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読切掌篇小説『Z夫人の日記より』

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日記形式ですが続き物では基本ないので何処からでも読めます。舞台のイメージは昭和と平成のはざまあたりのパラレルワールドといった所です。 ©️2021TSURUOMUKAWA
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#昭和

掌篇小説『Z夫人の日記より』<161>

6月某日 神 ①地元で、『神様』と呼ばれる男がいる。  市内の北神社と南神社に、高さ5メ…

武川蔓緒
3か月前
17

掌篇小説『Z夫人の日記より』<160>

6月某日 子  6年前、夫との新婚旅行で、ある孤島に1日だけ寄った。  おもに農牧をして…

武川蔓緒
3か月前
15

掌篇小説『Z夫人の日記より』<159>

5月某日 邸1  邸宅にて、主である老人が、木目調のグランドピアノを弾く。皆でかこみ、聴…

武川蔓緒
4か月前
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掌篇小説『Z夫人の日記より』<158>

5月某日 弟  白い靴。白いコート。  私は身につけない。穢れるから。  母が入院する、 …

武川蔓緒
5か月前
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掌篇小説『Z夫人の日記より』<157>

4月某日 湯 『春の夢』と通称呼ばれる温泉郷にきた。母をつれ。  春が終ったらどうなるのだ…

武川蔓緒
6か月前
19

掌篇小説『Z夫人の日記より』<156>

8月某日 貨  偽造硬貨を選り分けるバイト。  どこかの安めな紙幣になりそうな顔の男が、…

武川蔓緒
9か月前
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掌篇小説『Z夫人の日記より』<155>

12月某日 博  北国へ。或る作家の記念館へ。  壁いちめん、床まで黒く、照明にぎらりと熙る。ちいさな窓に切り抜かれた空は、昼時なのに静脈みたいに蒼ざめて。  1階のショップにて、記念された作家自身とおぼしき、着物姿の霊が、人気グッズらしい星座表のプリントされたキャップを被り、己の文庫本を舌打ちしつつ読んでいる。昔のひとだからか私より背がひくく、華奢な肩。  詩作のワークショップがあるというので参加する。  講師は夫妻で、忘れたがどちらか一方が詩人で、もう一方が脚本家

掌篇小説『Z夫人の日記より』<154>

12月某日 橋  首都へ。  通称『をんな橋』と呼ばれる、何故だかそこだけ人のかよわぬ、欄干…

武川蔓緒
10か月前
19

掌篇小説『Z夫人の日記より』<153>

12月某日 列  振り返ると、たいした事のない1年。回顧も、来年の展望も莫迦らしくって、唯…

武川蔓緒
10か月前
15

掌篇小説『Z夫人の日記より』<152>

8月某日 虫  地方のバー。  いちおう歌の仕事じゃなく客として下見にきたが、マスターから…

武川蔓緒
10か月前
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掌篇小説『Z夫人の日記より』<151>

7月某日 離 「暫く町を出る」と、近所に住む男の子が云った。「暫く」って数ヶ月か数年か。…

武川蔓緒
11か月前
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掌篇小説『Z夫人の日記より』<150>

6月某日 歌  歌の先生から、 「いまから寄る」  と、いきなり電話。いつも会うのはスタジ…

武川蔓緒
1年前
17

掌篇小説『Z夫人の日記より』<132>

8月某日 臨 河原でカヌーを漕ぐ、鍛え抜かれた上半身と皺皺の顔の男。 進むさき、ふいに河…

武川蔓緒
2年前
8

掌篇小説『Z夫人の日記より』<144>

12月某日 窶 あの人の軀が生える。木の幹から。 ふせた眸。幽かに笑む唇。滑らかな髪。反る背中。 彫像ではない。いつしか木に身をやつした。ところどころ剥けた肌。 胸にそえる左手に、指環。それだけは、天然石の儘。 季節の所為か、あの人の想いか、私が訪れるたび変る、色と光の調べ。 雨に濡れても、石はあの人は艶をもつだけ。泣かない。 12月某日 麗 ホール。 チケットもぎりに並ぶ行列、賑わう物販コーナーや階段を、20センチほどの金のヒールで典麗に過ぎ、消え入りそうな