タロット。19・太陽

生命の樹ではホドとイェソドのパス
 
星の弱い光から、強さの不安定な月の光を浴び、ここで太陽の大きな光に照らされる。星や月の光では読み取れなかったものが浮かび上がり、目の当たりにできるようになるので、かえって驚くかもしれない。この『ハッキリと形がわかる』というのが太陽のカードのざっくりした真意だ。
 
マルセイユ版とウエイト版での絵が違う。マルセイユ版での二人の子どもは、ウエイト版になるとひとりが姿を変えて馬になる。マルセイユ版の二人の子どもは性質の違う双子であり、ウエイト版ではそもそも種族が違う。しかしすべてのものに光が当たる、という点では、ふたつのカードの意味は共通している。
 
ホドは知性のセフィラであり、西洋占星術では水星に該当する。水星は言語あるいは表面化、またはなんでもいいから形にするという意味だ。形にする方法は人によって異なるが、抽象的なものを具体的に移行させる意味合いがあって、これはたとえばお金に関して水星を使えば商売になるし、言葉に関する表現とすれば言語能力に向かう。水星がカルミネートするネイタルチャートの持ち主は基本的に商売センスがある。水星単独で考えると「センスありますね」というだけに留まる可能性はあるが、他にハウスや天体の後押しがあればきちんと働いてくれる。どのような分野での商売が向いているのかはそれぞれのサインあるいはアスペクトによる。
その一方でもし表現に芸術性を備えるなら、金星の美的センスか海王星の夢見る能力が必要になる。基本的に水星は技術であるので、優れた造形そのものは水星の働きであるが、そこに心を打つような非凡な美しさを加味したいのであれば、金星あるいは海王星が必要だ。水星は単純な技術なので、反対に言えば金星や海王星がいくら頑張ったとしても、水星がなければ表現のしようがない。月で表現する方法はあるにはあるが、水星の技術というよりは、その人の感性を日常的なものに落とし込む、と言った性質であるので、基本的な違いはある。
 
さてその技術は、目の前に現れるという点でホドに該当する。現れたものには光が当たらないと認識できず、見逃される。そもそも現わそうとする意識がそのままホドのものだ。それを認識しなければ間違いなく現れないし、現わそうともしないだろう。そのアンテナのような働きをするのはホドである。
太陽のカードはホドとネツァクのパスだが、ホドは前述したように日常のあらゆる場面にアンテナを張り『そこにあるもの』を認識させる。この認識がネツァクの日常に降りると、いつも絶え間なく爛々と認識できるので、恐怖や不安などは消し飛んでしまう。我々の普段の生活を鑑みても、たとえば晴れていれば気分も上がりやすいし、雨が降ればなんとなく憂鬱になりがちなものだ。この太陽の光の効用は枚挙にいとまがない。遮るもののない状態でのこの光は植物をはじめとする生物が育ち、地球が繁栄させゆく。これも太陽が土や水や空気を温める働きに寄るもので、日の当たるすべてのものに満遍なく降り注ぐ。
 
星のカードでは僅かな光で対象物は見えにくかった。しかし月の光でボヤっと浮かび上がり、太陽の光でやっと陽の目を見る、という流れになる。星のカードの前、すなわち塔のカードで真っ新の状態になったからこそ、すべてのものに均一の光が当たるのだ。たとえば高い木の元にある草花には光が当たりにくい、という点で考えてみると、この『遮るものがない』という意味がわかってもらえると思う。それは生きとし生ける者あるいは物に平等に降り注ぐ可能性があるのだ。
とはいえ、いまだ塔で落ち切れなかった残骸が散見するならその下に光は当たらない。強い光は一方で影を濃く落とすものなので、きれいさっぱり消失しなければ、星も月も太陽の光も現れず闇のまま、ということもある。それでも失ったという意識があれば太陽は降り注ぐだろう。本来、もし闇のままなのであれば、太陽の存在には気付かない。ただし周囲が明るすぎるために、かえってまわりの状況を疎ましく思う。しかし闇から抜け出せば光は当たるので、塔、あるいは死神のカードあたりから遡る必要があってもいいだろう。その場合は太陽のカードが逆位置で現れやすい。
 
さて太陽のカードは19で、数秘術では1+9で10、すなわち1の象意だ。1は始まり、すべてのきっかけを意味する。ここで頑張ります、という類のもので、なんらかの着地点も意味する。太陽のカードがかなりパワフル、という意味に通じるのだが、かといってタロットで1の象意は1・魔術師、10・運命の輪、そしてこの19・太陽なので、1の数字も三回目になる。1の象意も三回目ともなると、今度は1の意味が変わってきて、魔術師であればすべての始まりだが、運命の輪では新しいステージでの始まりであり、太陽になれば始まりが次から次へと繰り出される状態になる。この「1の数字は何度目か」という解釈も数秘術で考えるべきであり、太陽であれば1の3という意味だ。1の数字が増殖し、なんだかどんどん新しいエネルギーが湧いてきて元気になりました、というイメージで考えるといいだろう。勢いのあるムードに押され、可能性が広がりゆく。3には応用という意味もあるので、1と2でダメなら次、と次の手を打てる。この繰り返しが始まりのきっかけになる。
 
