見出し画像

大器晩成を体現したkくん。

小学生の3、4年生頃のこと。
梅雨明けか夏前くらいの授業だったと思う。
いつも楽しみだった図工の授業があり、そこで数回に分けて各自オリジナルの団扇(うちわ)を作った時があった。
まず骨組みとなる竹を団扇型に切り、そこに和紙を貼る。
そしてその和紙に絵の具で色付けをする。
最後に、筆で思い思いの四字熟語を書いて完成というものだった。

完成した作品は図工の教室の廊下に画鋲で留められて、僕は友人とその作品を見ていた。
各々が書いた四文字熟語はそれぞれ個性が出ており、そのセンスや仕上がりの上手さを興味深く見て回っていた。
例えば「天下統一」とか、「十人十色」とか、そんな感じの言葉が載っており、僕は友人とクラスの人とその作品を見比べて、偉そうに批評をしていた。
僕はその当時、何故だか「諸行無常」という言葉が好きで、僕の作品はそのポップな団扇の雰囲気とはかけ離れたその言葉を書いていた。
(要するに軽くスベっていた)

その時期、同級生にk君という人が居て、低学年の頃はちょいちょい遊ぶ仲であった。
そしてその彼の作品は、団扇に大きく「大器晩成」と書いていた。
そこまでは良かったのだけど、彼は変に個性をつけようとしたのだろうか。
「大」「器」「晩」「成」の文字をバラバラに散らばらせて書いていた。
記憶が合ってれば、下のように間隔を開けてバラバラに書いていた。

晩   大

  成    器

本人は縦書き二列で書いたつもりなのだろう、今なら分かる。
だけど当時の僕らはコレを何故か横読みで読んでしまい、愕然とした。
友人はこう呟いた。
「もしかして、ば、晩、、、大、成器、、と読めるじゃないか??」
そして友人は、晩に性器が大きくなると言いたいのではないか??とアホな自論を唱え始めたのだった。

そう無理矢理に考察した僕らは、「晩は大性器」「なぜなら晩には大性器〜」と言いながら廊下を走り回った。
彼のアナーキーな作品性をイジりながら、馬鹿エナジーとアホアドレナリンを全開で放出していた。
(アホ過ぎる子供の頃なので許してください)
おそらく、彼にはそんな意図はなく、単純に書いてる途中にしくじっただけなのだろうけど。

そんな彼はとても頭が良く、学年が上がるにつれ僕とは比べ物にならないほど優秀になっていった。
英語が優秀で、洋楽にも詳しかったと記憶している。
塾に通ってる雰囲気もないし、真面目なガリ勉タイプ(言い方が古いな)でもなく、地頭の良いタイプだった。
中学生になると更に優秀でスマートな人になり、学年で中心的なイカしたグループに居たように記憶している。
僕らは取り立てて共通の話題や友人が居たわけでもなく、学年が上がるにつれ友人から知人、知人から同級生のひとりと言う関係性にスライドしていき、会話をする事もなくなっていった。
僕らの母親同士が会話した話題を夕食時に聞く時に、彼の存在を僅かに聞く程度になっていた。

そして僕は、彼のことをふと思い出して、今どうしてるか知りたくなった。
僕は人の名前や顔を覚えるのが得意で、もちろん彼の名も覚えていた。
インターネットで名前を検索したら彼の名前は一発で出てきたのだ。

、、、なんといま彼はメディア関係でとても凄い人物になっていた。
そしてとんでもない人と対談したり、インタビューされていた。
中学生以来の彼が、当たり前だが大人になっていて、年相応に老けた顔を見るのはとても不思議な感覚であった。

そんな大器晩成した彼。
彼はあの団扇の言葉を自分の力で結実したのだ。
と言うより、最初から優秀だった彼は、その経歴を見ても早い段階で大成してたという感じだったけれどね。
いやはや、子供の頃からすごい人は、やはり大人になっても立派なのだなと痛感したお話だった。
そして今の自分との差を感じて大きな劣等感や虚しさを覚えたのも事実だった。
しかし僕は子供の頃からそんな大した子供じゃなかったんだから、ただ順当に育っただけのことか。。。
弱く笑いながら僕は納得した。

そう、今の僕はまさしく諸行無常だ。
あの時に僕が団扇に描いた、そのままの人生になってしまっているようだ。
そしてあの、未来を予言する事が出来る団扇は何だったのだろう、、、。
僕は、あの団扇に何と書いておくのがベストだったのだろうか。
百発百中とでも、順風満帆とでも書いておくべきだったのかな。
まぁ、そんな事を考えてる時点で大成する訳無いよなぁ。
だが確かに、あの時に「百鬼夜行」と書いていたある友人は、しばらく前にとある事で捕まったと聞いた、、、。
恐るべし、予言団扇。

そしてkくんは今も、晩は如何なものなのだろうかと。。。
あの頃のアホな僕らが騒いでいる。
「晩は大性器」「なぜなら晩には大性器〜」
そんな想いを馳せる無職の夜。
、、、下ネタ終わりでございます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?