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アダルトチルドレン⑥

父親は、昔から極道に憧れていた。
しかし、弱い者は徹底的に挫くが、強い者や本物の極道の前では、我々が見ている場でもオドオドして、手が震えて字も書けない程に慄いているのだ。

何時だったか、父親はスナックで飲んでいて、スナックのママやスタッフの態度が悪かったりすると、直ぐに『俺は◯◯組のだ』と言って脅して暴れて、挙げ句の果てに金も払わずに出てくるのだ。

父親は極道に憧れてい極道になりたい割に、夜の世界の仕組みについて、あまりにも無知であった。

翌日の昼頃 『社長さん居ますか〜』と如何にもソレと分かる出で立ちの男達数人が訪ねてきた。

それを見るなり、シドロモドロで上手く喋られず、手も震え、大量の汗をかき始めた。

その男達はズバリ◯◯組の者達で、自分たちの看板である名前を使って、しかもよりによって、その者達の息がかかった店でやらかしたのだから、バカとしか言いようがない。

一筆書けと、昔で言う証文みたいなモノを要求され、震える手でなかなか字が書けない小者ぶりを惜しみなく発揮し、我々も楽しく見させて頂いた(笑)

その者たちが帰った後は、恐怖で暫くの間カチコチに固まっていた。

情けない男である。何時ものように怒鳴り散らして、刃物振り翳して、大立ち回りしでもするかと思ったが、まぁ面白いモノを見せてもらったわい。

私が卒業して社会人になると、酔っ払っては会社に電話してきて、俺は◯◯組だ、と始まる。

私はそれで3度、職場から去ることになる。

そして家ではまた、同じように飲んでは暴れ、暴れては飲むの日々を過ごすのであった。

だが、私がそう何時までもそれを許す訳がない事に気づかなかのは、バカの極みである。

当時、家では薪ストーブを焚いていて、薪がたくさん入ったダンボール箱を、私目掛けて投げつけてきたのである。

人間と言う生き物が、何時までも我慢しているものだと思っていたのなら、私が知る以上にこの男はバカである。

子供の頃のように怯えてもいない姿を、どう見ていたのか。

自分は最強とでも思っていたのだとしたら、あまりにも頭の中がお花畑なんだろう。

プチッと切れてしまった。

今まで手を出さなかったのは、母にとばっちりが向かうだろうと考えて居ての事であり、決してバカに忠誠を誓ったわけであろうバズも無い。

ボッコボコにしてやろうと常に思っていたわけだから、そーら血沸き肉踊るってやつだ。

こちらが強気に出ると、途端にナヨナヨになる情けないブタめ。両足ぶち折ってやるわい❗

とやりかけたら、こんばんは〜と警察官が二人、おいではった。

近所の誰かが110番したのであろう。

救われた父親は、ホッとしたであろう。

どこまでも悪運の強い奴だ。畳の上で死ねると思うなよ。

つづく

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