「ちむどんどん」なぜ面白くないのか

普段と毛色の違う投稿で申し訳ない。社会復帰は順調に進んでいるので安心してほしい。

父が朝ドラ好きなので、話題のために無職の私は有限の時間を使って朝ドラを見ている。
前作は見ていない。上白石萌音ちゃんのお顔が苦手だからという理由で、どうやらとんだ名作を見逃してしまったらしい。

今作はちゃんと視聴している。面白くないというか、主人公サイドの登場人物に感情移入しにくいという事で大不評な今作だが私は全話見ている。早々に離脱した人や、毎週土曜の総集編だけ見ている人も多い中、私はちゃんと見ている。
見た上でクソだと思っている。でも多分最後まで見る。


身内にいてほしくない主人公家族


まず主人公家族、比嘉家は絶対に身内にしたくない要素のオンパレードだったりする。
貧困だが家族全員なかよしというのは素晴らしいし、嫌いじゃない。
しかしどうだろうこの家族の面々
「喧嘩っ早く学がなくプライドは高いギャンブル好きのやくざ者の長男」
「そんな長男を全面的に甘やかす母」
「話をきかない長女」
「結婚に反対する義兄の母に自分の歌が入ったカセットテープを贈ろうとする病気がちな無職三女」
そして
「自分が間違ってないと思う事であれば他人の価値観や領域など無視してもつっこんでいっていいと思っている主人公」
という素晴らしさ。
基本的に「お世話になっている相手の顔を立てる」という考えがこの家族にはなく、「妹のため」だと思ったら「妹に無断で」相手の家に怒鳴り込みに行くし、「何の縁もないのに身一つで田舎を出てきた自分に就職先を紹介してくれた本人の前で職場の上司の悪口を言う」し、お世話になっている相手からの縁談話の最中に「私この人と結婚します!」とドラマチックな劇場を披露したりする。
さらに貧しいながら、遊び呆けて中退した兄以外は高卒以上の学歴なのだが、この家族の借金は基本的に経済的に豊かではなさそうな大叔父夫婦からしているものだったりする。
他人の世話になりながら「比嘉家家族愛劇場」としか呼べないようなフワフワした理想の家族像みたいなものをやって日々を過ごしている。
そこについていけずにリタイアした人が大半だと思う。この家族、感情移入しようと頑張ってもなかなかその取っ掛かりがないのだ。

湧いては消えていく設定たち


この作品には伏線回収や一貫性というものは一切存在しない。
序盤に突然湧いてきた「シークワーサーを食べれば無敵になる設定」は消えた。
「ありがとうとごめんなさいがちゃんと言えるところが主人公の良いところ」というのも多分消えた。
言うべきところで言えているところを最近見ない。「私なにか間違ったことやってる?」と言ってるところは見た。自分が間違ってないとおもったら相手にとってどんなに不快だろうと迷惑だろうと突っ走るのであれば「店のためだ!」と理不尽なクレームをつけるクレーマーだってきっと「ありがとうとごめんなさいがちゃんと言える人」になるだろう。
あと借金も生えたり消えたり増えたりする。安定しない。

主人公たちの行動や言動の裏付けがない


NHKの朝ドラというものは基本的に脚本の質が高いなと思う。名作と呼ばれる作品だけではない。ちゃんと「この登場人物はこういう経験をしているからこんな考え方をしている」「この人に足りないのはこういうところで、それを補えたから改心したのだろう」など分析して噛み締めて、味わえるだけの奥行きが表現されている事が多いからだ。
それが今作ではない。
その代表的なものが
「お母ちゃんを悪く言うな!」
である。
比嘉ブラザーズシスターズは「親の教育が悪いんだろ」みたいな事を言われると急にキレる。めちゃくちゃキレる。我慢しなきゃいけないシーンでもすべてを台無しにするくらいキレる。理性がぶっ壊れるくらいキレる。
親を悪く言われて子供がキレるのは悪い事ではない。しかしどうにも浮いて見えるのだ。母親を悪く言われてキレるシーンが。
私は最初自分が母親とうまくいっていないからモヤモヤしているんだと思っていたが、どうにも違うように思う。
恐らくだが「主人公達が母親を悪く言われてあそこまでブチギレる理由がよく分からないから」だ。
主人公達の母親は主人公達を女手ひとつで育て上げた。過労で倒れるほどの労働を、物語上では一瞬でスキップされたが何年も続けていたはずだ。
本当に女手ひとつで育てられたわけではないだろう、そのための借金だってあったはずだ。方々に頭を下げ、時にはなじられながら苦労して育て上げたのかもしれない。涙が出る。
この時点は素晴らしい人なのは間違いないのだが、なんせ一瞬でスキップされている。
新しく借金をするシーンも、方々に頭を下げるシーンも、なじられるシーンも作中には一切ない。私の想像だ。

