イノベーションはユーザーが起こす③ ― IT導入における情報の粘着性とは?

前々回、ユーザー自体がイノベーションの担い手となる可能性があることを述べ、前回、ユーザーがイノベーションを起こすことを説明する概念として「情報の粘着性」を紹介した。
今回、国内企業を対象としてITの導入における「情報の粘着性」とは何かを説明する。

まず、国内企業においてITの導入に関わるプレーヤーとして大きく三者に分類できる。
①ITを提供する者:機器だけでなく、ソフトウェアパッケージ、サービスを提供する企業
②ITを導入、もしくは情報システムとして構築する者:IT部門技術者、SIベンダーの技術者
③IT・情報システムの利用者:企業におけるIT・情報システムを用いて業務を行う者

通常、IT単独では利用者が直接活用することが難しく、誰かが企業の業務の中に組み込んでやる必要がある。つまり、ITに対する高度な専門的知識やスキルが必要となる場合、関係者が役割分担しながら進めなくてはならない。さらに、日本企業においては外部の企業であることもあり、国内特有の構造が挙げられる。
これまでのユーザー・イノベーション研究と異なるのは、中間に「②ITを導入、もしくは情報システムとして構築する者」が存在し、かつ外部の企業が関係する点である。

これら3つのプレーヤーが役割分担し、かつ情報を連携しながらITの導入を進めなくてはならない場合、それぞれのプレーヤーにおいて、どのようなケースで情報の粘着性が高くなるのかを例示したのが下表となる。

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一般的には、IT導入や情報システム構築において、三者が役割分担し、かつ情報の共有を進めなくてはならない場合、粘着性の高い情報があると、IT導入や情報システム構築が難しくなるのでは?という仮説を導出することができる。

現時点では仮説にすぎないが、このことがIT導入や活用をさまたげる要因となるのではないかと考えられる。(次回に続く)

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