この状態が一般的な社会概念で捉えると悪いわけもなく、太陽のカードはきわめて健全な好調を示す。その気になれば成長するし、やっていることにスポットライトが当たり思い通りになるだろう。とりわけ目標があるなら発展し、ゴールに向かい進んでいける。まるっきり新しい分野への進出も可能で、それは目覚ましく進展していく。
地中にある種は、その姿だけでは正体がわからない。しかし太陽の光を浴びて発芽し伸びゆけば、きちんとそれが『なにものなのか』がわかるのである。
 
ただし太陽のカードの「輪郭がハッキリする」という大前提があるため、見たくもない事実などがあるなら、あっさりバレるという意味になる。秘密を隠すならギリギリで月のカードまでだ。星のカードはどこかでひっそりと実行されるし、月のカードなら曖昧なままで進んでいくが、太陽のカードになるとあからさまに見えてくる。こうなると思いがけない進展は歓迎されない向きにもなるが、それでも必要な経過であれば、それを通らなければ問題は解決されない、あるいは地上に根を張れない。それでも正位置であれば真っ向勝負のあとで勝ちきれるので問題はないだろう。いずれにせよ困っている問題の原因はハッキリとわかる状態になるので、そう言った意味では日の当たる場所で解決する方向へ舵を切る必要があり、意志に添わない状況になっても慌てる必要はない。そこに必要なのは覚悟と自分の軸の意識付けだけだ。
 
また、太陽のカードは発展を意味するが完結はしない。太陽の恩恵を受けて伸びゆくので、成長が止まることはなく、結果など出ない。姿かたちがハッキリするという意味では「それがなにものであるか」を知るので、そういう意義での結果は出る。しかし完成ではない。本当の結果は20・審判で出るし、その成果や完成は21・世界まで待たねばならない。つまり太陽のカードに達成感などなく、たんに己が何者でありどう生きるかが明白になるだけにすぎないのだ。ここを間違えてしまうと、伸びゆくままで満足してしまい、すべてが中途半端になる可能性さえある。
そもそも太陽はホドとネツァクのパスだ。ネツァクは地上ではなく漂うムードそのものであり、マルクトまで到達しない。物質界の権化であるマルクトに着地しないので、太陽のカードで満足してしまうと、頑張っているけれどなかなか成果が上がらない、という状況になる。
 
よくあるパターンとして、願望を形にしたい、という意志があっても難しいというものがある。成果が上がらないという意味で、そこで踏み止まっている問題だ。これは太陽のカードに照らされ、進むべき道が見えているにもかかわらず着地できていない状態であり、なかなか悩むと思う。ここで諦めてしまうパターンは多い。頑張っているけれども才能がないと思い込んでしまえば歩みを止めてしまう。せっかく頑張ってきたにもかかわらず自分から終わらせてしまうのだ。やる気はあるし、やりたかったけれども無駄だった、と思い込んでしまうので、もう止めましたという状況になる。その状態で放置されれば太陽に照らされたまま、感情という水が与えられないことになるので、せっかくの芽が枯れてしまうだろう。ただしホドとネツァクの性質上、きちんとホドが意識してネツァクにつなげれば、また芽は動き出す可能性がある。ネツァクの絶え間ない働きかけをするうちは、ホドの『形にする』衝動が止まらないからだ。見当違いの場所に水を撒かなければ、ふたたびホドの芽は動く。
 
0・愚者の旅は19・太陽まで到達すると、もうハッキリと自分の道を認識し、自信を持ちながら進む。まだきちんと着地できてはいないものの、栄光や到達という予感のもとに迷いなく歩みを進める。太陽のカードは可能性とはよく言ったものだ。
 
 
以上、太陽のカードでした。
このカードが鑑定で出れば私は嬉しいです。クライアントさんの悩める問題が解決しかけているからです。良かったですねえ、と話すのですが、きちんと結果を出すには継続する必要があり、そもそも頑張らなければならない大前提があるので、そういった意味では意志を強く持つことと、目の前の道を信じるといいですよ、とも話します。伸びゆく環境にあるのは間違いありませんから、あとは気の持ちようです。
もし逆位置であれば迷いは晴れません。曇り空のようにハッキリしない状況であるので、一緒に展開した他のカードを加味し、原因をきちんと伝えなければなりません。それをクリアにすれば太陽のカードはひっくり返り、良い状況になる方向性を照らしてくれるでしょう。

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