「お母ちゃんを悪く言うな」
という言葉はこの母を知らない登場人物による「親の顔が見てみたいわ」程度の言葉がトリガーとなって発現する事が多い。「あの女がバカだからよ」みたいなシーンは私が覚えている限りでは今のところない。
とにかく軽いやりとりの中でめちゃくちゃ急にキレ出す。全員が。
そうなるに値するエピソードが描かれていない。
目の前でなじられる母親を見て、それに対して何もできない自分たちを責める…という背景があれば「トラウマになってるんだなぁ」としみじみ噛み締めて楽しむ事ができた。
でも現状ただのブチギレスイッチとしか機能していない。
この「お母ちゃんを悪く言うな」は今週も登場するらしい。予告で出てた。

問題発生→解決の流れが毎回雑


というか解決していないものもある。
序盤の「経済的に無理だからどうにかしなきゃ」を家族愛エピソードで有耶無耶にしていたあたりから少し怪しかった。

ドラマというのは娯楽である。視聴者は主人公が問題に直面したらドラマチックだったり、理屈が通った解決策を見つける事を期待する。
記憶に新しい直近の苦難2つの解決策を例に上げて紹介したい

「やくざもどきの連中から目をつけられて苦境」
この苦難を脱したのは「相手方親分が主人公の知り合いの老人に戦場で助けられたから」だった。
そのエピソードをヒントに、でもその伏線があったわけでもなく、顔を合わせた途端に「あなたには何度も助けられました」で手を引いた。1分くらいで。なんか昔素人のネット小説とかでよくあったよね「実は戦場で助けられていて」みたいな。そんな感じだった。

さらに直近。というか先週。
主人公の結婚に反対していた姑。この姑は裕福な家庭の生まれで古い価値観の中にとらわれているような人だった。主人公の家とは格が違うだとか釣り合いがとかそういう感じで反対していた。まあ主人公の家族はアレなので、上流階級だろうとなかろうと自分の一人息子があの家の人間と結婚したがったら反対はしておいたほうがいいと思う。
話がそれた。
これは本当に、本当に私が勝手に期待してがっかりしただけなのだが、これの解決策は
「昔闇市で出されていたような料理を食べさせた」
だ。それに対して懐かしさを感じ、食べるのにも困っていたけど「あの頃が1番幸せだったのかも」と語って落ちた。
これに関しては私は「呪いをとく」解決法を期待してしまっていたので非常にがっかりしていた。
この姑、どう考えても呪われていただけなのである。
生まれも裕福な家庭、家同士が決めた好きでもない相手との結婚。自分自身は家事なんてできないお嬢様なので家事はお手伝いさん、良家から良家に嫁いだお嬢様は健気にも好きでもない死んだ旦那から贈られた詩集をずっと読んでいるのだ。
主人公たち夫婦はそんな彼女を理解しようとしてはいなかった。
彼女の立場に立ってみれば、理解して寄り添うこともできただろうにそれをしなかった。
それをしないまま解決してしまった。
その事にものすごく、勝手にがっかりしてしまった。

こういう事がずっと続いている。

視聴者が想像する物語や解決手段を毎回下回っているのだ。

だからみんな離脱した。

風呂敷上げて主人公に苦難だけ与えて、困ったらデウス・エクス・マキナで解決みたいな展開がずっと続いている。
私が昔フォレストノベルで書いてたBLEACHの夢小説の方が多分面白い

それでも私は明日以降もちむどんどんを見続けるだろう。
父との話題作りのために。
無職の娘が唯一できる恩返しだからだ。
ところで最近父はこのドラマの話ふってこないんだけど、離脱したんだろうか。
それなら私も見るのやめようかな…

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