬼(あまのじゃく)なので、

「え?釈迦よりブラフマーのほうが偉いんじゃん。ブラフマーさんのほうを信仰するわ」

と思ってしまいます。余談ですが、ブラフマーは「梵天」と書きます。耳かきのふわふわの部分ですね。


 まあ、そんな風に「新しい宗教には常に元ネタがあって、そのネタを改変して新宗教が増える」という流れがあります。これは宗教の宿命みたいなものでしょう。


 また、「苦しい時代には新しい宗教がポコポコ生まれる」という風潮もあります。日本の歴史を振り返ると、鎌倉時代に「鎌倉新仏教」と呼ばれる宗派がポコポコ生まれました。

 「南無阿弥陀仏を唱える浄土宗」とか、「念仏さえとなえればオールオッケーな浄土真宗」とか、「座禅とぽくぽくちーんな禅宗」とか、いろいろ誕生します。禅宗は一休さんでおなじみ。

これらは仏教的に時代が「末法」であり、貴族社会から武家社会へ転換する動乱期にこそ生まれたと言えるでしょう。


 幕末にも社会が動揺していたので、ポコポコ新宗教が生まれました。「天理教」「黒住教」「金光教」「大本教」なんかは全部この時期です。

 現代でも「K福のK学」「T一K会」「AUM真理教」などが誕生していますね。

 アメリカ系だと「EHBのSHOW人」とか「MルMン教」とかでしょうか。

(多少モザイクがかかっていますが、想像におまかせします)


 まあ、そんな風に新宗教はいつも何度でもポコポコ生まれるのですが、それには理由がちゃんとあります。

 それは「宗教が持っている基本的な機能」と関わりがあります。僕たち私たちは「宗教」と聞くと、「それはほんものなの?」とか「うさんくさい」とか、真実なのか・そうでないのかについつい注意が向いてしまいますが、実はポイントはそこではないのです。


<宗教が持っている基本的な機能 3つ>

◆ 世界の成りたちを説明してくれる

◆ 過去に起きた出来事の理由を説明してくれる

◆ 未来に起きることのビジョンを説明してくれる


 宗教とは何か?という根源的な質問があれば、この3点を答えておけばテスト満点間違いなしです。逆に言えば、この3つを教えてくれるからこそ魅力があるのです。


 世界の成りたちとは「僕たち私たちはなぜここにいて、生きているのか」ということです。以前にもお話しましたが「なぜ地球はあるのか、なぜ宇宙はあるのか、そしてなぜ僕はここにいるのか」ということは人類にとって本質的なテーマの一つです。

 それが通常であれば「箱の外側のことなので、わからない」となるのですが、宗教は「それはね、実はこうなんだよ」と、さもわかったように教えてくれます。

 その時点で、心が素直で信じやすいアホ・・・いや、優しい人たちは「へえ、ほお、そうなんだ」とついつい丸めこまれてしまうわけです。

 だからここは「嘘でも自信たっぷりに言う」のがオススメ。「ワレこそはイエスキリストの生まれ変わり、地球の創始者の使いである!」とか「ワレこそは偉大なるエロ・カンテーレである!」とか、ぶちかましたほうが信じられる確率が高まります。


 そして「過去と未来」について自信たっぷりに説明してくれると、人はその説明だけで納得してしまいます。「なぜ世界が邪悪に満ちているのか、それは神と悪魔が戦っているからだ」「未来には神がよりよい世界を作ってくれる」みたいなストーリーは、みんな大好きです。


 特に新興宗教でなくても「理由を説明する」という機能は、宗教の重要な役目でした。古代人にとっては天災がいきなり襲ってきたり、飢饉がやってきたり、いろいろ大変なことが起きるわけです。そして、自分たちがそれに遭遇して酷い目に遭います。

 その時、

「全部、・・・偶然」

と言われても納得できませんが、「それはおぬしらの行いが悪いからだ」とか「神が生贄を求めておられる」とか、理由を聞けば「対処法」を試してみることができます。

 対処法を試す、ということは希望なんですね。希望があるから信仰は価値を持つのです。永遠に天国で生きられるよ、みたいな希望がないと、世知辛い現代社会ではやってられません。

 これはインフルエンサーも同じ機能を持っています。「こうやれば早期リタイヤして、儲けられるよ!」みたいな希望を持たせてくれる機能があるのです。

 ぶっちゃけ、私たちの身の回りに起きることは「全部偶然」の要素が強かったりします。円安になったり品不足になったりするのは、あなたの努力とは無関係で、ウイルスが蔓延ったり戦争が起きたりしたせいであり、日本人である僕たち私たちから見れば

「どうすることもできないもの」

に過ぎません。しかし、「生きるか死ぬかは運で偶然である」と説かれると、何もできないもどかしさや不安に押しつぶされてしまいますから、「お前の祈りが足りない」くらい言われたほうが、マシなんですね。努力のしようがあるから。

 

 実際には運にしか過ぎないのだけれど、何がしかの理由を与えてくれるもの、に人は必ず引き寄せられるのです。占いだってそうです。

「すべて偶然でおじゃる」「当たらぬも八卦、運なのじゃ」

としか言わない占い師は絶対人気が出ないと思いませんか?(実はすべて運なのですが)

 けれど

「星の運気が悪いから、来月まで待て」とか「その思い人とは糸が結ばれておらん」とか

そういう具体的な「理由」を言われると人はすぐ納得してしまうものなのです。


 今日のまとめです。人はどうしても「理由」を求めてしまう生き物。だから「運だ」「偶然だ」「未来は不明だ」と言われることにものすごく不安を感じてしまう、ということがポイントです。

 これをうまく解消して、不安をコントロールすることは、実は難しいことです。なぜなら「理由がないもの」に対して「答え・理由を生み出す」必要があるからです。

 であれば「何らかの他人が答えを用意してくれたり、与えてくれたりした」ら、ついついそちらになびいてしまうのは当然かもしれません。

 だとすれば、そこで「自分で理由を生み出せる、見つけ出せる力を身に付ける」必要があるかもしれません。

 この連載では少しでもそのような「力」のお手伝いができるように、話を進めてゆきますね。


(大切な補足)

 自分で理由を生み出す、見つけ出すというのは大変な作業に思えるでしょう。けれど、よーく思い出して見てください。宗教がやっている「理由の説明」というのは9割の真理・真実に1割の想像や空想を付け足したものです。

 雷が起きる。これは9割の真実ですね。そこに「雷様がいる・菅原道真が怒っている」と付け足すのが1割の空想です。けれどその空想が立派に不安を解消するのですから、すごい力を発揮していることがわかります。


 この技を逆手に取って考えてみてください。たった1割の空想で、あなたの不安が解消されるのであれば、「自分で何かを1割分だけ空想すれば、未来は開ける」ということだと思いませんか?

 他人の空想に乗っかって不安を解消するくらいなら「自分の作り出した空想で不安を解消する」というウラワザがあると気づくのです!

 実はこれって「宗教」の存在以上に凄いことで、あなたの人生を大きく変えるヒントになるかもしれませんよ。


(つづく)



 




 


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